葉加瀬マイ 2018年11月29日号

話題の1冊 著者インタビュー 平井隆司 『阪神タイガース「黒歴史」』 講談社 840円(本体価格)

掲載日時 2016年04月25日 16時00分 [エンタメ] / 掲載号 2016年4月28日号

 −−数々のお家騒動など話題に事欠かない阪神ですが、一番想い出深いエピソードは何ですか?

 平井 '72年、球団は投手兼監督・村山実の負担を軽減させようと、親心からOBで監督の経験を持つ大先輩・金田正泰をヘッドに付けました。しかし、ヘッドに指揮権を託したから、さあ大変。監督とは名ばかりの村山がすね始め、チームはもちろん、メディアまで村山派と金田派に真っ二つとなりました。結局、この対立は村山の負け戦となり、現役引退、そして監督も辞任しました。金田がまさに軒先を借りて母屋を奪った格好になったんです。翌年、村山派だったエースの江夏豊が、金田新監督ともの言わぬ仲になり、江夏と意気が合う某ピッチャーも金田の暴言「猿でも飯食うのか」に激怒し、パンチを食らわせて退団しました。一連の騒動は今になっても忘れられないですね。

 −−'03年、外様である星野仙一監督で優勝しました。生え抜き監督とは何が違ったのでしょうか?

 平井 星野はオーナーの久万俊二郎から阪神監督の要請を受けると、その場で「あなたは17年もオーナーでありながら、一度しか優勝していない。阪神がダメ球団なのはあなたの責任です」と畳み掛けました。ボロクソに言われた久万は胸の中では怒り狂っていたでしょうが、招きたい客人相手に我慢せざるを得ませんでした。これが中村勝広や安藤統男、和田豊らが相手なら、有無を言わせなかったでしょう。星野は久万が「電鉄のオーナーを何人雇えるんや」と悲鳴を上げるほど、巨額な補強費などを引き出しましたが、生え抜きでは言えないでしょうね。星野は生きるカネを使い、有言実行した。生え抜きでは考えられぬ言動で勝ったと言っていいでしょう。

 −−今年は金本知憲監督です。チームはどのように変わると思いますか?

 平井 これまでの和田豊や真弓明信、両監督から伝わってこなかった“わくわく感”がありますね。金本はすべてに「配慮はするが、遠慮はしない」からです。実をいえばこの言葉は星野からの受け売りです。厳しさをちらちらと見せながらも、情の厚さをうかがわせる。この手綱さばきは、ここ数年のタイガースが失っていたポイントです。戦略一つをとっても、「去年までと違う」と言わせる戦いに徹する気がします。例えば初回の送りバントなど、誰でも分かる戦略はあえてしないでしょう。金本は喜びとつらさを楽しみながらチームを変えつつある。本当に「育てながら勝つ」かもしれないですよ。
(聞き手/程原ケン)

平井隆司(ひらい たかし)
1942年大阪市生まれ。'65年同志社大学文学部卒業。'70年デイリースポーツ社に入社し、'72年から虎番に。江夏の球宴9連続奪三振と'85年の日本一を現場で見たことが宝物。共著書に『猛虎襲来』(日本文化出版)。

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