葉加瀬マイ 2018年11月29日号

森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 企業の強欲が経済をつぶす

掲載日時 2016年06月30日 14時00分 [社会] / 掲載号 2016年7月7日号

 6月1日、今年1〜3月期の法人企業統計が発表された。安倍政権が発足したのが'12年12月だから、安倍政権初めての決算となった3年前の'13年1〜3月期のデータと比べてみると、アベノミクスで何が起きたのかが、鮮明に浮かび上がってくる。

 まず、全産業(金融・保険業を除く)の売上高は3年前より1.6%増えた。1年当たりに直すと0.5%だから、大きな伸びとは言えないが、成長したことは事実と言える。
 その中で、経常利益は9.4%増と大きく増えている。理由と思われるのが、従業員給与が1.9%減となっているということだ。アベノミクスの下で、企業は売り上げを増やすとともに、従業員の給与を削ることによって利益を大きく増やしたのだ。

 もちろん、企業活動を継続するうえで、一定の利益を確保することは必要なのだが、安倍政権は法人税率を10%以上下げることで、企業の蓄積をさらに促してきた。
 その結果が、内部留保の爆発的拡大だ。法人企業統計では、内部留保を利益剰余金と表示しているが、この額が今年1〜3月期は、3年前より29%も多い、366兆円に達したのだ。しかもこれは、金融・保険業を除いた数字。金融・保険業を加えると、内部留保の総額は418兆円にも達するのだ。
 昨年度のGDPがちょうど500兆円だから、日本の企業はGDPの8割以上の資金を貯め込んでいることになる。ただ、こういう話をすると、「内部留保はキャッシュを貯め込んでいるというわけではなく、設備投資の源泉になっているのだ」という批判がなされるが、法人企業統計で現預金の額をみると181兆円に達しており、3年前より21%も増えている。
 従業員の給料を削ってまで、使うあてのないカネを貯め込む。日本企業は、守銭奴になってしまったのではないだろうか。

 しかし企業は、最終的に消費者を相手に商売をしているのだから、消費者イジメは最終的に自分に返ってくる。その兆候は、ヒット商品ランキングに、すでに表れている。日経MJが発表した'16年上半期ヒット商品ランキングの東の横綱が、「安値ミクス」だったという例もある。
 アベノミクスで脱デフレが進み、“安いだけでは売れなくなった”と言われてきた。現にデフレの象徴と言われた牛丼の安値競争は終息した。ところが、吉野家がこの4月から4年ぶりに豚丼を発売すると、牛丼より50円安いことからたちまち人気に火がつき、予定を大きく上回る大ブームとなったのだ。
 また、今年2月には新潟市の原価率研究所が、足立区竹ノ塚に東京初の店舗を出店した。カレーライス一皿200円という低価格が功を奏して、大行列ができている。
 ヒット商品ランキングの西の横綱は、マイナス金利だ。住宅ローン金利が下がったので、借り換え需要で銀行が賑わっているのは事実だが、結果として、銀行は収益を減らすことになっている。
 ヒット商品ランキングには、この他に「チープカシオ」も入った。Gショックから、Gショックの機能を除いたような時計だ。こんなものが、万人のニーズをとらえる時代になってしまったのだ。

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