葉加瀬マイ 2018年11月29日号

本好きリビドー(194)

掲載日時 2018年03月10日 16時00分 [エンタメ] / 掲載号 2018年3月15日号

本好きリビドー(194)

◎快楽の1冊
『オッパイ入門』 東海林さだお 文藝春秋 1350円(本体価格)

 久々にタイトルだけで「やられた」と、思わず書店の店頭でニヤついてしまった本書。故・ナンシー関女史がかつて、数多あるバラエティー番組の中でも特に『タモリ倶楽部』にゲストで呼ばれる時のなぎら健壱氏を指して“打率十割男”と絶賛していたが、その称号を拝借すれば筆者如きの贅言を待つまでもなく、現代の文筆界におけるそれは間違いなく東海林さだお氏をおいて他になかろう。
 いつ如何なる状況下においてもあらゆる読者層を必ず絶対確実に、横山たかし師匠ならハンカチを噛みしめて悔しがるほど吹き出させずにはおかない氏が、今回取り組むテーマは大きい。ペット飼うなら犬派か猫派か。子供に習わせて脳に良いゲームでいえば囲碁か将棋か。鶏が先か卵が先か同様の、永遠に繰り返される問いが女体鑑賞&愛好の上での優先事項としての胸(乳)派か尻派かの選択。山田五郎氏が『百万人のお尻学』で学術的・美術史的考察をまとめた後者に比べ、いまだ未解決の問題が多いのは前者。
 いったん固めた泥団子を室伏広治がフルスイングで壁に砲丸投げの要領で叩きつけた跡のようなご面相にもかかわらず、豊満巨乳であることだけで一切お咎めなし、どの楽屋にもフリーパスでしょ的な妙な自信をみなぎらせ、胸の谷間を見せびらかすがごとき衣装に身を包み最前列に座る女性客に、舞台で困惑する機会の多い筆者など、“禁煙”ならぬ“禁谷”の必要性を訴える氏の提言に頷くこと頻り(あと地味な顔してヌーブラ着けるな!)。
 たしか喜寿を越えておられるはずの著者だが、巻末の中野翠氏との対談で、まだ大学を中退(正確には除籍)されたことにこだわられているあたり何とも微笑ましい。末輩ながら、激しく親近感を覚える。
(居島一平/芸人)

【昇天の1冊】
 「イジメ」というと、かつては学校を舞台にした子供たちの間の出来事と思われがちだった。だが、考えてみれば職場やママ友仲間等にもずっと以前から蔓延しており、今は「パワハラ」という言葉に置き換えることができる。
 生きている限り誰かをイジメ、誰かにイジメられる…。それはもう人間の宿命や“業”といっていい。では、なぜ人はイジメから脱却できないのか――。その難問に挑んだ1冊が『ヒトは「いじめ」をやめられない』(小学館新書/780円+税)だ。
 著者はテレビでもおなじみの脳科学者・中野信子さん。知的な容姿と適格な話術をご覧になる機会も多いだろう。本書の趣旨は、イジメとは種を保存するための「生存戦略」であるということ。つまり、他者を蹴落として生き残るため、ヒトはイジメという手段を用いらざるを得ないというのである。いわば本能だ。
 本能に組み込まれている以上、イジメを撲滅することは不可能。だが、ヒトは感情や行動を抑制することはできる。己の言動を見つめ直すことで、イジメを最小限に抑えることは可能であるという。
 そして、目を引くキーワードが「60%の仲」。他人との付き合いは、“べったり”ではなく“ほどほどに”が◎という意味。むやみに他人に踏み込まない、踏み込ませない…。難しいが、イジメ解決のヒントはどうやらココにあるようだ。
 イジメは社会にとって必要悪なのかもしれない。その「悪」をコントロールしたい方、ぜひ一読を。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)

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