葉加瀬マイ 2018年11月29日号

森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 10年前の主役たち復活

掲載日時 2015年12月16日 10時00分 [社会] / 掲載号 2015年12月24日号

 10年前の経済の主役たちに関するニュースが重なった。一つは、ライブドア事件による損害賠償訴訟の地裁判決だ。
 旧ライブドアの粉飾決算で株価が急落し、損害を受けたと、個人株主が堀江貴文元社長ら8人に1億7000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は堀江氏ら4人に総額9200万円の支払いを命じる判決を下した。地裁は、ライブドアの有価証券報告書に架空売上があり、経営陣も認識していたと判断したのだ。

 もう一つのニュースは、村上世彰元村上ファンド代表の関係先に、証券取引法違反の疑いで強制調査が入ったことだ。村上元代表は、東証1部上場企業の株式に、取引時間終了直前に大量の株を売り浴びせて、株価を引き下げる「終値関与」と呼ばれる手口で相場操縦していた疑いが持たれている。売った株式は、時間外取引などで買い戻したとみられている。
 村上世彰氏はライブドア事件の際、ライブドアによるニッポン放送乗っ取り構想を予め堀江代表から聞き、大量のニッポン放送株を買い占めたインサイダー取引の疑いで逮捕された。当初、村上氏は「聞いちゃったかと言われれば、聞いちゃってるんですね」と容疑を認めていたが、公判では一転否認に転じた。だが、'11年に最高裁で、懲役2年・執行猶予3年、追徴金11億4900万円の有罪判決が確定している。

 裁判沙汰にはなっていないが、村上氏と堀江氏に関しては、もう一つ大きな疑惑がある。
 '05年2月8日、ライブドアは時間外取引でニッポン放送株の29.6%を588億円で取得し、それまでに取得していた株式と合わせて35%の大株主に突然躍り出た。証券取引法は、持ち株比率が3分の1以上になる取引を市場外で行ってはならないと定めている。ところが堀江氏は、「時間外取引は市場内取引だ」と主張した。しかも、「たまたま時間外市場を見ていたら、大量のニッポン放送株が売りに出ていた」などと強弁したのだ。
 しかし、時間外市場に588億円分ものニッポン放送株が、たまたま売りに出ることなどありえないし、そもそも堀江氏はその直前にリーマンブラザーズ証券から800億円の資金調達をしている。ライブドアのニッポン放送株大量取得には、村上ファンドが予め買い集めていたニッポン放送株が含まれていたのだ。「法律を守っていればいい」というのではなく、「捕まらなければいい」というのが、彼らの基本思想なのだろう。

 ちなみに、村上氏は、インサイダー取引疑惑の会見で、今後は証券業務にかかわらないと引退表明している。ところが、ここにきて、またしてもこの事件だ。やはり何も反省していないのだろう。
 その点、堀江氏は、ハゲタカ活動から手を引いている。ただ、粉飾決算に関しては、いまでも「会計士が大丈夫だと言ったからやっただけ」として、反省してはいない。
 しかし、ライブドア事件で一番ひどい目にあったのは、なけなしの老後資金をライブドア株に投じて紙くずにしてしまった庶民だ。彼らは、裁判に訴える力さえない。今、そのことを2人は、どう考えているのだろうか。

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