安倍vs検察 河井前法相夫婦逮捕「次の一手」頂上作戦

政治・2020/06/28 12:00 / 掲載号 2020年7月9日号
安倍vs検察 河井前法相夫婦逮捕「次の一手」頂上作戦

安倍晋三

閉じる

「検察の最終ターゲットは安倍官邸」

 6月18日、河井克行前法相夫妻を逮捕したのは、東京地検特捜部と広島地検の最強検察混成チームだ。この大捕り物劇に、検察庁内部では「ひと段落の空気」が流れていいはずなのに、周辺は、いまだピリピリとした雰囲気に包まれたままだ。その理由として、司法記者から漏れ出した言葉が冒頭の指摘だ。

 河井夫妻の逮捕容疑は昨年の参院選での広島選挙区をめぐっての買収。定数2の同選挙区は長年、自民党と野党が議席を棲み分けてきた。自民党には岸田派の重鎮である溝手顕正・元国家公安委員会委員長が在籍、続投を目指していた。そこに弓を引いたのが自民党2人目の新人候補、河井案里容疑者だった。

 自民党広島県連の猛反対を押し切り、党本部推薦で案里容疑者は立候補。自民党は互いの票を食い合う血で血を洗う仁義なき戦いとなった。結果、当選したのは無所属の野党推薦候補と案里容疑者で溝手氏は落選の憂き目に。死闘を繰り広げた選挙で河井陣営がなりふり構わず展開したのが、買収作戦だったのだ。

「逮捕容疑の買収総額は約2570万円という驚きの現ナマ、札束攻勢。主導的役割を果たしたのは、夫の克行容疑者だったと見られている。すでに検察は河井夫妻から選挙の詳細を記したスマホを押収し、解明を進め、買収を仕掛けられた側の供述も得た。つまり、公職選挙法違反容疑の証拠は十分で、本来、在宅起訴でも済む話だ。ところが、検察は身柄を取った。証拠隠滅や案里容疑者の自殺を恐れたようです。見方を変えれば、事件はまだ入口で、出口が別にあるということ。出口として囁かれているのが安倍官邸周辺ですよ」(司法担当記者)

 元検察関係者が続ける。

「問題は自民党からの巨額選挙資金1億5000万円だ。通常、選挙で自民党からの支給相場は1500万円だから10倍にもなる。同じ広島選挙区で自民党公認候補の溝手氏への支給も1500万円だった。河井陣営にだけ、誰がどんな目的で莫大なカネを流したのか、いまだに全く解明されていない。その解明が第1。自民党内では『1億5000万円という多額の現金を指示、準備できるのは総裁か幹事長のどちらか』と言われている」

 買収資金の原資は、党資金である1億5000万円の疑いが強い。というのも、案里容疑者の出馬表明は昨年3月で参院選挙は昨年7月。選挙で事務所費、印刷代で1億5000万円もの資金は必要ないからだ。

「実際、案里事務所が選挙後、広島県選挙管理委員会に提出した選挙収支報告の支出額は約2690万円。案里容疑者は週刊文春の取材に『1億5000万円は印刷代、ポスティング費用等で消えた』と答えているが、そんな話は誰も信じていない。検察の調べで買収総額は約2600万円だから、その原資はどう見ても党資金だ。しかし、選挙収支報告と買収額を合わせても、まだ数千万円の使途が見えない。1億5000万円から大物政治家に金が流れていないかの解明が第2」(同)

 全国紙遊軍記者の話。

「自民党の下野時代、溝手氏は安倍元首相(当時)を『過去の人』などと悪口を言い続けた。その溝手氏への刺客として、安倍首相が案里容疑者を送り込んだのが広島選挙区の背景です。参院選挙期間中の昨年7月14日、安倍首相自ら案里容疑者の広島市内での街頭演説に駆け付けた。さらに、安倍選挙区(山口4区)の“国家老”配川博之筆頭秘書をトップに、表も裏も知り尽くす元柔道家の畑村剛秘書ら合わせて4人の有能な秘書を案里陣営に派遣している。秘書の派遣は『自らの指示』と6月の会見で安倍首相も認めています」

 安倍首相を陰に陽に支える大物秘書らがわざわざ出張って来たことで、案里容疑者に肩入れした広島の地元有力者は多い。

「自民党からの1億5000万円に、安倍秘書らが全くノータッチだったのかも、今後の大きな捜査のポイントとなる。また、秘書らは安倍後援会が国会で火ダルマになった『桜を見る会』疑惑でも氏名が取り沙汰された」(同)

 河井前法相夫妻の逮捕は、6月17日の国会閉会後。検察内部では、一時、国会開会中に議員逮捕の許しを得る許諾請求のもと、早く身柄を抑える方法を模索したという。

「許諾請求するには、検察の手の内を国会に明かさないと許諾されない。それを嫌った検察は国会閉会後の逮捕を選択した。それだけ安倍政権の動きを警戒しており、官邸周辺がターゲットという憶測が飛ぶのです」(前出・元検察関係者)

 安倍官邸は河井夫婦事件の捜査の最中、検察をけん制するかのように検事総長など幹部人事を法改正で牛耳ることを狙ったが、目論見は世論の猛反発で断念。逆に、検察サイドの闘志に火をつけた。

「一時、検察は夫妻在宅起訴で一件落着の方向だった。だが、検察人事騒動を機に『桜を見る会』も含め、安倍官邸とガチンコ対決の肚を括ったようです。さらに、検察は綻びが見え始めた安倍首相が随所で弱気になりつつあるという情報も把握している」(同)

 検察が怒濤の攻勢に出そうな裏では、表向き容疑を否認しているとされる河井夫婦の完落ち(全面自供)説もある。

 自民党総裁室へ捜査のメスは入るのか。安倍VS検察抗争は熾烈を極める。

関連記事
関連タグ
政治新着記事