菜乃花 2018年10月04日号

世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第166回 高度成長期と同じ環境が来る!

掲載日時 2016年03月17日 10時00分 [政治] / 掲載号 2016年3月24日号

 2015年の国勢調査によると、日本の人口は1億2711万47人で、'10年の調査と比べて94万7000人余りの減少となった。国勢調査で人口が減少したのは、調査開始以来初めてである。
 これを受け、例により「日本は人口減少で衰退する」といった間違った認識が広まりかねないので、断言しておこう。日本の人口減少ペースは「誤差」であり、ついでに書くと経済成長と人口減少に相関関係はほとんどない。

 世界で最も人口減少ペースが速いのはジョージア(旧グルジア)であるが、同国の人口は'00年比で'15年までに、何と17%も減った。日本で言えば2000万人強の人口減に見舞われたことになる。それに対し、日本の人口は'00年比では“横ばい”だ。
 というわけで、ジョージアが日本以上のマイナス成長に見舞われているかといえば、そんなことはない。'00年から'15年のジョージアの経済成長率の平均は5.6%。それに対し、日本はわずか0.85%。

 なぜ、ジョージアは人口が激しく減少しているにもかかわらず、経済成長しているのか。なぜ、日本は人口が'00年比で横ばいであるにもかかわらず、経済成長できないのか。
 理由は、単に日本がバブル崩壊&緊縮財政でデフレ化し、ジョージアはバブル崩壊を経験しておらず、デフレにもなっていないため。ただ、それだけだ。
 などと書くと、
 「日本はすでに成熟した先進国。ジョージアは未成熟で、キャッチアップの状況だから経済成長率が高い」
 などと、すぐに“知ったかさん”が出てくるわけだが、「キャッチアップ」とは生産性を高めるための「投資」を意味している。産業革命後の資本主義の世界では、モノ(土地、工場、設備など、いわゆる資本)、ヒト、技術という「経済の三要素」に対する投資を拡大しない限り、生産性が上昇することはない。
 逆に経済の三要素に投資することで、それ自体がGDPになる上に、将来の生産力を強化する。つまりは、生産性を高める投資とは、一粒で二度おいしいのだ。
 その重要極まりない投資を、日本は橋本龍太郎政権の緊縮財政以降、ひたすら縮小させてきた。これで経済が成長できたら、それこそ奇跡である。

 なぜ、日本が政府を含めて投資を減らしてきたのか。それは、「日本は国の借金で破綻する」「日本は人口減少で衰退する」といった嘘情報を、国民はもちろん、政治家までもが信じ込み、将来に対する夢を失ったためだ。投資の縮小の原因は「日本が成熟している」うんぬんではない。国民が自虐的経済観にとらわれているためなのだ。
 そして、「日本は衰退する」にけん引され、国内の投資が減れば、実際に経済成長率は低迷せざるを得ない。それを受け、「ああ、やっぱり日本は衰退するのだ」と国民が思い込み、投資を減らすという悪循環が続いている。

 ところで、高度成長期の日本は「人が大事にされる」時代であった。理由は、別に日本の経営者が優しかった、といった話ではなく、完全雇用が成立していたためだ。
 下の図(※本誌参照)の通り、高度成長期の完全失業率は極めて低く、1960年以降は1.5%に達したことがほとんどない。当時の日本は“超”人手不足であった。しかも、高度成長期の日本は冷戦の最前線で、外国人労働者を入れることができず、それが幸いした。
 結果的に、経営者は「人を大事に」せざるを得ない状況になり、雇用は安定化した。同時に、生産者たる国民は企業で働き、自らの中にさまざまな技術、技能、スキル、ノウハウ等を蓄積し、人材に育っていった。

 今後の日本は、政策的な「妨害」が入らない限り、生産年齢人口比率の低下により完全雇用に向かうことになる。すなわち、高度成長期同様に、経営者はモノ、ヒト、技術という経済の三要素のうち、「ヒト」を大事にせざるを得ない時代が訪れるのだ。
 同時に、不足するヒトで需要を満たすためには、これまた高度成長期同様にモノ(資本)や技術への投資を拡大する必要がある。経済の三要素への投資を実施することで、わが国は再び「経済成長」のエンジンが回り出し、経済成長率は高まっていく。

 いかがだろうか。人口減少を単純に嘆くのではなく、生産年齢人口比率の低下により「高度成長期と同じ環境が来る」と考えるだけで、将来のために投資をするアニマル・スピリットが湧いてこないだろうか。
 大変残念なことに、安倍政権はこれらを政策的に「妨害」する動きを見せている。すなわち、外国人労働者の受け入れだ。これだけは決してやってはいけないのだが、そちらの方向にひた走っている。
 さらに、安倍政権は余計な労働規制の緩和も推進している。安倍政権の現在の雇用政策は、明らかに日本経済の成長を「阻害」しているのだ。

 経済成長は「インフレギャップ下における生産性向上」以外では起きない。生産性向上のためには「構造改革」とやらではなく、モノ、ヒト、技術という経済の三要素を強化するための投資、すなわち設備投資、人材投資、公共投資、そして技術開発投資の四投資しかないということを知れば、安倍政権がいかに間違っているかが誰にでも理解できるはずだ。

みつはし たかあき(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、分かりやすい経済評論が人気を集めている。

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