葉加瀬マイ 2018年11月29日号

森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 景気後退を無視する政府・日銀

掲載日時 2015年12月10日 10時00分 [政治] / 掲載号 2015年12月17日号

 11月19日、金融政策決定会合後に記者会見した日銀の黒田東彦総裁は、「個人消費や輸出の増加も確認された」として、「景気が緩やかに回復している」との評価を変えなかった。
 強気の景気判断は政府も同じで、10月の月例経済報告は、「景気は、このところ一部に弱さもみられるが、緩やかな回復基調が続いている。先行きについては、雇用・所得環境の改善傾向が続くなかで、各種政策の効果もあって緩やかな回復に向かうことが期待される」としている。現状も先行きも、景気は回復だというのだ。
 しかし、内閣府が11月16日に発表したGDP統計によると、4〜6月期が前期比▲0.2%、7〜9月期も▲0.2%と2期連続マイナス成長となっている。これで今年度もマイナス成長になる可能性が高まった。

 戦後の日本経済を見ると、年度ベースでマイナス成長に陥ったのは過去5回しかない。
 1回目は、第一次石油危機の'74年度、2度目は消費税を5%に引き上げた翌年の'98年度、3度目は不良債権問題で金融が収縮した'01年度、4度目はリーマンショックの'08年度、そして5度目が消費税率を8%に引き上げた昨年度だ。このうち、マイナス成長を翌年度まで引きずったのは、リーマンショック後の'08年度〜'09年度の一度だけ。それが今回、2年連続のマイナス成長になろうとしているのだから、景気回復という言葉を誰も使えるはずがないのだ。

 そのような現状を、11月17日の『ウォール・ストリート・ジャーナル』(電子版)でも、次のように評している。
 「安倍晋三首相が3年前に政権に返り咲いてからは、2度目のリセッションだ。首相は日本経済の停滞に終止符を打つと公約したが、その目標は達成できていない。今こそ再考の時だ」
 リセッションというのは、景気後退という意味だ。普通に統計を見たら、いまの日本経済は深刻な景気後退に陥っているのは間違いないのだ。

 なぜ、景気後退に陥ったのか。確かに中国経済の減速という外的な要因はある。しかし、本質的な要因は二つだ。
 一つは、昨年4月の消費税率引き上げの衝撃がとてつもなく大きかったということだ。'97年の消費税率の5%への引き上げは、その後15年間続く長期デフレに日本経済を陥れた。それを考えたら、今回も長期低迷が続く可能性は十分ある。だから、少なくとも再来年4月の消費税再引き上げは、やってはならない。

 そして、もう一つの要因は格差の拡大だ。大手企業や国家公務員の給与、賞与は昨年以上に増えて絶好調なのだが、一方で中小零細企業の賃金やボーナスは、むしろ減り始めている。加えて、いまは非正規社員の比率が急速に高まってきているのだ。
 「労働力調査」によると、7〜9月期の非正規社員の比率は、5年前の34.5%から、今年は37.2%と2.7ポイント上昇している。非正規社員の年収は正規社員のおよそ半分だから、正規社員を非正規社員に入れ替えるだけで、実質的に50%の賃下げになるのだ。
 富裕層優遇を止め、中堅層の充実を図らないと、このままずるずると景気後退が続くだろう。

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