大澤忠興舎弟が引退 神戸山口組が直面する“勢力異変”

社会・2020/05/21 23:00 / 掲載号 2020年6月4日号
大澤忠興舎弟が引退 神戸山口組が直面する“勢力異変”

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 神戸山口組(井上邦雄組長)の直系組長が、また1人、組織を去ることになった。ゴールデンウイーク明けに髙橋久雄幹部が引退し、自身が率いた雄成会の解散も表明。神戸山口組の決定を待たずに、地元の京都府警本部に意思を伝えたためか、5月12日付で破門が下された。その処分と同時に、何の前触れもなく、大澤忠興舎弟(徳誠会総裁=茨城)の引退も、各傘下組織に通達されたのだ。

「昨年末から本家の許可を待たずに直系組長の引退、解散が続いとったが、大澤舎弟は若中の大瀧一門・徳誠会会長に跡目を託しとったから、円満引退いうことやな」(ベテラン記者)

 大澤舎弟にとっては、人生で二度目の引退である。

 三代目山口組(田岡一雄組長)時代からの直系組織、中西組の最高幹部を務めた山川賢一初代と、昭和45年ごろに縁を持ち、大澤舎弟は山川組の舎弟頭などを歴任。山川組の解散後は、芳菱会(瀧澤孝総長)に移籍して若頭補佐を務め、そののち舎弟に直った。

 平成21年、瀧澤総長の引退により國領屋一家(現・戸塚幸裕二代目)が誕生すると、自身が率いた大澤組の跡目を譲って業界から引退。しかし、平成27年12月、神戸山口組に参画し、三代目山川組組長として現役復帰を果たしたのである。

 それは同時に、國領屋一家との間に火種が生まれる結果ともなり、翌年の8月、茨城県石岡市にある山川組本部に襲撃が発生。止まっていた車両にトラックが特攻したのだ。同じ日には、静岡県浜松市の國領屋一家本部と傘下組織に相次いでトラックが突入する報復攻撃が起きた。

 その後、大澤舎弟は若中から舎弟に直り、大瀧会長を後継に据えて自身は総裁に就任。徳誠会に改称したのちも総裁を務め、定例会などには変わらず出席する姿が見られた。

「今年で77歳になり、年齢も考慮して引退を決断した可能性もあるが、何より、全幅の信頼を置く大瀧会長に組織を任せ、もうやり残したことはないという心境なんやないか。それにしても髙橋幹部の引退が尾を引いとるようで、今後、神戸山口組の士気に関わりかねんで」(同)

 昨年11月、兵庫県尼崎市で古川恵一幹部が射殺され、初めて直系組長が抗争の犠牲となった。さらに12月、六代目山口組(司忍組長)と神戸山口組に対する特定抗争指定が決定する直前には、太田守正舎弟頭補佐が突如として引退を宣言。出席すると思われた納会当日、意思を告げるとそのまま立ち去ってしまったのだった。

 今年1月には安岡俊蔵舎弟が引退し、二代目誠会が解散。神戸山口組直参でもある同会の柴崎勝若頭も引退した。いずれも事前に意思を伝えていたが、神戸山口組の決定がないまま引退したとして、一部では物議を醸したのである。

 こうした状況下で、神戸山口組の発足メンバーである髙橋幹部が現役を退いたことは、神戸山口組の団結にも関わりかねないとさえ囁かれたのだ。

「京都府警に引退宣言する前、神戸山口組の最高幹部に決意を伝えとるそうや。突然、音信不通になったわけやないし、よほどの事情があったんと違うか」(関西の組織関係者)

 さらに、追い打ちを掛けるかのようなタイミングで、神戸山口組の中核組織である五代目山健組(中田浩司組長=兵庫神戸)直系組織の最高幹部が、離脱したという。六代目山口組・三代目弘道会(竹内照明会長=愛知)の野内正博若頭率いる野内組への移籍だった。

 その直系組織は関東に本拠を置いており、野内組の関東への進撃が強まっている印象だ。しかし、切り崩しの目的は神戸山口組の弱体化だけでなく、分裂終結を見据えた体制固めである可能性も浮上。

 ある他団体幹部が言う。

「今は六代目山口組といえど、余裕のある状況ではないはず。特定抗争指定だけでも行動が制限されている上に、新型コロナウイルスだ。ほとんど動けない状態だろう。行動力と戦闘力あってこそのプラチナ山口組だが、分裂問題や新型コロナが終わったあと、それ以前の姿に完全に戻るのは難しいと思われる」

 先を見越しているからこそ、強い組織力を今後も維持するために勢力拡大を続けているという見方も、一部ではされているのだ。

「野内若頭はまだ50代で、六代目山口組・髙山清司若頭の信頼も厚い。弘道会の組織運営を任される立場なのだから、分裂抗争に向かう一方で、すでに将来の組織のことにも取り組んでいるように見える」(山口組ウオッチャー)

 対する神戸山口組では直参の“流出”以外に、中田若頭代行の留守中に傘下で移籍が起き、雲行きが怪しくなっているのが実情だ。

 六代目山口組を離脱して以降、山健組は幾度となく危機に直面してきた。井上組長の四代目時代には、最高幹部だった織田絆誠会長(現・絆會)と山健組直参たちの一斉離脱、京都府警による井上組長と中田若頭のダブル逮捕。中田五代目体制が樹立して以降では、山健組系組員2名が弘道会のヒットマンに命を奪われ、抗争が激化。そして、中田五代目自身の現場不在が続いているのだ。

「せやけど、この抗争は組織が存続すること自体に意味があるはずや。少数精鋭で団結力が増しているとなれば、戦局はまだまだ読めんで」(地元関係者)

 新型コロナウイルス問題の収束後、警察当局は両山口組の“抗争解禁”を最も警戒しており、今は嵐の前の静けさといえそうだ。

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