葉加瀬マイ 2018年11月29日号

やくみつるの「シネマ小言主義」 大学の「部室」の猥雑な空気感が懐かしい 『変態だ』

掲載日時 2016年12月23日 18時00分 [エンタメ] / 掲載号 2016年12月29日号

やくみつるの「シネマ小言主義」 大学の「部室」の猥雑な空気感が懐かしい 『変態だ』

 本年の東京国際映画祭の公式出品作品ということで、おそらく様々な批評にさらされると思いますが、「だって、変態なんだもん!」の一言で、すべてを封じ込めると思われる…そういう映画です。
 原作のみうらじゅんは自分より一つ年上ですが、同じ時代に学生生活を送った者として、大学の部室の猥雑な空気感に郷愁を感じました。
 自分も学生時代に8ミリで映画のマネごとみたいなものを撮ったりもしてましたけど、安齋肇監督は、そんな自主制作映画のチープな世界観そのままを再現されたのでしょう。あっ、でも“セックス&ドラッグ&ロケンロール”のドラッグは誰もやってませんでしたよ。

 「ロッキン・ポルノ・ムービー」と銘打たれているだけあって、「エロの伝道師」みうらじゅん脚本の面目躍如だなと思ったのは、主人公の妻役で出演している白石茉莉奈のキャスティングですね。この夫婦の濡れ場の演出は素晴らしい。その最中に口をふさぐところなんか、さすがのリアリティです。このシーンがなければ、金縛りにあったように、固まるだけになるところでした。まあ、あと一山、盛り上がりどころはあるんですけどね。まさかのメルヘン落ちは見てのお楽しみです。
 キャスティングといえば、「マニアックでごめんネ!」のウクレレえいじ。「おっ、こんなところにウクレレえいじが!」と声が出そうになった。牧伸二の弟子で『とんねるずのみなさんのおかげでした』内のコーナー「細かくすぎて伝わらないモノマネ選手権」の初期メンバーとして活躍してましたが、久しぶりに勇姿を見られました。

 ストーリーに話を戻すと、主人公は大学入学後、偶然入ったロック研究会でのバンド活動を契機に、ミュージシャンになるんですが、自分も今の道に入るのは、大学の漫画研究会への入部がきっかけなんです。
 大学入学と同時に、自分は二つの真逆のサークルに入りました。一つは「漫研」で、もう一つは「貿易学会」。世界を股にかけて活躍する商社マンを夢見る学生たちが、真摯に貿易の基礎を学ぶというサークルで、部員はスーツにネクタイ姿。今思えば、かなりシュールです。
 人間は低きに流れると言いますが、貿易学会の方は半年ほどで辞めてしまい、ひたすら自堕落でいられる漫研一筋に。といっても、ただ似顔絵が得意だというだけ。デパートや商店街の催事で使われる似顔絵のバイトが来るんで、それで小遣い銭を稼いでたのが今に至るんですから、人生っていったい…です。

画像提供元:(C)松竹ブロードキャスティング

■『変態だ』監督/安齋肇 企画・原作/みうらじゅん 出演/前野健太、月船さらら、白石茉莉奈、奥野瑛太、信江勇ほか 配給/松竹ブロードキャスティングアーク・フィルムズ 12月10日(土)より新宿ピカデリー他、全国順次公開

 一浪の末、都内の二流大学に進学した男(前野健太)は、ロック研究会でのバンド活動を契機にミュージシャンとしての道を歩み出す。やがて結婚し、妻と生まれたばかりの息子と、ごく普通の家族生活を送るが、実は学生時代から続く妻以外の女・薫子との愛人関係を断てずにいた。ある日、地方でライブの仕事が入り、愛人を連れて旅行気分で出掛ける男。しかし、ステージに立ったその時、彼の目に飛び込んできたのは妻の姿だった。

やくみつる:漫画家。新聞・雑誌に数多くの連載を持つ他、TV等のコメンテーターとしてもマルチに活躍。『情報ライブ ミヤネ屋」(日本テレビ系)、『みんなのニュース』(フジテレビ系)レギュラー出演中。

関連タグ:やくみつるの「シネマ小言主義」


エンタメ新着記事

» もっと見る

やくみつるの「シネマ小言主義」 大学の「部室」の猥雑な空気感が懐かしい 『変態だ』

Close

WJガールオーディション

▲ PAGE TOP