六代目山口組vs神戸山口組 栃木“鉄パイプ集団奇襲”の裏側

社会・2020/03/19 23:00 / 掲載号 2020年4月2日号
六代目山口組vs神戸山口組 栃木“鉄パイプ集団奇襲”の裏側

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 事件は栃木県警本部から、わずか500メートルの場所で起きた。複数の住民が異様な音を耳にし、走り去る車両を目撃していたのだ。

「ボンボンという大きな音がしてベランダから外を見たら、黒っぽいセダンが猛スピードで走って行った」
「外からうるさい音がするな、とは思いました。そのあと、一緒にいた人が建物の前を通る車を見たのですが、ドアを開けたまま走っていたと言うんです」

 3月12日の午後5時ごろ、栃木県宇都宮市の住宅街で、神戸山口組(井上邦雄組長)の若頭補佐である山本彰彦会長率いる二代目木村會(愛媛)の関係者が、何者かに襲撃されたのだ。

「被害者が自宅付近で車両に乗っていたところ、前後を別の車に挟まれ、降りてきた5、6人の男たちから鉄パイプのような物で襲われたそうです。ケガはなかったのですが、ひどく車を壊されており、被害者を狙って起きた事件と思われます」(全国紙社会部記者)

 六代目山口組(司忍組長)との分裂抗争の最中には、全国各地で衝突が発生。宇都宮市でも小競り合いが起き、火種がくすぶり続けていただけに、業界内に緊張が走ったのである。

 事件現場となった住宅街はJR宇都宮駅から約2キロに位置するが、通りに出ると、すぐそこには県庁と隣り合わせに栃木県警の“本丸”がそびえ建つ。しかも、事件は日暮れ前の明るい時間帯に起きている。実行犯らが、そうしたリスクを顧みず凶行に及んだ背景には、根深さが感じられた。

 現場には、戸建てやマンションが建ち並ぶが密集しておらず、建物が面する道路も幅5メートルと広い。その先には、桜の名所でも知られる広大な公園へ続く階段があり、車両は行き止まりとなる。そのため道路を通るのは住民の車か、Uターンして県警本部が面する交通量の多い通りに出る車両に限られていたという。

「ここに住んでいる人なら駐車場に車を入れるし、Uターンする人なら走行しているので、あまり路上駐車は見かけないんです。それが、あの日は車が止まっていて、反対側に数人が立って様子を見ているようでした。私のところからは距離があったし、あまり気にせず家の中に入ったのですが…」(近隣住民A)

 目撃したのは、襲撃が起きる直前だったと思われる。その後、別の住民の通報によってパトカーが駆け付け規制線が張られたことで、ようやく多くの住民が異変に気が付いたという。

「何があったのかは分からなかったが、パトカーが来ていて、そこに車の部品なのか、破片が散乱していた」(近隣住民B)

 複数の住民が打撃音を耳にし、猛スピードで走り去る不審な車両を目撃していながらも、パトカーが来るまで事件性を疑わなかったのには理由があった。お役所街の至近距離にあるためか、住民は「治安は良い」と口を揃え、警察沙汰とは無縁の地域であることを強調していたのだ。

 ただ、あるタクシー運転手は、この住宅街に別の印象を抱いていたと話す。

「時々、ヤクザっぽい人が乗って、そこで降りるというのは、運転手仲間の間で知られていた」

 本誌取材班が現場取材を行ったのは事件の数日後だったが、近隣住民らは「警察が防犯カメラが付いていないか訪ねてきたけど、何が起きたのかは聞いていない」「事故なのか事件なのかも知らないけど」と話し、襲撃が起きたことを把握していなかった。しかし、目撃者は存在したのだ。

 その住民は本誌の取材に応じながらも玄関に姿を現すことはなく、終始インターホン越しに対応した。極力関わりたくないという態度で、それも頷けるほど暴力的な光景を目にしていた。

「車をぶつけ合うような、すごい音がしました。目を向けると車が3台並んでいて、前と後ろの車から降りてきた人たちが、バットみたいな物でボコボコ真ん中の車を叩き始めたんです。怒鳴り声は聞こえなかったですが、見た目が普通の人たちではなかったです。叩かれている車には1人乗っていて、その場から逃れるように発進すると、あとの2台も追って行きました」(目撃した住民)

