倍首相vs検察 検察庁法改正強行採決で報復の河井夫婦逮捕

政治・2020/05/22 12:16 / 掲載号 2020年6月4日号
倍首相vs検察 検察庁法改正強行採決で報復の河井夫婦逮捕

安倍晋三

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「安倍政権に都合のいい検察体制にするための法改正では」と勘繰られていた検察庁法改正案は、野党やSNSなどでの猛反対の声に押し切られたようだ。

 法案の行方をジッと見つめていた検察トップの稲田伸夫検事総長は安倍政権の強引な手法に、ついに堪忍袋の緒が切れた模様。安倍政権倒閣のため河井克行前法相を逮捕、刺し違えの腹を固めたともっぱらだ。安倍政権VS検察に今後何が起きるのか。

 検察OBが解説する。
「今回の検察庁法改正に安倍内閣は、国家公務員の定年延長に伴う措置で、検察官も国家公務員だから何も問題はないと強弁している。しかし、検察内部では猛反対の声が根強い。というのも、検察庁は時の内閣総理大臣が不正を犯せば、逮捕することができる立場です。つまり、世間では正義の最後の砦として検察官がいると見ているし、検察官もその意気込みに応えたいと思ってきた」

 安倍政権は「検察を国家公務員法と検察庁法をつぎはぎし、時の政権に都合のいいように改悪しようとしている」(同)のだという。

 そもそも、今年1月、黒川弘務・元東京高検検事長の異例の定年延長問題があった。東京高検検事長は次期検事総長ポストといわれる。

「黒川氏は今の安倍政権のお気に入り検察官といわれ、『安倍政権の番犬』と陰口を叩かれていた」(同)

 その真偽はさておき、2015年、小渕優子元経済産業大臣の政治資金規制法違反問題、’16年の甘利明元経済財政政策担当大臣のUR(都市再生機構)への口利き疑惑など、政治家本人に捜査の手が及びそうになった時、ストップをかけた張本人が黒川氏と疑われているのだ。安倍政権にすれば、黒川氏が検事総長になれば“鬼に金棒”と思っている節がアリアリだった。

 今回の改正ポイントは、
(1)検察官の定年を63歳から65歳に引き上げる。
(2)内閣や法相が必要と認めた場合、検察幹部の定年を特例で最長3年間延ばせる。

 検事総長の定年は65歳だから、法改正で最高68歳まで任期が延びる。森友・加計問題や桜を見る会などの疑惑を抱える安倍首相にとって「黒川検事総長」は都合がいいわけだった。

「特に問題は2番目です。内閣に都合のいい人物を検察トップとして残すことは、グレーなことなら何でもできるということ。真っ黒でも黒川氏なら“白”とするかもしれない。黒川氏は63歳。今後、5年間は黒川氏に検事総長を続けさせたい腹だった。それがかなわなくなったが、ポスト稲田は安倍政権の意に沿う検事総長にしたい。これが通れば、かつて田中角栄元首相を摘発したロッキード事件のような政治家捜査を検察は半永久的にできなくなる。社会正義の実現を掲げる日本の検察は消えてなくなるでしょう」(検察幹部)

 ロッキード事件を担当した松尾邦弘元検事総長らの検察OBは、法改正案に反対する異例の意見書を法務省に提出した。松尾氏らは安倍首相の姿勢を「17世紀のフランス絶対王政時代の『朕は国家なり』のよう」と猛批判している。

 当然、検察の独立性と権威失墜に危機感を募らせているのは現検察トップの稲田検事総長も同じだ。

「検事総長は検察内部で選んできた。それが権力にこびない最強で独立性の強い検察を作ってきたのです。安倍内閣は、時の政権に沿わない幹部はクビにして“政高検低”の構図を振り回し始めた。検察暴走の抑止力にはなるが、稲田総長は大激怒しており、親しい人にこう漏らしたという。『あっち(安倍首相)がそうくるなら、こっちにも考えがある』と。稲田総長の考えはズバリ、今捜査中の河井克行前法相夫妻の選挙違反事件で彼らを逮捕することだ。克行氏は、かつて首相補佐官を務めたほど安倍首相との距離が近い。この克行氏を国会の許諾請求を得て逮捕する腹を固めたようです。つまり、『あっちがそうくるならこっちは河井逮捕』ですよ」(同)

 稲田検事総長のそうした思惑が透けて見える点がいくつもある。まず捜査の要、広島地検には東京地検特捜部から多数の応援が入っており、“オール検察のワンチーム”という力の入れようだ。

「森本宏・東京地検特捜部長は就任3年目に入った。特捜部長は通常1、2年といわれる中で異例の長さだ。森本氏は10年ぶりに国会議員逮捕となったカジノ疑惑で手腕を発揮した。首相官邸にかき回される検察の威信回復のため、河井逮捕を森本氏に指揮してもらいたいというのが稲田総長の狙いです」(前出・検察OB)

 当然、安倍政権に反発する検察は次の一手も見据えている。
「稲田検察側は国会に河井逮捕の承認を得る許諾請求の準備を着々と進めている。森雅子法相が指揮権を発動したら、安倍内閣は国民の怒りを買うでしょう。ただでさえ、安倍内閣は新型コロナ対策で支持率が低下している。河井逮捕は安倍政権崩壊の序曲となる。そして、稲田検察はダメ押しする戦略です」(同)

 河井夫妻の政党支部へは、自民党から1億5000万円もの「選挙資金」が投入されている。

「河井夫妻は大量の現金を選挙区でバラまいた。その原資は安倍マネーといわれている。河井選挙応援に安倍事務所から秘書も差し向けていた。検察は実態解明のため、安倍事務所と自民党にもメスを入れる段取りです」(司法記者)

 抗争はまだまだ続く。

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