菜乃花 2018年10月04日号

屋内でも油断は禁物!? 高齢者の「熱中症」対策のポイント

掲載日時 2018年08月04日 08時00分 [健康] / 掲載号 2018年8月9日号

 今夏の暑さは異常だ。そんな猛暑で注意するべき病気の代表的なものに「熱中症」があるが、毎年30万〜40万人が医療機関を受診し、4万人以上が救急搬送されているという。患者が増えるのは、梅雨の合間の急激に暑くなった日や、梅雨明け直後から8月いっぱいの盛夏にかけてだ。

 熱中症には、主に2つのタイプがある。「熱中症環境保健マニュアル2018」(環境省)の編集委員会の高度救命救急センター担当者がこう説明する。
 「屋外で体を動かしているときに発症する熱中症を『労作性熱中症』、屋内の日常生活で起こるのは『非労作性熱中症』といいます。労作性は10代のスポーツ中や30〜60代の肉体労働中の発症が多い。非労作性の発症で圧倒的に多いのは高齢者です」

 熱中症と言えば、屋外の炎天下での対策が重視されがちだが、近年、問題になっているのが、後者の非労作性にあたる“屋内での高齢者の熱中症”だ。
 消防庁のデータ('13〜'17年)によれば、全国で6月から9月に熱中症で救急搬送された人は、65歳以上が全体の46〜50%を占め最も多い。ある別なデータでも、熱中症死亡者総数に占める65歳以上の割合は急増しており、'15年では81%。そして、これらの発症の半数以上は家庭(屋内)で起きているのが実態だ。

 当然、屋外と屋内では症状の現れ方に違いがあるが、東京都立多摩総合医療センター救命救急センターの杉浦修二救命士は、こう説明する。
 「屋外の熱中症は、数時間以内で急激に発症します。一方、屋内の熱中症は、猛暑が連日続いているようなときに、数日以上かけて徐々に悪化します。また高齢者は、症状がジワジワ出る傾向があるため分かりにくい。周囲の人は、元気がない、食欲がない、散歩に行かなくなったなどの変化があった場合は、注意してあげてください」

 そもそも高齢者は、老化に伴い皮膚の温度センサーや脳の察知能力が低下するため、暑さや喉の渇きを感じにくい。これらの機能が低下すると、皮膚血流量や発汗量を増やす自立性体温の発動が遅れて体に熱が溜まりやすくなる。
 加えて高齢者は、若年者より体内の水分量が少ない上に、体の老廃物を排出する尿を濃縮する力が落ちて多尿になるため、脱水状態になりやすくなる。こうした要因で、気づかないうちに熱中症を発症してしまうのだ。

 社会医学研究センターの村上剛理事こう語る。
 「他に持病が多かったりすると、さらにリスクを高めます。特に高血圧や心臓病などで水分や塩分を制限されていたり、利尿剤を飲んでいると熱中症になりやすくなる。同じく糖尿病も暑さを感じにくい上、汗をかきにくい。向精神薬にも発汗を抑える副作用があるので注意が必要です」

 こうなると、自分の“暑さ感覚”はあてにならない。対策としては、冷房を上手に使って室内の温度管理と水分補給を徹底すること。そして、屋内の熱中症は夜間にも起きることがあるので注意する必要がある。
 日中の直射日光にさらされて熱を吸収した家の外壁は、夜になってもなかなか温度が下がらない。断熱材が使用されていない場合、その熱が壁を伝わり室内を蒸し暑くさせる。
 「室温は28℃が推奨されていますが、これはエアコンの設定温度ではありません。エアコンから離れた場所では、当然、それより温度が高くなります。自分のいる場所の温度計で28℃以下になるように、設定温度を調節すること。また、室内をムラなく冷やすには、扇風機やサーキュレーターと組み合わせるのが理想的です。温度、湿度の管理が難しいようであれば、熱中症の危険性をブザーで知らせてくれる“携帯型熱中症計”を近くに置いておくのもいいでしょう。水分摂取は、喉の渇きがなくても定期的に行うのがポイントです」(同)

 では、屋外で体を動かして、炎天下で熱中症に見舞われる「労作性熱中症」についてはどうか。
 基本的に熱中症の起こりやすい環境因子は、「気温が高い」「湿度が高い」「風が弱い」「日差しが強い」「急に暑くなった」などだ。労作性熱中症は、生活習慣などの基礎疾患がない人でも、その日の天気や体調によって急激に発症する。
 厚労省のデータでは、労働中の発症を業種別で見ると、建設業が全体の約3分の2を占める。加えて、熱中症による死者数は作業開始の初日が最も多く、初日から3日間のうちに約3分の2が発症していることが大きな特徴とされている。

 健康ライター・深見幸成氏はこう指摘する。
 「人の体は暑い環境で作業を始めてから3〜4時間たたないと、体温調節がうまく働きません。それに建設業などでは現場が新しくなると、人間関係ができていないことから、体調が悪くても周囲に言いづらく、それが症状を悪化させてしまうと考えられます。たとえ天気が曇りでも、湿度が高く風が弱い日は要注意です」

 人は汗をかき、それが蒸発する気化熱で体を冷やしている。湿度が高いと汗が蒸発しにくく、体に熱がこもりやすいからだ。
 「暑い場所で作業をするときは、冷たい飲料を500mlであれば10〜20分おきに、1時間くらいかけて飲むような水分補給をするといいと言われています。また、大量の汗をかく場合は、塩分補給も大切になります。とにかく熱中症を疑う症状があれば、すぐに風通しのいい日陰に避難すること。その際に冷えたペットボトルなどで、首の付け根や脇の下を冷やすこともお勧めします」(同)

 こうした労作性、非労作性の熱中症の双方に言えることは、3度の食事をしっかり摂ることだ。日本人の食事はただでさえ塩分が多いので、食事がきちっと摂れていれば水分、塩分、栄養は足りていると言われる。そのため食事の摂取量が減ってきたら、高齢者の場合は要注意。医師に熱中症や感染症、脱水のチェックをこまめにして貰うことが大切だ。
 「日常生活の場面では、夜中にトイレに起きたくないからと、寝る前の飲水を控えないこと。むしろ、トイレに起きたときにコップ1杯、朝起きたときにまた1杯の水分補給を、常に心掛けるようにしましょう。熱中症は早期発見、早期治療が重要です。少しでも体調不良が感じられたら、近所の医師に診てもらいましょう」(医療関係者)

 放っておくと急速に重症化し、最悪なら死に至る「熱中症」。室内外問わず、十分に注意が必要だ。

関連タグ:熱中症

健康新着記事

» もっと見る

屋内でも油断は禁物!? 高齢者の「熱中症」対策のポイント

Close

マダムとおしゃべり館

▲ PAGE TOP