森咲智美 2018年11月22日号

米中「貿易戦争」が引き起こす第3次世界大戦という最悪のシナリオ

掲載日時 2017年02月22日 14時00分 [社会] / 掲載号 2017年3月2日号

 「ベリー ベリー ベリー グッド ケミストリー(抜群の相性だ!)」とまで言い、握手嫌いにもかかわらず19秒間という異例の長さで自ら手を差し伸べた米トランプ大統領。なぜ、ここまで安倍首相を厚遇するのだろうか。「安全保障」と「経済」を密接に絡ませ合ったパートナーシップが確立し、中国つぶしで一致したからなのか…。

 トランプ政権が対中国強硬策にかじを切るのは、閣僚の顔ぶれを見れば明らかだ。新設された国家通商会議の代表には、ピーター・ナバロ氏が起用された。同氏は『中国による死』などの著作で知られる筋金入りの親台湾反中国派だ。また通商代表部代表に起用されたロバート・ライトハイザー氏も、中国製鉄鋼材のダンピング(不当廉売)輸出を批判するなど対中強硬派として知られる。今後、トランプ政権の通商戦略はこの両氏が司令塔となって進められることから、米国が中国つぶしに取り掛かることは必然的な流れだろう。
 「他にも政権内部にはカルテルやトラスト、コンツェルンという独占活動を規制する反トラスト法の専門家が多く入っており、すでに中国企業のM&A(合併・買収)が頓挫するケースが増えています」(在米日本人ジャーナリスト)

 在米華人は約450万人、このうち220万人が有権者だ。祖国からの不法移民の急増で、彼ら正統な移民が就労の機会を奪われており、こうしたことからこれまでの民主党支持を捨て、トランプを支持した。しかし、中国と米国の対立構造が顕著になると、彼らの立ち位置は微妙になる。
 「台湾を中国の一部と見なす『一つの中国』の見直しを表明するなど、トランプは各方面から中国を揺さぶっています。2月9日に習近平国家主席と電話会談を行い、この原則を尊重するとは言ったようですが、昨年末に駐中国大使に任命したブランスタド・アイオワ州知事の顔を立てたにすぎません。同氏は習主席と親交があり、『旧友』と呼ぶくらいの仲ですからね」(同)

 一方、中国の内憂は何と言っても経済の衰退だ。1月13日、中国税関当局は2016年の貿易統計を発表したが、輸出額は前年比7.7%減、つまりこれまで中国の高度成長を支えてきた「輸出」という柱が大きく棄損しているのだ。
 「中国は国家運営の根幹となる穀物輸入を米国に頼っており、輸出がマイナス成長となると虎の子である外貨準備高は見る見るうちに減っていき、国家運営がうまく機能しなくなる恐れがあります。そして、沿岸地域の労働密集型の輸出向け産業は破滅的な打撃を受けて倒産が広がり、失業者が溢れるようになる。トランプは『中国を為替操作国に指定する!』『中国製品に45%の報復関税を課す!』と公約しており、中国は自由経済と計画経済の“いいとこ取り”をする形で国際社会における存在感を拡大してきたので、その歩みはストップせざるを得ない。約50%と最大の輸出相手国である米国が本格的な“通商戦争”を仕掛ければ、貿易への大打撃という外患と経済の衰退に加え、習近平主席vs李克強首相という権力闘争激化の内患が加わり、かつての日米間以上に激しい貿易・経済摩擦に耐え切れず、中国は第3次世界大戦、いわゆる世界経済戦争での敗北を余儀なくされる。もちろん、中国とは切っても切れない関係にある日本も無傷では済みません」(国際情勢に詳しいジャーナリスト)

 中国製品は日本の部品を組み立てているにすぎず、日本製や韓国製のような付加価値や優位性はない。中国製品を選ぶ理由は低価格だけだが、そこに公約通りに45%の関税が課せられれば、中国経済は即座に“昇天”だ。
 「昨年末、経済産業省はWTO(世界貿易機関)の『市場経済国』に中国を認めない方針を発表しました。日本と同様に米国やEUも認めていないため、日米欧は不当に安い価格で輸出される中国製品に対して、反ダンピング措置を取りやすい体制を整えたわけです。日米欧は、あらゆる手段で中国の競争力を奪う方向に向かっているのです」(経済アナリスト)

 あえて言えば、トランプ政権内における中国の味方は唯一、長女のイヴァンカさんしかいない。
 「彼女は2月1日、ワシントンの中国大使館で開かれた旧正月を祝うパーティーに娘のアラベラちゃんと参加し、京劇を楽しみました。まだ5歳のアラベラちゃんに中国語を習わせるほどの中国シンパです。一方、習主席に近いアリババのジャック・マー会長もトランプと会い、米国内に10兆円の投資と100万人の雇用を生み出す約束をしています。ソフトバンクの孫正義社長が5兆円投資なら、アリババは10兆円というわけです。トランプ大統領は、孫社長と同様にマー会長との会談のときも、わざわざ記者団に『マーは偉大な実業家』と誉めちぎっています。米国の世論軟化を狙ったパフォーマンスにすぎませんが、孫社長もマー会長も、そして安倍首相も、トランプ大統領にとっては飛んで火に入る夏の虫かもしれません」(外交関係者)

 いくら安倍首相をヨイショしようと、トランプ大統領の「雇用を外国から取り戻す!」という“公約”が変わるわけではない。
 TPPに取って代わる日本との自由貿易協定の締結を視野に、自動車貿易や為替の分野で厳しい要求を突き付けられる恐れが消え去るわけではないのだ。

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