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やくみつるの「シネマ小言主義」 サッカー版「リアル巨人の星」だ! 『ペレ 伝説の誕生』

掲載日時 2016年07月15日 15時00分 [エンタメ] / 掲載号 2016年7月21日号

やくみつるの「シネマ小言主義」 サッカー版「リアル巨人の星」だ! 『ペレ 伝説の誕生』

 『実話』の読者は“海外のサッカーになんて興味ねぇよ…”。実は自分がそうなので、勝手に同志気分でそんな風に思っていました。
 が、しかし! 映画のラストでは泣きそうになっている自分がいました。そして思ったのは「これ、リアル巨人の星・海外編じゃん…」。
 出自が貧しく、お父さんは元選手でも怪我をして退いている。巨人の星では姉ちゃんでしたが、働き者で心優しい母の存在。そして終生のライバルが金持ちのお坊ちゃん…と、共通する点ばかり。ペレが生まれた時代は巨人の星より前ですし、梶原一騎は、“もしやペレの伝記を参考にしたのでは”という気すらします。

 まあ、そんな勝手な憶測はさておき、この「サッカー史上最高の選手」の誕生秘話に感情移入しまくりでした。おかげで、私の知らなかった海外のサッカー史を学ぶこともできたのです。
 何しろ、「ブラジル」=「サッカーの絶対王者」というイメージだったので、1950年の自国開催のW杯での敗退後、ブラジルが自国のプレースタイルに自信をなくし、欧州流の組織プレーを真似ようと、もがいていたこともまったく知りませんでしたから。
 私のような海外サッカーにまったく通じていない者はもちろん、サッカー通の人も、心躍る映画だと思います。ペレ本人もチラッと出演するニクイ演出もありますしね。
 次のリオ・オリンピックで、もし日本がブラジルに当たったとしても、私は知ったばかりのブラジル選手の「美しい」個人技を、調子こいて解説しながら、ブラジルを応援しているかもしれません。
 日本人選手が海外チームに所属したり、W杯の本戦に出場したり、と日本サッカー界の成長も目覚ましいようですが、こういう映画を見ますと、つくづく原点が違うよなぁ〜と思っちゃいますね。

 これまでブラジルには3回訪れましたが、ブラジルだけでなく南米やアフリカ、どこの国に行っても、サッカーに興じている子供たちをよく見ましたね。映画のようにボロ布を丸めてボールにするというのも目にしましたし、ドッジボールみたいな簡易なボールがほとんどでした。
 10年くらい前にガーナに行ったときのこと。そんな大切なボールを乗っていた車が轢いてしまったことがありました。パーンと割れる音がしても無視して進む運転手。過ぎ去る車を恨めしそうに見やる子供たち。「えっ?」と思いながらも「車を止めてくれ」と主張できなかった自分。あの瞬間は今も心の中に澱(おり)のように残っています。

画像提供元:(C)2015 Dico Filme LLC

■『ペレ 伝説の誕生』製作/ペレ、ブライアン・グレイザー 脚本・監督/ジェフ・ジンバリスト、マイケル・ジンバリスト 出演/ケヴィン・デ・バウラ、ディエゴ・ボネータ、コルム・ミーニイ、セウ・ジョルジ、ヴィンセント・ドノフリオ、ロドリゴ・サントロ 配給/アスミック・エース 7月8日(金)、TOHOシネマズシャンテ 他、全国ロードショー。
 ブラジルの英雄で元サッカー選手のペレを描いた伝記映画。スラムの貧しい暮らしの中で育った少年ペレ。1950年、地元ブラジルでFIFAワールドカップが開催されるも、まさかの敗退をしてしまう。全国民がショックの渦に包まれる中、ペレは自らの力でブラジルをW杯で優勝させることを誓う。やがてプロチームに進んだ彼は、'58年のスウェーデン大会のブラジル代表に、17歳の若さで選出される。しかし、多くの試練が待ち受けていた。

■やくみつる:漫画家。新聞・雑誌に数多くの連載を持つ他、TV等のコメンテーターとしてもマルチに活躍。『情報ライブ ミヤネ屋」(日本テレビ系)、『みんなのニュース』(フジテレビ系)レギュラー出演中。

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