葉加瀬マイ 2018年11月29日号

世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第237回 空襲警報が鳴り響き

掲載日時 2017年09月13日 10時00分 [政治] / 掲載号 2017年9月21日号

 2017年8月29日の5時58分、北朝鮮が弾道ミサイルを発射。ミサイルは日本上空を通過し、北海道の襟裳岬の東方沖、約1180キロメートルの太平洋に落下した。
 日本政府は北海道、青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島、茨城、群馬、新潟、長野の各県に「Jアラート(全国瞬時警報システム)」を発動。
 「北朝鮮西岸からミサイルが東北地方の方向に発射された模様です。頑丈な建物や地下に避難して下さい」
 と、「国民保護に関する情報」を伝達。物々しいサイレンの音に、何事か、とばかりに目を覚ました読者も多いだろう。

 北朝鮮の日本上空を越えるミサイル実験を受け、マスコミでは例により、「アメリカが」「中国が」「韓国が」「ロシアが」「国連が」といった、他人事のような報道が繰り返されるのだろうが、
 「サイレンが鳴り響いたのは、日本国である」
 という現実を踏まえ、「我が国はどうするべきなのか?」を主体的に考えなければならない。29日6時2分に我が国で鳴り響いたサイレンは、事実上の「空襲警報」なのだ。

 ミサイル防衛の強化はもちろんだが、敵基地反撃能力の保有等について、臨時国会を召集してでも議論を始める必要がある。臨時国会は9月末に開かれるが、それでは遅すぎる。
 というよりも、本来であればむしろ「野党」が政府に対して、
 「敵基地反撃能力の保有が必要なのではないか?」
 と、国会で追及し、同時に国民を守るという基本的な主権の行使のために、与野党一丸となって取り組まなければならない状況である。
 29日早朝に鳴り響いたサイレンの音は、日本の「平和」あるいは「平時」の喪失を意味していることを、我々は明確に認識するべきなのだ。

 ところで、戦後初めて我が国で「空襲警報(事実上の)」が鳴り響いたことを受け、ネット上では、
 「マジでこんなんで起こすなクソ。こんなんで一々出すシステムを入れるクソ政府」(堀江貴文氏のツイッター)
 「Jアラート テレビの騒ぎ過ぎ(略)北朝鮮がミサイルを打ち上げるたびにこういうから騒ぎをくりかえすのか? 北の脅威をいたずらに煽っている輩がいるのだろうか?」(鳥越俊太郎氏のブログ)
 「北朝鮮も怖いが、『戦時放送』を流す安倍政権も怖い」(慶応大学の金子勝教授のツイッター)
 などと、政府の対応を批判する著名人が少なくなく、大変驚いた。
 Jアラートについて批判する人々は、逆に北朝鮮のミサイルが日本上空を通過したとして、政府が一切、警戒情報を流さなかった場合、どのように反応するのだろうか。恐らく「政府は何やってんだ、クソ政府」などと、やはり批判するのではないか。
 あるいは、本気で北朝鮮が「未来永劫、日本をミサイル攻撃しない」と信じ込んでいるのだろうか。非常事態は起こり得る。「起こり得ない」と信じ込んでいるとなると、これは相当に能天気だ。

 最近の北朝鮮のミサイル危機で、戦後、長らくお花畑的な平和に浸っていた日本国民の「本性」が、次第に暴かれつつあるように思える。
 東日本大震災と福島第一原発の事故の後、筆者は原発反対派に対し、
 「反原発派は、原発を停止し、結果的に日本で大停電が起きた場合、どのように反応するのだろうか。絶対に『政府や電力会社は何やっているのか!』と、批判の叫びを上げるのでは?」
 との感想を覚えたものである。非常事態が発生した時にこそ、人間は本性がむき出しになるのかもしれない。

 日本の平和も、エネルギー安定供給も、別に神が保障してくれているわけでも何でもない。我々、日本国民が『自分たち』で維持しようと努めない限り、平和もエネルギー安全保障も確立できない。
 日本国の安全保障は、日本国民にしか構築できない。別の書き方をすると、我々日本国民を守ってくれる共同体は、最終的には日本国以外には存在しないのである。

 ところで、北朝鮮がミサイル開発や核開発に邁進していることを受け、
 「やがてアメリカの怒りを買い、北朝鮮は破滅する」
 といった感想を覚えた日本人は多いだろう。とはいえ、アメリカが北朝鮮を軍事攻撃するとしても、それはあくまで「アメリカのため」であり、日本国民のために動くなどということはあり得ないのだ。何しろ、日本とアメリカは違う国なのである。
 今回の北朝鮮のミサイル危機を受け、日本国民は「自分たちを守るのは、日本国家のみ」という、至極当然の現実を思い出す必要がある。

 個人的には、北朝鮮が東京にミサイルを撃ち込んだとしても、日本国民は瞬時には沸騰して大騒ぎするものの、2、3日もしたら忘れてしまうのではないかと懸念している。何しろ、東日本大震災の際に、あれだけ防災安全保障が意識されたにも関わらず、相変わらずインフラ整備や公共投資に対する国民の「嫌悪感」は払しょくされていない。
 いずれにせよ今回の北朝鮮危機を受け、日本国民が「安全保障」について一人一人が考え、国民主権国家の「主権者」としてどうするかを考え始めなければ、普通に我が国は亡国に至る。日本国民は、日本国家の主権者である。主権者である以上、日本政府が間違いを犯したとして、すべては我々の責任になってしまうのだ。

 8月30日、国会の閉会中審査が開催され、北朝鮮非難決議が採択された。
 野党には、むしろ安倍政権の対北朝鮮の「弱腰姿勢」を批判し、特に『万全を期す』という、北朝鮮がミサイルを撃つたびに安倍総理が使う抽象用語が、具体的に何を意味しているのかを追及してほしい。さらに敵基地反撃能力や核武装について、むしろ野党陣営から積極的に切り出し、議論を始めるべきだ。
 改めて強調したいのだが、我が国はすでに「空襲警報が鳴り響く国」なのである。戦後のお花畑的平和主義から脱却しない限り、我が国に未来はない。

みつはし たかあき(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、分かりやすい経済評論が人気を集めている。

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