話題の1冊 著者インタビュー 円広志 『パニック障害、僕はこうして脱出した』 詩想社 900円(本体価格)

エンタメ・2015/07/05 16:00 / 掲載号 2015年7月16日号

 −−パニック障害を発症したときは、どのような具合だったのですか。

 円 異常を感じたのは、自宅に帰ろうと車のハンドルを握っているときでした。大渋滞でしてね。ちょっと進んでは止まりを繰り返していた。ところが、ブレーキを踏んでいるのに景色が勝手に動きだすんです。怖くなって車を置いて逃げ出したくなりましたが、我慢してようやく家に着いた。それが最初です。当時は所属事務所から独立して『オフィスとんで』を起こして5年。頑張らなくてはと気負っているころでした。

 −−ストレスが原因だったのでしょうか。

 円 今考えればそうかもしれませんが、もともと僕は“鉄人”と呼ばれるくらいの体力、精神力の持ち主でした。徹夜なんて平気で、酒を飲み仮眠だけとって仕事に出掛けていましたよ。芸能人だから、そんなの当たり前だと思っていました。

 −−具体的にはどのような症状が出るのでしょう。

 円 不安神経症の一つで、激しい動悸や息苦しさ、めまいなどを伴った突発的な発作が起こると、今度いつ起こるのかと予期不安が生じます。それから、長い行列、人混み、美容院に行くなどは発作が起きた際、そこから逃れられない状況をイメージしてしまい、極度に恐れてしまう。僕は特にめまいがひどかったです。

 −−不安の原因はすぐにわかったのですか。

 円 いえ、そこにたどり着くまでが大変でした。調子は悪いが仕事は失いたくない。だから夕方になると、酒で不安を紛らした。そして、ついに全番組降板となるわけです。入野医院という医療機関のめまい科で、パニック障害であることがやっとわかりました。荻野先生(現在、荻野耳鼻咽喉科を開業)という医師から朝、昼、晩に飲む薬と合わせて、発作が起きたとき用の頓服をいただいた。でも、頓服を服用しているのに酒を飲んだため、ものすごく苦しんだこともあります。

 −−厄介な病気ですね。

 円 ええ。でも、この病気で死ぬことはないんです。倒れそうで倒れない。死にそうで死なない。それがパニック障害。ある医師から、そう言われてホッとしましたよ。薬物療法以外は、いつも通り同じ生活をして、できることを増やしていくというのがいいんじゃないでしょうか。音楽療法も試してみました。とにかく、1%でも可能性のあることはやってみることです。芸能界に限らずパニック障害をひた隠しにしている人が少なくないと思いますが、特別な精神疾患ではありません。誰にでも言える環境を作っていきたいですね。
(聞き手:大津太郎)

円広志(まどか ひろし)
1953年、高知県生まれ。'78年『夢想花』でデビュー、80万枚を超える大ヒットとなる。'99年にパニック障害を発症するが、病状はほぼ回復し以前と同様、芸能界を中心に幅広く活躍中。

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