葉加瀬マイ 2018年11月29日号

脳梗塞秒読みの“不整脈”に注意! 100万人が患う心房細動の潜在脅威

掲載日時 2018年06月02日 08時00分 [健康] / 掲載号 2018年6月7日号

 脳卒中には、脳出血やくも膜下出血といった血管が破れるものと、脳梗塞などの血管が詰まるものとの2種類がある。日本では、かつて脳出血が多かったが、主な原因となる高血圧の管理が進み、栄養状態もよくなったことで、その割合が減った。しかし一方で増えたのが、脂質異常や糖尿病の人に多い脳梗塞だ。現在では、脳卒中のうちの約60%が脳梗塞となっている。
 東邦大学医療センター大橋病院心臓血管外科医担当医はこう言う。
 「脳の血管が詰まって発症する脳梗塞の主な原因は、動脈硬化と、不整脈など心臓の異常によるものとの2つに分けられる。不整脈については、心臓の上部にある心房(左房にある肺静脈付近)が、痙攣したように激しく動く心房細動を起こし、それが一つの引き金となっていることが分かっています。無症状のため、本人が気付かないうちに病んでしまうことがほとんどで、近年では50歳以上の人に増えています」

 不整脈には、放置しても比較的安心なものと、命の危険があるものとの2つのタイプがあるという。
 「心房細動の場合は突然死を招く恐れがあるため、後者に属します。現在は潜在的な患者を含めると、100万人以上が患っているとされ、2030年には300万人を超えるという予測まである。専門医や不整脈に関係する学会が警告を出すほどなのです」(健康ライター)

 こんな例がある。東京都中野区在住の男性(60)が、昨年10月、仕事を終えて会社を出た。しかし、間もなく足元がふらつき始め、思うように歩けなくなり、道端にしゃがみ込んでしまった。ふらつきは数分間で治まり、普通に歩けるようになって安心していると、今度は自宅に着いてから倒れたという。
 担当医が説明する。
 「その時点では、すでに呂律も回らず、右手、右足が動かない状態でした。家族につき添われて診察を受けに来たのですが、診断結果は脳梗塞で、ただちに治療を始めました。さらに検査の結果、この男性は心房細動を起こして血栓ができていたのです。あまり重症化しなかったのは、心臓に原因があることが判明し、早めに血液が固まることを防ぐ抗凝固薬を使うことができたからです」
 この男性の場合は発症後、早めの治療だったことに加え、幸いにして詰まった血管が細く悪影響があまり広がらなかった。そのため、すぐに軽い会話が可能になるまで回復し、治療経過も順調で12月上旬には退院できたという。男性は話し方に多少の後遺症を残しながらも「健康診断は受けていて健康には自信があった。自分が脳梗塞になるとは思わなかった」と語っている。

 脳梗塞を引き起こす原因にもなる心房細動では、心臓が規則正しく収縮できない状態を生み出し、それによって血液がよどみ、流れにムラができて固まりやすくなる状況に陥る。
 「心房細動では、心臓を構成する上下の部屋のうち、上部屋の心房が、1分間に400〜600回、さらには1000という速さで細かく震える(通常は60〜100回程度)。これによりできた血栓が、心房の内壁から剥がれて血流に乗ってしまい、脳へと運ばれ血管が詰まる。この心房細動が原因で起こる脳梗塞、『心房性脳塞栓』では、比較的血栓が大きいため、突然死や重い麻痺などの後遺症が残りやすいのです」(前出・健康ライター)

 その血栓は、大きいと3センチにもなるというから驚きだ。
 「さらに心房細動は、決して特殊な不整脈ではなく、50代以上であれば無症状であっても、すでにかかっている可能性のある病。慢性になると気付かない場合が多く、健康診断の心電図で偶然、発見されこともあるほどです。特に糖尿病などの罹患者は心房細動を起こしやすいとされていますが、動悸や息切れがある人、胸がモヤモヤする人は早めに検査を受けるようにしましょう」(脳神経外科医師)

 また、結果として脳梗塞を発症した場合、7〜8人に1人は死に至る。
 「つまりは、いかにして心房細動から脳梗塞を引き起こさないかが、対策となってくる」
 こう語るのは、東京都立多摩総合医療センター心臓血管外科の大塚俊哉医師だ。
 「心房細動が見つかった人で、『高血圧』、『糖尿病』、『75歳以上』、『一過性脳虚血発作(TIA)の既往』のうち、2つ以上当てはまる場合は、積極的なチェックや予防をする必要があります。一般的な治療としては、抗不整脈と抗凝固薬による薬物治療がありますが、不十分な場合は、脚の付け根や首の太い血管からカテーテルを通し、不整脈の原因となっている信号伝達の異常な部分を焼灼する、カテーテルアブレーションを行います」(同)

 投薬としては、従来から広く使用されているのが、抗凝固薬のワーファリンだ。
 「しかし、服用している間は納豆や海藻類といったビタミンKを多く含むものは食べられません。このビタミンKは、出血した際に血液を固める作用を活性化させるからです。逆にワーファリンは血液を固まりにくくするため、出血をしやすくなる。そのため服用にあたっては、2カ月に一度程度の血液検査を受けて量を調整する必要があるなど、使いにくい面もあります」(専門医)

 しかし近年、ワーファリンの短所を解消した新薬も登場し、すでに心房細動に効果を発揮しているという。
 「高齢であることはもちろん、心房細動になりやすい人の特徴としては、糖尿病のほか、肥満や脂質異常症、高血圧、慢性腎臓病、さらに心臓の病では、心臓弁膜症、心筋症、狭心症や心筋梗塞といった虚血性心疾患を起こしたことがある人などがあります。また、生活習慣においては飲酒、喫煙も関係があるとされています」(前出・健康ライター)

 加えて、睡眠不足も原因になりやすいという。
 「睡眠不足は自律神経の乱れ、つまり無意識に血管の働きを調整、支配する神経を狂わせるために、心房細動を起こしやすくなる。また、なかなか難しいとは思いますが、ストレスを溜めないことが理想的です」(前出・脳神経外科医師)

 安静にしても治らない胸の痛みや、食後の圧迫感も心房細動のシグナルとなる。異変を感じたら即、専門医に診てもらおう。

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