 路上には壊された車の破片が散り、攻撃の激しさを物語っていたという。また、襲撃した男たちは覆面やマスクもせず、素顔を見せた状態だった。周囲には防犯カメラが設置されておらず、県警は付近に駐車されていた車のドライブレコーダーからも確認作業を行い、捜査を進めているようだ。

★過去には乱闘騒ぎも発生

「事件は車の損壊で済んだが、犯人たちの本来の目的は、木村會関係者に直接的な危害を加えることだったのではないか。だからこそ、わざわざ関係者の車両を挟んで、動けなくさせたのだと思うがな。そうすれば、窓ガラスを割ってドアロックを外すこともできただろう」(関東の組織関係者)

 実際、前述したように、ドアを開けたまま走行する車両を近隣住民が目撃している。それが被害車両であれば、犯人らに暴行を受ける寸前のところで難を逃れたことになる。反対に犯人の乗った車両だったとすれば、ドアを閉め切らぬ間に急発進して“ターゲット”のあとを追い、直接攻撃を仕掛けようとしていたのかもしれない。いずれにしろ、緊迫した状況が読み取れる。

「ケガ人が出なかったとはいえ、今回は深刻な事件に思える。犯人たちは顔を隠していなかったというし、これで終わりではない可能性もある」(同)

 宇都宮市では、一昨年11月に繁華街で乱闘が起きていた。六代目山口組の三代目弘道会(竹内照明会長=愛知)と木村會関係者、総勢30人ほどが衝突し、捜査員や警察官も入り乱れる騒ぎに発展。弘道会勢の中には、武闘派で知られる野内正博組長の野内組幹部の名前も上がり、地元では尾を引いていた可能性がある。

 弘道会は神戸山口組への“切り崩し”を活発に行い、宇都宮市に本拠を置く二代目塩谷一家などが山健組から野内組に移籍。地元では混乱が起きたのか、乱闘騒ぎののちも小競り合いが頻発していたという。

「そもそも、乱闘の一件は移籍問題とは無関係だった。地元の先輩後輩という関係にあった者同士がバッティングし、『挨拶がない』などの理由で口論になったそうだ。繋がりのあった木村會側の人間も関係者とはいうが、対立に関わるような立場にはなく、いわば個人的なトラブルが原因だったと聞く。だが、山口組が分裂して敵、味方に分かれている状態では、些細なことでトラブルに発展しかねない。そういう意味では、宇都宮は火種がくすぶり続けている」(別の関東の組織関係者)

 今回、木村會関係者の乗った車両が襲撃された事件に関しても、一部関係者の間では報復だったとの見方がされている。

「襲撃の数日前に、弘道会側と揉め事が起きていたという話があった。詳細は分からないが、衝突が続くようなら、本格的な組織同士の対立にもなりかねない」(他団体幹部)

 こうした危険性があるのは、栃木県宇都宮市に限った話ではない。

 宮崎県宮崎市では、平成28年8月に六代目山口組・四代目石井一家(生野靖道総長=大分)の元関係者が、神戸山口組・池田組(池田孝志組長=岡山)の傘下組員らと揉み合いになり、腹部を刺されて死亡する事件が発生。以後、事件が断続的に起き、双方から逮捕者が出た。直近でも衝突したという情報があり、警察当局も“発火点”の一つとして警戒を続けているのだ。

「山口組の分裂から、すでに4年半以上が経過した。その間に複数の死者が出て、六代目山口組・髙山清司若頭が出所してからは、ついに神戸山口組直参の古川恵一幹部が兵庫県尼崎市で射殺された。特定抗争指定によって両山口組の行動に制限は掛かったが、神戸側が存続する限り、分裂抗争は終わらない。

 六代目側はトドメの一撃を、神戸側は起死回生を狙って行動を起こすはずだ。お互い、実行に移すときを待っているから、今は沈黙しているのではないか」(業界ジャーナリスト)

“最終段階”に突入したといわれる今、決戦の時は近いのかもしれない。

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