和地つかさ 2018年9月27日号

森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 IoTは世界を変えるか

掲載日時 2016年11月02日 14時00分 [社会] / 掲載号 2016年11月10日号

 ソフトバンクグループが、今後5年間で2兆5000億円をソフトバンク・ビジョン・ファンド(仮称)に出資すると発表した。
 このファンドには、サウジアラビアの政府系ファンドも最大4兆5000億円の出資を検討しており、ファンドの総額は10兆円に達する可能性がある。ファンドの主な投資対象は、IoTだ。

 ソフトバンクは、最近、英国の半導体設計会社、アーム・ホールディングスを3兆3000億円で買収したが、その最大の目的も、IoTの情報収集だったと言われている。半導体の設計会社には、新技術の情報が一番初めにもたらされるからだ。
 ソフトバンクグループの孫正義社長は、自らの後継者として'14年度に165億円もの報酬を支払って、ニケシュ・アローラ氏を招へいした。しかし、たった2年でアローラ氏を解任してしまったのは、孫社長のアーム・ホールディングスの買収など、IoTへの大胆な投資に関する意見の相違があったからだと言われている。

 私は、孫社長がそこまで惚れ込むのであれば、IoTの未来は相当明るいのではないかと思う。ソフトバンクが急成長したのは、まだベンチャー企業だった米国ヤフー!に出資したり、国内の弱小携帯会社だったボーダフォンを買収したり、中国のネット通販会社のアリババに出資したりと、軒並み買収や出資を成功させてきたからだ。
 孫社長の嗅覚は、これまでのところ、確実に未来の成長産業を見抜いてきているのだ。

 その孫社長が、いま投資を集中させようとしているIoTというのは、インターネット・オブ・シングスの頭文字を取ったもので、単独で存在していたモノをインターネットにつなぐことで生まれる新しいビジネスだ。
 すでに実用化している家電の分野で言うと、エアコンがインターネットにつながると、スイッチを切り忘れても、外出先からスマホを使って停止できるようになる。また、カーナビがネットにつながったことで、車に搭載されたスカウターカメラの映像を共有できるようになり、高速道路のランプ付近で、左車線は渋滞しているけれど、右車線は空いているといった、細かい情報が分かるようになった。
 さらに、コインロッカーがネットにつながったことによって、ネット通販で買った商品や宅配便を、駅などに設置されたロッカーで受け取れるようになった。

 私は、最終的にネットとつながるのは、お金だと考えている。現金が姿を消し、すべての取引が電子決済になるのだ。
 IoTの進展で、我々の生活は非常に便利になるが、一方でそのような状態になることは、我々の生活のすべてが電子記録となって、監視される可能性を秘めている。
 だから、IoT社会は、とても便利な社会だが、とてつもなく窮屈な社会になる可能性が高い。誰も「悪いこと」ができなくなるからだ。ただ、おそらくこの流れを変えることはできないだろう。便利なものは、不便なものを駆逐していくからだ。
 孫社長は、そうした社会変化を、今後を見据え、はっきり見抜いているのではないか。

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