葉加瀬マイ 2018年11月29日号

梅雨時に体調不良を引き起こす! “気象病”の仕組みと対処法

掲載日時 2018年06月16日 08時00分 [健康] / 掲載号 2018年6月21日号

 ジメジメとした憂鬱な季節といえば梅雨。昨年は九州南部で6月6日頃、東北北部で7月1日頃に梅雨入りした。
 その時期になると、古傷の痛みや頭痛、憂鬱な気分を訴える人たちがいるが、それらは“気象病”の可能性がある。同病について英語では、メテオロパシー(meteoropathy)という名称があるが、日本国内では正式な病名ではない。それだけ認識されていないということだ。
 梅雨時期だけでなく、快晴の日とどんよりとした雲の日を比べれば、体調に違いがあることは多くの人が経験していることだろう。

 気象病外来を開設している『せたがや内科・神経内科クリニック』の久手堅司院長はこう説明する。
 「気象病は、気圧差、温度差、湿度を要因とし、めまいや吐き気、頭痛、肩こり、首こり、全身の倦怠感、関節痛、うつ症状、不安が強くなるといった様々な症状を引き起こす病の総称です。当院で気象病外来を開設し1年半が経過しましたが、こうした症状を訴える患者さんが、下は小学生から上は80代の方まで新患で70〜100名が来院します」

 梅雨時期に体調不良を訴える人が多いのはなぜなのか。
 「梅雨時期の体調不良は、気圧の変動がポイントです。普段、日常生活で気圧を意識することはあまりありませんが、実際には1平方メートル当たり10tの重さが体に加わり、この外からの圧力に対し体内の圧力がバランスを保っているため意識せずに生活できているのです」(同)
 気圧の変動は、ポテトチップスの袋が、気圧の低い上空の飛行機内でパンパンに膨れ上がっているのをイメージすると分かりやすい。

 それでは、気圧の変動はどのようなメカニズムで体に影響を与えているのか。
 久手堅院長が続ける。
 「まず、気圧は耳の奥の内耳にあるセンサーで感知されます。飛行機に乗り、高度の変化(気圧の変化)に伴い、耳の調子が悪くなった経験がある方もいるでしょう。内耳で感知した気圧は、内耳につながっている平衡感覚に関係する前庭神経を通じ脳へ伝わります。さらに、脳から視床下部に中枢がある自律神経へと伝わり、自律神経で異常を感知して、交感神経、副交感神経のバランスが崩れ様々な症状が現れるのが気象病のメカニズムです。寒暖差(前日比と同日内の日内変動)が7℃以上あると、皮膚の温度のセンサーを介し、自律神経が温度調整をするために疲労してしまう。これも、寒暖差による気象病です」

 自律神経とは、緊張時や運動時などに優位に働く交感神経と、リラックス時などに優位に働く副交感神経からなる。
 「来院される患者さんの多くが仕事で長時間パソコンと向き合うデスクワークで、プライベートでもスマートフォンを長時間利用したりと自律神経のなかでも交感神経が優位に働いている緊張状態にある時間が長いんです」(同)

 気象病には、その他にも男性より女性のほうがなりやすいことや、ピークは女性が20代〜30代、男性が30代〜50代、さらに冷暖房が効いている環境ですごすことが多い場合や、姿勢が悪い、運動をほとんどしない人などに見られる傾向があるという。
 また、気圧の変動に敏感なため、中にはゲリラ豪雨を予測できたり、沖縄に台風が近づくのを遠く離れた東京にいながら察知できる人もいるというから驚きだ。

 気象病と診断されると、どのような治療を受けるのだろうか。『せたがや内科・神経内科クリニック』では、頭痛やめまいに効く漢方薬や乗り物酔い用の薬を処方するという。
 「乗り物酔いは、車内で頭が揺れることによって気持ちが悪くなる。同様に、気象病も気圧によって頭部が揺らされる状態と考えられます。天気予報やインターネットで気圧をおおよそ把握しておけば、事前に不調が起きそうか予測できるので、酔い止め薬を服用することで症状を軽減することができます」(同)

 ただし、前述のような気象病のメカニズム以上に、久手堅院長が根本的な原因と考えているのは骨格の歪みだという。
 「私は頭痛やめまい、しびれ等を主に診る神経内科が専門ですが、たとえば、頭痛には片頭痛と緊張性頭痛の2種類があります。日々患者さんと接していると、どちらも骨格の歪み、ひいては自律神経が関係している。それは、首こりや肩こりも同様です。現在のビルは免震構造で、地震に対し揺れて耐える構造ですが、ひと昔前のビルは耐震構造で、揺れずに硬い状態を維持する構造になっています。人間の理想的な姿勢は、耳たぶ、肩、腰、膝、踝が横から見た時に一直線で、背骨がS字のラインを描いていること。その姿勢で免震構造のように自然と揺れるようになっているのが理想なのですが、頭痛や気象病に悩む患者さんたちの多くは、理想的な姿勢でない上に、耐震構造のように硬くなっている状態なのです」(同)

 骨格の歪みを正すためには、日常生活を見直すことが重要だという。たとえば、座る姿勢。一般的に男性の場合、股を開いて座りがちだがそうではなく、まず土踏まずを首幅に合わせて立つことが正しい立ち姿勢で、そのままスクワットをするように腰を下ろし座ると、骨盤が立った正しい座る姿勢になるという。
 また、肩こりや頭痛、気象病などの自律神経の乱れが気になる人は、耳たぶを水平方向へ5〜10秒ほど数回引っ張ったり、耳たぶの後ろにある骨の凹みを斜め上へ30秒ほど押すのも、セルフケアとして効果的だそうだ。

 そして、もちろんパソコンやスマートフォンなどを長時間使用しないことも大切。
 「就寝直前まで、スマートフォンなどを手放せない方がいますが、それらが発するブルーライトは脳を覚醒し睡眠の質を下げると言われています。就寝の1〜2時間前からそれらの機器の使用を避けるのが理想的。ブルーライトは、睡眠だけでなく自律神経にも影響すると言われています。最近では、肌のシワやたるみの原因になるとも報じられました。そのような症状を緩和するために、ブルーライト軽減メガネや目薬も出ているので、利用しましょう」(健康ライター)

 生活を見直して、だるさを吹き飛ばそう。

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