☆HOSHINO 2019年6月27日号

本好きリビドー(221)

掲載日時 2018年09月27日 15時00分 [エンタメ] / 掲載号 2018年10月04日号

快楽の1冊
『日本衆愚社会』 呉智英 小学館新書 800円(本体価格)

★この国の歪んだ言論状況をあぶり出す
「4年後には政権を取りたい。10年後には国のトップになりたい」。先頃行われてほとんど誰の注目も集めなかった国民民主党の代表選挙後に、当選を果たした玉木雄一郎氏の発言だそうだが、感想は「正気か?」の一言しかない。
 自身への獣医師会からの献金に関する“説明責任”は一切そっちのけで、加計学園の獣医学部新設について“疑惑”をひたすら追及。最近では障害者雇用統計の水増しに絡み与党を攻撃したかと思えば、途端に同じ問題が即時に自党で発覚する体たらく。どの世論調査でも支持率は限りなくゼロに近いのに、一体どのツボを押したら冒頭のごときセリフが平気で吐けるのか?
“馬鹿は隣の火事より怖い”は立川談志師匠の名言だが、先日、同党を除名されたばかりの柚木道義氏(とにかくカメラ映りを気にすることで有名。財務事務次官のセクハラ騒動が起これば女性議員と並んで「Me Too」のプラカードを持ち歩き、幼児虐待で殺された少女の実名が報道されればその子に捧げると称して集会でギター片手に歌うなどさまざまなパフォーマンスで知られる)にせよ底なしに恥知らずな人間こそ最も恐ろしい。ましてそれが国会議員の皮を被っているとなればなおさら。
 とはいえ顧みればあくまで根本は選ぶ側の国民の責任だ。著者はだからこそ“選挙権免許制度”の導入を唱える。自動車運転や危険物取扱いしかり、医師や建築士の免許も主意は使用法を誤れば一大事が出来するからだが、「使い方を誤って最も危険なのは権力ではないか」。この辺り、かつて「死刑を廃止しあだ討ちを復活せよ」と論じた現代最強の思想家の面目躍如たるもの。「リベラル」の意味は本来差別的、など刺激と笑いに満ちたコラム集。
_(居島一平/芸人)

【昇天の1冊】

 歴史は戦争に勝った勝者によって創られるという。幕末と明治維新史も勝者、つまり薩摩と長州によって創られ、教科書などはそれを「正史」(国家によって公式に編纂された歴史のこと)として生徒に教えてきた。
 だが、敗者の立場から見れば歴史は全く異なる。徳川幕府最後の将軍だった15代慶喜や、江戸の上野戦争で敗れた彰義隊、官軍と戦って負けた会津藩などは、全く正反対の見解を持っている。いわく、薩長の戦いには大義はなかった…と。
 そうした、いわば「敗者の維新史」を1冊にまとめたのが、『幕末維新の真実 教科書にはない消された歴史』(廣済堂出版/1600円+税)だ。
 徳川慶喜は時代の先を行く名君だった、彰義隊の戦いの真相とは、朝敵といわれた会津にこそ戦う大義があったなど、敗れ去っていった者たちから見た維新の真相は、これまでの通説を覆す内容で斬新だ。
 さらに西郷隆盛と2人で江戸城を無血開城に導き、江戸を戦火から救ったといわれる勝海舟は、自分の都合のいいように歴史をでっち上げた単なる「ホラ吹き」だったかもしれないこと、江戸へ進軍してきた官軍を庶民は大嫌いで、非合法で販売されていた当時の錦絵が薩長をボロクソにけなしていたことなど、教科書には載っていない歴史がてんこ盛りで面白い。
 これまでの維新史に物申す、気鋭の歴史作家8人が執筆している。埋もれた歴史を掘り起こした1冊である。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)

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