菜乃花 2018年10月04日号

多くの病気を招く肥満のもと 糖と脂肪の依存症の原因

掲載日時 2018年04月28日 08時00分 [健康] / 掲載号 2018年5月3日号

 肥満は見た目が悪いばかりでなく、腰や膝を痛めやすく、糖尿病、高血圧のほか、心臓や脳の病気やがんの発症リスクまで上げる。肥満になる原因を、専門家などから、いろいろ意見を聞いてみた。

 「原因は様々ですが、肥満になってしまう人は、とにかくよく食べます。ただし、細かく調査してみると、糖や脂の依存症にかかっている人が多い。美味しい料理やお菓子には“食べだすとやめられない”糖や脂が多く含まれ、その快感から逃れられなくなってしまうのです」
 こう語るのは、都内で胃腸内科クリニックを開く辻正富院長だ。
 「実際、糖や脂の多い高カロリー食は、脳の『報酬系』を刺激することが分かっている。この報酬系とは、脳が快感を得たときや得られたと感じたときに活性化する神経回路のことだ。脳はその快感を条件反射のように記憶していて、同じ快感を得るために同じような振る舞いをしようとします。これは、麻薬やアルコールなどの依存症患者と同じような点が多いとも言われます」(同)

 食べ物を見つけて味わう快感というのは、元をただせば子孫を残すための性行動と同様、人類が生存するために必要なもので、他の依存症以上に快感を断ち切るのが難しいという。
 糖や脂肪の多い高カロリー食は、脳の中でドーパミンと呼ばれる脳内快感物質を増加させ、それが摂食中枢を刺激して食欲を引き出します。その一方で、脂肪細胞から分泌される食欲を抑え満腹信号を出すホルモンのレプチンなどは押さえ込まれてしまう。

 生活習慣病改善運動に取り組む、管理栄養士の前田和美氏もこう言う。
 「最近の研究では、太っている人は食べ物の刺激に対する報酬系反応が鈍くなっていることも分かっています。そうなると、食べてもなかなか快感が得られず、より美味しい物を大量に食べて快感を得ようとするため、結局は食べすぎてしまうのです」

 しかし、人が生きていくためには熱や力の元となるエネルギーが必要だ。中でも脂肪(中性脂肪)は非常に優秀なエネルギー源とされ、食物の摂れない飢餓状態に備え、人の体はその脂肪を蓄える仕組みを持っている。食事で摂った糖分(炭水化物)も、脂肪に合成し直して蓄えれば、それだけ効率のよい燃料として保存される。
 毎日の食事にしても、食べ物から摂った糖分や脂肪は、体温を保ったり脳や内臓を動かし、運動をするエネルギーに変換される。その“摂取エネルギー”と、活動するために使用する“消費エネルギー”の収支が合っていれば、人は太ることも痩せることもなく安定した状態が保てる。
 「それを維持することができれば、肥満にはなりません。さらに言えば、このことはどんな体質の人でも同じメカニズムで変わりはないのです。よく『水を飲んでも太る体質』と言う人がいます。“太る”というのは余ったエネルギーを脂肪として溜め込むことですが、水はエネルギーにはならず、収支に影響を与えることはないので、水で太ることはありえないのです」(同)

 前述のように、アルコールや薬物の依存症と同じで、肥満の人は前頭葉の前頭前皮質に働きかけ、過度の興奮を抑えるドーパミン受容体の数が少ないことが分かっている。
 また、意思決定に重要な役割を果たす眼窩前頭皮質の機能が変化し、「食べるのをやめなくちゃ」と思っていても、脳の報酬系に支配され食欲を抑えきれなくなっている。

 しかし、同じように糖や脂肪を摂り、運動もしているのに、痩せている人と太っている人がいるのはなぜなのか。
 「それについては、遺伝子の影響があるとも言われています。肥満に関わる遺伝子は100種類以上見つかっており、中でも影響が大きいのが脂肪・肥満関連遺伝子(FTO)です。これは誰もが持つ遺伝子なのですが、その変異型を持つ人は肥満リスクが高まることが分かっています。英国のある研究チームの調査発表のデータよると、1つの遺伝子が変異していると肥満になる可能性が25%アップし、2つの変異があると50%アップして体重は平均3キロ重い。FTOの型の違いは脳にも影響をもたらし、食欲を抑える機能が働きづらくなり、普通の人より満腹感を感じにくいと言われるのです」(健康ライター)
 さらに肥満は、腸内細菌が原因という見方もある。同じ家に育った片方は肥満で、もう一方が痩せている一卵性双生児の腸内細菌を調べたところ、後者は前者より“痩せる菌”とも呼ばれる細菌のクリステンセネラセエが目立って多かったという。この細菌は脂肪を撃退する細菌ではないかと考えられている。

 だが、何といっても現代の肥満の大きな要因と言われているのは、運動不足だ。フィットネスクラブやスポーツクラブは増加の一途だが、我々が運動不足になっているのは、スポーツをする機会の減少ではなく、車や電車、エレベーターなど、移動手段が発達し、体のエネルギーを使う代わりにガソリンや電気のエネルギーを使うようになったからだ。
 「肥満が問題視されるのは、驚くほど多くの病気を招く可能性が高くなるからです。年齢とともに筋肉量や骨量が減り、重たい体を支える力も弱くなり、腰痛や膝などの関節障害を起こしやすくなる。また、高尿酸血症から痛風、脂肪肝や膵炎を促進させたり、あるいは心筋梗塞、脳卒中などの突然死の原因にもなります」(糖尿病専門医)

 日本人には比較的小太りの人が多く、欧米人のように超肥満体の人はあまりいない。これは、日本人がもともとインスリンの分泌能力が低く、少し太ると糖尿病などになりやいことを意味する。そのため、肥満にはとくに気をつける必要があるのだ。
 「現在、長期の体重減少と健康改善が唯一認められているものとして、減量手術がある。これは胃を小袋に分け小腸につなぐバイパス手術で、物理的に食べられなくするもの。また、欧米では空腹ホルモンのグレリンを下げるホルモン注射の開発も進んでいます」(前出・健康ライター)

 とはいえ、まずは自分の努力によって肥満を解消したいものだ。

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