森咲智美 2018年11月22日号

アルコール依存症の寿命は52歳? 危険なのは周囲の認識の欠如だ!(1)

掲載日時 2011年05月22日 12時00分 [健康] / 掲載号 2011年5月26日号

 人気マンガ家の西原恵理子さん原作の自伝映画『毎日かあさん』では、アルコール依存症の夫との壮絶な日々が描かれている。西原さん本人も「アルコール依存症は病気。自覚して早く治療して」と訴える。大酒を飲んでも「酔った」と感じない人など、放っておくとうつ病や認知症、がんなどにもなるから要注意だ。
 西原恵理子さんの夫、鴨志田穣(かもしだ・ゆたか)さんは'07年、42歳の若さで腎臓がんのために亡くなったが、それ以前にアルコール依存症だった。仕事は戦場や世の中のダークサイドを取材するジャーナリスト。そんな危険な暮らしに酒は似合った。周囲の人の話では、最初は楽しい酒だったという。
 だが、自分の意志で飲酒をコントロールできなくなるのに時間はかからなかった。酒乱になり、ケガはする、問題は起こす、仕事はしない。あげく暴力を振るうようになっていった。
 酒乱になるということは、医学的に言えば、脳の扁桃体がダメージを受けていることになる。扁桃体は恐怖や怒りを司るところで、感情が不安定になってしまうというのだ。

 少し古い話になるが、'09年にイタリアで開かれたG7後に、時の政権党(自民党)の中川昭一財務・金融相の“もうろう記者会見”を思い出してほしい。世界に発信される大事な国際会議の会見で「なぜあんなに飲んでしまったのか」という疑問がわき起こった。
 「大事なときだからこそ、飲まずにいられないのです。アルコールに捉われて、いったん飲むと止まらなくなるのがアルコール依存症の特徴です」と言うのは、まいんずたわーメンタルクリニックの刈屋暢聡医師。刈屋医師は自身の著作『アルコール依存症の人はなぜ大事なときに飲んでしまうのか』(阪急コミュニケーションズ刊)の中で「周りが止められなかったのは『アルコール依存症は病気である』という人々の認識の欠如に原因があります」と指摘している。

 同様のケースを挙げてみよう。たとえば「居酒屋で若いヤツとけんかしたらしいけど、覚えていないんだ」と会社で武勇伝を話す同僚はいないだろうか。聞く方も「スゴイっすね」とおだてたり、笑い話で過ごしたり、「そのぐらいの失敗談で良かった」とかばったりする。これは、アルコール依存症が病気という認識がない人たちが言うセリフである。
 「自分のやったことが分からないと言うくらいだったら、病気とは誰も言わないし、思わない。これが落とし穴になるんです」(医療ジャーナリスト)

 「夫が酒飲みで、酔っ払うとモノを投げつけたり、借金をしまくっても、結局、妻がそれを補ったりかばって本人が酒を飲み続ける環境を作ってしまうことがよくある。これが、アルコール依存症患者を増やす要因にもなっている」と前出の医療ジャーナリストは言う。
 そして、そういう依存し合う人を“イネプラー”と呼び「私がいないと、夫が世間に迷惑をかける」と妻も必死でかばうので、家族を巻き込んでの悲劇に繋がってしまうケースが多い。

 西原さんも、そんな一人かもしれない。
 「酒を飲んで人が変わってしまうのは恐ろしかったのですが、お酒を飲まなくてはならない心の屈折を私が理解してあげなければ、と思っていたのです。でも、結局は酒が酒を呼んで、カモ(夫)ちゃんも好きで飲んでいるわけではなかったのです。飲んでいる本人が自覚しなければ病気は治療できません。とことん落ちるところまで落として、自分の状態を気づかせることが一番の早道です。夫は、最後はアルコールから生還したので、家族にいい思い出が残ったことは幸せでした」(西原さん)

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