葉加瀬マイ 2018年11月29日号

本好きリビドー(135)

掲載日時 2016年12月24日 18時00分 [エンタメ] / 掲載号 2016年12月29日号

◎快楽の1冊
『片翼の折鶴』 浅ノ宮遼 東京創元社 1600円(本体価格)

 ミステリー小説を読み始めるとき、私たちの多くは殺人事件の謎解きを期待することだろう。犯人は誰か、どういう動機で殺したのか、などなどを楽しみたいと思うわけだ。
 しかしながら、現実には周囲でいつも殺人が起きているわけではない。テレビのワイドショーやインターネットのニュースサイトで殺人事件の報道を知るわけだが、それは結局のところ、人ごとだ。
 実際、周囲で殺人が起きたとき、私たちは驚き、恐ろしい気持ちになるだろうが、そうあるものでもない。なるほど、口ゲンカはするが、殺人まで発展するのは日常的ではない。
 日常に密着した謎ではどうであろうか。友人、知人の心理は謎かもしれない。いったい何を考えているのだろうか、と思う。それともう一つ、病気の謎もある。私たちは体調が悪くなると、どうしてなんだろう、と思う。そして病院へ行く。1人で考えていても体調の悪さは解決しない。医師の診察を受け、その体調の悪さの原因を探っていく。
 本書『片翼の折鶴』は病院を舞台にした連作短篇集だ。全5篇、それぞれ主人公は違うのだけれど、世界はつながっている。
 病院が舞台なので、血液が失われる病気、幻覚など、異常な状態の患者を診る医者たちが解決を試みる。
 作者は2014年に「消えた脳病変」という短篇がミステリーズ!新人賞を受賞して作家デビューした。そしてこの度、受賞作を収めた短篇集を出したのだ。
 全くもって、病気は怖い。殺人事件は身近ではない場合が多いと先ほど書いたけれど、体調が悪くなれば、その原因を知りたくなるというのが本音だ。医者と相談しながら体調が悪い原因を探っていく。すなわち、本書は私たちの日常に横たわっている謎を探っていく小説なのだ。殺人を描くのとは別に、なじみ深い謎を探る小説もいい。
(中辻理夫/文芸評論家)

【昇天の1冊】
 かつて催眠セックスの現場を取材したことがあった。催眠術師は女性の手のひらに指を1本握らせていた。指は、女性器に挿入されている「ペニス」の役割を果たしていた。暗示にかかった女性は、指を握りしめたまま「いやぁ」と絶叫し、あっけなく果ててしまった。
 女はカラダではなく、脳で感じているということを、まざまざと見せつけられた体験だった。
 そんなことを思い出させる1冊が『催眠セックスの技術』(現代書林/1400円+税)だ。著者は催眠セラピストの林貞年氏。営業不振のショップや中小企業経営者を、催眠療法によって業績アップに導くなどの実績があり、その技術は海外からも高い評価を受けているという。
 内容は催眠術のテクニックから、女性をエクスタシーへと導く応用編、さらに進んでトランス状態に陥らせるにはどうしたらいいかなど、初歩から高等技術までひと通り網羅されている。
 いずれの技術も、キーワードは「脳」。性感帯はこう愛撫せよ、などのセックス・マニュアルは一切なく、いかに頭で感じさせるかの技術を、徹底的に解説する。
 女性にはセックスの時、みずからリミット(限界)を課してしまう人も多いらしい。
 つまり、本当の快感に身を浸すことが恥ずかしいため、自分を抑えてしまうわけだ。催眠とは、そのリミットを外してあげることであり、「心の解放」であるという。
 習得し実践するのは、自己責任として、まずは一読してみては、どうだろう。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)

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