森咲智美 2018年11月22日号

話題の1冊 著者インタビュー 青木美希 『地図から消される街 3.11後の「言ってはいけない真実」』 講談社現代新書 920円(本体価格)

掲載日時 2018年04月15日 16時00分 [エンタメ] / 掲載号 2018年4月19日号

話題の1冊 著者インタビュー 青木美希 『地図から消される街 3.11後の「言ってはいけない真実」』 講談社現代新書 920円(本体価格)

 ――被災地では“避難指示解除”が進んでいるといいますが、実際の街の様子はどうなっているのですか?

 青木 昨春に政府が避難指示解除した原発周辺の4町村では、10カ月たっても帰還率は4.3%にすぎませんでした。昨年4月に福島県浪江町に泊まった時はコンビニが夕方で閉まり、夜、食事ができる店はありませんでした。11月には街の中心街では約60店舗あったうち、7割が廃屋状態、2割は更地。通常営業していたと確認できたのはガソリンスタンド2軒だけでした。
 浪江町は福島第一原発に一番近いところで4キロメートル。原発廃炉作業への不信、除染で線量が年1ミリシーベルトまで下がっていない不安、そして誰もおらず、介護施設や病院が町内にないこと、さまざまな要因で人は戻っていません。

 ――政府が“住民帰還”を急ぐ理由とはなんでしょうか?

 青木 知人の官僚は賠償を打ち切って「東電の破綻を防ぐため」と言います。元経産官僚の古賀茂明さんは、東電が「天災地変なので責任を免れる」として国に賠償を押しつけることがないように、「経産省が東電を守る」という密約があったと話しています。
 経産省が、津波対策が不十分なまま原発推進をしてきた責任を問われないように、という判断だったそうです。

 ――帰還できない人たちは現在、どうやって暮らしているのでしょうか?

 青木 昨年3月に避難指示が出なかった地域からの避難者や、2014年に避難指示が解除された田村市、川内村の一部、約1万2000世帯以上の無償の住宅提供が打ち切られました。都の調査では、打ち切り後も都内に残った世帯は7割近く。その半分以上が月収20万円未満で「生活が維持できるのか不安だらけ」「家族が多く、生活資金が不安」などの声が寄せられました。
 福島県が2年間だけ家賃を補助する制度を作っていますが「子どものためにも、もっと国が責任を持ってほしい…」と嘆く母親もいます。昨年5月には、住宅提供を打ち切られた後に自殺した母親もいました。
 今年3月には楢葉町、来年は飯舘村や南相馬市などで、打ち切りがあります。住宅提供を打ち切られた人たちが今後ますます困窮するのは明らかです。原発事故後に作られた『子ども・被災者支援法』では“国が住宅確保の施策を講じる”とあります。被災者からは「国は法律通りに住宅を確保してほしい」との要望が出ていますが、政府はそれを聞くどころか、避難者に対する追い出し訴訟が起きているのが現状なのです。
(聞き手/程原ケン)

青木美希(あおき・みき)
新聞記者。1997年北海タイムス入社。北海タイムス休刊にともない'98年9月に北海道新聞入社。'10年9月朝日新聞に入社。'13年特別報道部の「手抜き除染」報道を手がける。取材班は新聞協会賞を受賞した。

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