菜乃花 2018年10月04日号

友成那智 メジャーリーグ侍「007」 「黒田博樹」が今もメジャーで賞賛される7つの理由

掲載日時 2016年11月13日 16時00分 [スポーツ] / 掲載号 2016年11月17日号

 10月18日、広島カープの黒田博樹が引退を表明した。
 このニュースは、米国のスポーツメディアやニューヨーク、ロサンゼルスの一般メディアで、すぐに報じられた。それらのメディアはただ事実を伝えるだけでなく、黒田のメジャーでの活躍が賞賛に値するものだったことを、具体例を挙げて報じていた。特に高く評価されたのは、以下の7つの点だ。

(1)超一流の通算防御率
 メジャーリーグの打者は、日本の打者よりずっとパワーがあるため、メジャーの試合は点が入りやすく、先発投手の平均防御率は4.34(今年度)という数値である。日本人の先発投手もメジャーに行くとパワーヒッターとの対戦が多くなるため、日本時代より防御率がかなり悪くなることが多い。長い間メジャーで活躍した投手でも通算防御率が3点台だった者はおらず、野茂英雄が4.24、大家友和が4.26、松坂大輔が4.44と、すべて4点台だった。
 そんな中で黒田の通算防御率3.45は燦然と輝いている。これは21世紀最初の10年間で最高の投手と言われたロイ・ハラデーの通算防御率3.39にはわずかに及ばないものの、メジャーを代表する左腕だったクリフ・リーの3.52、トム・グラヴィンの3.54よりいい数字だ。メジャーでは通算防御率が3.50以下の先発投手は超一流のキャリアを送った投手と見なされる。日本では知られていないが、黒田もその1人なのだ。

(2)メジャーで日本以上の成績
 メジャーに移籍した日本人投手は、平均で25%ほど成績が悪くなると言われている。その中で例外的存在なのが黒田だ。黒田は広島カープで11年間投げてからメジャーに活躍の場を移し7年間投げたが、広島時代('97〜'07年)の防御率が3.71だったのに対し、メジャーでの通算防御率は3.45。これはメジャーのパワー・ベースボールに適応するため、フォーシーム(通常の速球)をほとんど投げない投球スタイルに変えたことが大きかった。

(3)抜群の費用対効果
 メジャーではメディアもファンも、投資額に見合った働きをしているか、という尺度で選手を評価する。メジャーに挑戦した日本人の先発投手は起用法にアジャストできず、大半が年俸に見合った働きが出来ずに評価を下げている。
 しかし黒田は例外で、メジャーに在籍した7年間で年俸以上の働きを見せた。年俸総額は8800万ドル(92.7億円)。それに対して貢献ポイントであるWARの数字をもとに算出した「実際の働き」は9480万ドル(99.5億円)相当。つまり7億円くらい「黒字」を出したことになる。

(4)計算できる投手
 安定感という尺度で見れば、黒田はメジャーでも5本の指に入る存在だった。メジャーでは先発投手の実力を測るとき、最も重視されるのが防御率だ。黒田は一番よかった年が4年目('11年)の3.06、悪かったのが2年目('09年)の3.76で、防御率が4点台になった年は一度もなかった。どんな偉大な投手でも成績が大きく落ち込む“ダウンイヤー”は必ずあるものだが、黒田はそれが一度もない稀有な存在だった。

(5)2年間ヤンキースのエース
 黒田がヤンキースに在籍した3年間('12〜'14年)は、長期契約している主力選手の多くがピークを過ぎて不良債権化し、めぼしい若手の台頭もほとんど見られなかったため、得点力が大幅に低下していた。おまけにローテーションにも計算できる投手がいなくなった。
 そんな中で黒田は、'12、'13年は事実上のエースとして孤軍奮闘。'14年は先発投手でただ1人、フルシーズン投げ抜き、ジラーディ監督から頼りにされ続けた。

(6)3年連続1年契約
 メジャーリーグではどの選手も、2年契約が妥当な成績であっても3年、4年契約を狙い、代理人とともにシビアな銭闘を繰り広げる。そして、少しでも高い球団と契約するのが普通だ。
 その中にあって、ヤンキース時代の黒田は1年契約でチームに残留し続けた。いつでも古巣広島カープに復帰して投げられるように、複数年契約を避けていたのだ。他球団から2年契約のオファーがあっても、あえて1年契約でヤンキースに残留。それで最大の貢献をする黒田のクリーンな生き方は、メディアやファンから高く評価された。

(7)若い投手のお手本
 黒田は毎日、トレーナーとマンツーマンで入念に体の手入れを行うだけでなく、次の対戦相手を徹底的に研究し、各打者に対する攻め方を、ストライクゾーンが9分割されたチャートに具体的に描いて頭に叩き込む。その真摯な姿勢と完璧な準備は、メジャー1年目から監督・コーチに賞賛された。
 ドジャースのハニカット投手コーチは、「10年に一度の才能」と評価されていた大型ルーキーのクレイトン・カーショウがメジャーに昇格した際、しばらく黒田と行動を共にするように指示し、黒田流の完璧な準備を吸収させた。その後、カーショウはメジャーNo.1の投手に成長したが、折に触れ、黒田から多くのことを学んだと公言。今も感謝の念を口にしている。

ともなり・なち 今はなきPLAYBOY日本版のスポーツ担当として、日本で活躍する元大リーガーらと交流。アメリカ野球に造詣が深く、現在は大リーグ関連の記事を各媒体に寄稿。日本人大リーガーにも愛読者が多い「メジャーリーグ選手名鑑2016」(廣済堂出版)が発売中。

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