菜乃花 2018年10月04日号

本好きリビドー(72)

掲載日時 2015年09月19日 18時00分 [エンタメ] / 掲載号 2015年9月24日号

◎快楽の1冊
『ザ・フー全曲解説』
 クリス・チャールズワース(藤林初枝=訳)
 シンコーミュージック 777円(本体価格)

 戦後70年。今年は皆が言っている。それは確かにそうなのだ。しかし、政治関連のみでこの70年を振り返るのはつまらない。文化史、というものがある。私たちはいつも政治のことを考えているわけではない。ファッション、音楽、映画をこよなく愛してきたのだ。
 1966年、ビートルズの来日に多くの日本人が熱狂した。あるいはローリング・ストーンズ、'73年に来日予定が白紙になってしまったが、'90年に実現した。以後、何度も日本を訪れている。
 そしてザ・フー。ビートルズ、ストーンズと共に、三大ブリティッシュ・バンドの一つとされている。'04年にロック・フェスティバルの一員として来日し、'08年にようやく単独来日を果たした。
 本書『ザ・フー全曲解説』は名著である。この邦訳版刊行は'96年なので、その後にリリースされた曲については、リスナーそれぞれが独自に調べなければいけないのだが、ともかくおおむねのフーの曲は一つ一つ丁寧に解説している。この丁寧さがまことに素晴らしいわけである。
 フーのデビューは'65年だ。イギリス、そしてアメリカでは絶大な人気を博するが、日本では長い間、多くのファンを獲得できなかった。だが'94年にバンドの歴史を振り返るCDボックス・セット、ベスト・ライヴを集めたビデオが発売され、日本人たちはようやくこのバンドの魅力を知ったのである。そして、先に書いた通り来日が果たされた。
 結成時のオリジナル・メンバーは4人である。ピート・タウンゼントが大半の曲を作詞・作曲するギタリストで、ヴォーカルはロジャー・ダルトリー。ほかの2人はすでに他界しているが、絶頂期の4人は暴力を追求しまくる世界一のバンドであった。本書の解説をじっくり読みながら、ぜひ実際の音を鑑賞していただきたい。
(中辻理夫/文芸評論家)

【昇天の1冊】
 「エッチな現場」という言葉を聞いて、何を思い浮かべるだろう。愛人のいる中高年男性ならラブホテル、風俗ファンならソープやピンサロなど、それぞれにこだわりの“現場”があるはずだ。
 ところが、アンダーグラウンドの世界には、さらに奥深い世界もある。マニア系AVのジャンルでいえば、シーメール、スカトロ、デブ専作品の撮影現場などだ。
 他にも高級ラブドールの製作工房、SM愛好家が集う緊縛イベント、エロ漫画家の仕事部屋など、一般人が決して垣間見ることのできない場所へ潜入取材してみたら、どういう光景が繰り広げられていたか−。
 そうした“覗き趣味”を満たしてくれるルポルタージュが、『エッチな現場を覗いてきました!』(彩図社/619円+税)だ。
 いずれの現場でも、他人に知られたくない趣味嗜好の人たちの性欲が炸裂しており、時に驚くばかりの変態プレイの模様がつづられている。また、巨尻フェチ向けAVの現場レポートでは、どういうアングルでヒップを撮影したらユーザーの下半身を直撃するのかを、真剣に模索するスタッフの並大抵ではない苦労が伝わってきて、とても面白い。
 だが、その場にいる人々が自ら欲する性を心のままに謳歌している−その姿に触れることができ、うらやましくさえ思えてくるから不思議である。
 著者の菅野久美子さんは、アダルト系出版社の編集者を経てフリーライターに転身し、エロ業界の内幕を描いた著書も多い。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)

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