林ゆめ 2018年12月6日号

号砲は悲劇の幕開け 石油元売り再編3つの落とし穴

掲載日時 2015年12月02日 10時00分 [社会] / 掲載号 2015年12月10日号

 まるで熱にうなされたかのように、石油元売り会社を舞台にした再編ドミノが進行中だ。国内2位の出光興産と5位の昭和シェル石油は11月12日、2016年10月〜'17年4月の間に合併することで基本合意したと発表した。その4日後、今度は国内最大手のJX日鉱日石エネルギー(ENEOS)が3位の東燃ゼネラル石油に経営統合を提案していることが明らかになった。早くも関係者の関心は、国内4位で再編から取り残された格好のコスモ石油の去就に移っている。
 しかし、合併・統合には双方の思惑が複雑に絡み合う。実は出光-昭シェルにしても昨年暮れに再編話が表面化したものの、昭シェル側の反発が強く、ようやく今年7月末に「経営統合に向けた協議開始」で合意した経緯がある。それが今回は「持ち株会社を設立せず対等合併」することになったとはいえ、出光が'16年上半期に石油メジャーのロイヤル・ダッチ・シェルから昭シェル株33%を取得することから、新会社の発足に大きな幅を持たせている。
 「対等合併と強調していますが、現実には出光による買収です。だからこそ昭シェルの特約店は『統廃合に追い込まれる』と猛反発してきた。発足の時期を来年10月から再来年4月にしたのは、その間に昭シェルが特約店を説得するとの意思表示に他なりません」(関係者)

 これで説得に失敗すれば、新会社は融和に程遠い“地雷”を抱えての船出となる。同じことが、JX-東燃ゼネにも言える。東燃ゼネには規模で勝るJXに乗っ取られるとの警戒心が強く、ラブコールを送ったJXがどこまで譲歩するかが今後の交渉の鍵になる。
 「出光-昭シェルが合併すれば、売上高で断然トップを独走するJXの牙城が脅かされかねない。そこで東燃ゼネに擦り寄った。再び大差をつけられる出光が、今度は一発逆転を狙ってコスモに接近するとの観測さえ飛び交っている。しかし、たとえ2グループに集約されたところで、今や斜陽産業と化した石油元売り業界の前途は多難です」(証券アナリスト)

 JXや出光は再編カードを切る理由として国内市場が縮小する中、規模の拡大による経営効率化と収益基盤の強化をアピールする。しかし、前出の証券アナリストは辛辣だ。
 「資本の論理を前面に出し、力ずくで抑え込めば反作用が大きい。とりわけ窓際族に追いやられた面々は恨み骨髄となるし、天下を握った側にしても有力ポストをめぐって権力抗争にウツツを抜かしかねません。メガバンク顔負けの暗闘が展開されたら目も当てられない。これぞ、大型再編の大きな落とし穴です」

 その落とし穴は、一つではなさそうだ。前述したように昭シェルの特約店には出光との再編への根強いアレルギーがある。程度の差こそあれ、東燃ゼネ、コスモにも当てはまる。まして全国の特約店=ガソリンスタンドは厳しい生き残りを強いられている。そこへ元売りの論理が全面に出れば、ガソリンスタンドの過疎化を助長しかねないのだ。

 厳しい数字がある。今年3月末で全国のガソリンスタンド(GS)は3万3510店と、ピーク時だった1994年度の半分近くに減少した。結果、経済産業省のデータによるとGSが3カ所以下の「GS過疎地」と呼ばれる市町村は283と、全市町村の16%を占める(うち10市町村はGSが存在しない)。改正消防法でGSの地下タンクは40年が経過した段階で漏洩対策が義務付けられているが、工事には2000万円超の費用が要る。これを嫌って廃業してしまうケースが後を絶たない。しかも地方都市では自動車が生活必需品で、GSは灯油なども販売している。そこへ経営効率化や収益基盤の強化を前面に打ち出した再編の嵐が吹き荒れれば、過疎地のGSは見向きもされず、悲鳴が地鳴りと化すのは確実だ。

 さらに厄介な問題がある。HV車やEV車の普及に伴い、ガソリン需要が落ち込んでいることだ。まだ航空機や化学製品には需要が見込めるにせよ、業界自体が先細りリスクを抱えている。加えて各社は70日間の備蓄が義務付けられていることから、在庫評価によっては100億円単位で利益が変動し、経営が原油価格に大きく左右される。そのギャンブル性を極力抑えようとすれば、合理化=リストラにまい進するしかない。これが合併会社特有の“お家騒動”を誘発する図式なのだ。
 「各社とも市場縮小に危機感を抱き、電力ビジネスなどに食指を動かしている。とはいえ、現実にはパイの大きさを追うだけで将来ビジョンを示していない。もし2社に集約されたとしても、勝ち組の座は程遠いでしょう」(経済記者)

 GS過疎地を置き去りにした再編劇の第2幕、すなわち“宴のあと”が透けてくる。


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