葉加瀬マイ 2018年11月29日号

森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 核心に迫る日本批判

掲載日時 2017年02月22日 10時00分 [政治] / 掲載号 2017年3月2日号

 トランプ大統領が、ついに核心に迫る日本批判を始めた。
 1月31日、米国の大手製薬会社幹部との会談のなかで、「他国は、通貨やマネーサプライ、通貨の切り下げを利用し、我々より優位に立ってきた。中国をみてみろ。日本がこの数年でやってきたことをみてみろ。彼らは何年にもわたって通貨を切り下げ、市場を操ってきた」と、中国や日本の金融政策を批判し、米国の製薬会社が被害を受けているとしたのだ。
 この日本批判に対して安倍総理は、2月1日の衆院予算委員会で、日本が為替を操作したという事実はなく、金融緩和について「2%の物価安定目標に到達するために適切な金融政策を日銀に委ねている」と述べている。加えて、日銀の黒田東彦総裁も「物価安定のために金融緩和を進めることは、G20各国もすべて了解している」と、為替操作を否定した。

 このポイントは、トランプ大統領が円安を批判したのではなく、日本の金融政策自体を批判したところにある。
 金融緩和をすれば、通貨安がもたらされるというのは、経済学の教科書にも書いてある“常識”だ。しかし、それを公の場で言ってはいけないという不文律がある。もし、それを公式に認めてしまうと、各国が自国通貨の供給をどんどん増やし、通貨安に誘導する“通貨安競争”を招いてしまうからだ。通貨安競争の先には、世界インフレが待っている。
 もちろん、安倍総理も金融緩和を進めれば、円安になることは当然分かっている。分かっているからこそ、金融緩和を頑なに拒んできた日銀の白川方明前総裁の任期切れと同時に、金融緩和派の黒田総裁を任命したのだ。
 だから、トランプ大統領の主張は筋が通っているといえば通っているのだ。ただし、安倍総理はここで譲ることはできないだろう。金融緩和は、アベノミクスの根幹となる基本政策だからだ。

 リーマンショック時を基準に日米の資金供給量(マネタリーベース)の動きをみると、一貫して米国のほうが金融緩和の度合いは大きかった。そのため、民主党政権末期には1ドル=70円台という円高になってしまったのだが、日銀が黒田体制になってから、急激に日本の資金供給が増えていく。そして、一昨年末に米国がゼロ金利解除をすると、米国の資金供給が横ばいから減少に転じたため、昨年には、ついに日本の資金供給が米国を抜いてしまったのだ。
 つまり、トランプ大統領の日本批判は、「子分の分際で親分を抜くとは何事か」ということなのだ。

 これにより安倍総理は、難しい立場に立たされた。もし、ここで金融引き締めに転ずれば、アベノミクスは崩壊し、日本はデフレに逆戻りだ。だから、結局のところ、トランプ大統領に生贄を渡して、金融緩和を継続させてもらう可能性が高いのではないか。
 しかし、そうなると牛肉やコメなどの日本の農産物を犠牲にするとか、米国から大量の武器を購入するとか、日本の医療や保険を米国に開放するなどといったことが避けられない状態になる。
 最終的に、日本の国民生活が厳しくなることは確実だろう。

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