アウトローを立ち直らせようとして… 踏みにじられた“天使の最期”(3)

官能・2015/07/06 23:00 / 掲載号 2015年7月16日号

 こうして2人はともにシャブを打つようになった。由佳さんとしては捨て身の更生支援である。牧瀬が立ち直らなければ、由佳さんも共倒れすることを意味する。それも覚悟の上だ。
 ところが、牧瀬はそんな状況でも反省するどころか、ますますシャブにハマるようになったのだ。「あと1回だけ」と言いながら、由佳さんと毎日のようにシャブを打つ日が続いた。やがて幻覚を見るようになり、錯乱状態となって暴力を振るうようになった。

 事件当日、牧瀬はシャブと睡眠薬でトリップし、由佳さんの浮気問題を蒸し返し、激しい暴力を振るった。逮捕後、牧瀬はその理由を次のように語っている。
 「家の中に盗聴器があるのがわかった。由佳は家の外に手を振っていて、そこには由佳の前夫とその一味がいた。奴らはいつの間にか部屋の中に入ってきて、部屋の四隅から自分に向かって襲いかかってきた」

 その後、牧瀬は由佳さんに包丁を突きつけ、殴る蹴るの暴行を加えた。由佳さんはグッタリしたが、牧瀬が「大丈夫か」と声をかけると、「寝ていれば治る」と言うので、「それならしばらく反省してろ」と言って放っておくことにした。
 ところが、目が覚めて由佳さんの体を揺すってみると、すでに冷たくなっており、死後硬直が始まっていた。牧瀬は仰天し、何度も由佳さんの名前を叫んだ。
 「由佳を殺してしまった。由佳が冷たくなっている。どうしよう…」
 牧瀬は母親に電話をかけたが、「救急車と警察を呼びなさい」と言われても、上の空だった。さらに由佳さんの実家に電話をかけ、「由佳をマインドコントロールしやがって」などと意味不明な抗議をしていた。

 まもなく警察が駆けつけてきて、牧瀬は殺人容疑で逮捕された。その後、精神鑑定に回され、刑事責任能力については「問題ない」とされたが、殺意までは立証できず、傷害致死で起訴されることになった。
 「自分は被害者を心から愛していた。殺したくて殺すわけがない。全て薬物のせい。今までの人生も人を傷つけてばかりだった。その末に愛する人を殺してしまった。今まで薬物をやめられなかったのは、ここまで追い込まれてなかったからだと思います。ここでやめられなかったら、自分は本当に人間のクズです…」

 覚醒剤にハマった人間が“一生やめる”ことがどれほど困難なことか。薬物乱用は個人の問題ではなく、例外なく周囲の人間も巻き込んで共倒れしていく。今さら後悔もできないが、筋金入りのアウトローを立ち直らせるなど、並大抵ではないということを世間に知らしめた事件だった。
(文中の登場人物は全て仮名です)

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