彩川ひなの 2018年7月5日号

貴乃花救世主論が息を吹き返す大荒れ理事選裏

掲載日時 2018年01月23日 16時00分 [スポーツ] / 掲載号 2018年2月1日号

 冬の時代、到来の兆しか。
 元横綱日馬富士の暴行事件に端を発し、制御不能の内紛状態に陥っている大相撲界。1月9日には初場所前恒例の3横綱による奉納土俵入りが東京の明治神宮で行われたが、この日の観衆はなんとこの4年間で最低。モンゴル人横綱だけの土俵入りだった去年の4200人を1400人も下回る2800人しか集まらなかったのだ。

 この日は最高気温16度のポカポカ陽気でお出掛け日和。当然、大勢のファンが押しかけ大混雑となる、と思われた。だが、この不人気には明治神宮側もびっくりで、クビを傾げた。
 「今年は(事前の)問い合わせがとても多かったので、すごい人出になると覚悟していたんですが…。参拝客は日によって違ってくるので、3連休の直後というのが影響したのでは」

 ファンがソッポを向くのも分かる。1月4日の評議員会で貴乃花親方(45)の理事解任、2階級降下の役員待遇委員に処するという理事会の処分案が全会一致で承認されて決定した。
 「(協会への)報告義務を怠り、忠実義務に違反しただけでなく、明らかに礼を失していた。この決議を厳粛に受け止め、真摯(しんし)に反省し、今後は礼を持って行動して欲しい」
 記者会見に応じた池坊保子議長(75)はこのように説明し、貴乃花親方も協会からの通告に「分かりました」と連絡してきたことを明かしている。
 しかし、その後も固く口を閉じて何もコメントしていないことから、この返事が「処分に服します」という意味なのか、それとも「そちらの決定は分かりました」というだけで、それに服するかどうかはこれから考えるということなのかは判然としない。少なくとも、これですべてが決着したとは、とても言い難い状況が続いているのだ。

 その後も、この事態に油を注ぐような大相撲界の混乱は続いている。この評議員会が開かれた夜には、ただ1人の立行司で、文字通り行司界のトップである式守伊之助(58、宮城野)のセクハラ疑惑が明るみに出たのだ。
 これは、昨年12月の冬巡業中、伊之助が宿泊先の沖縄のホテルで泡盛を飲んで泥酔。部屋まで送ったまだ10代の若手行司の胸や唇に触れたり、キスしたりするなどのセクハラ行為をはたらいたというもの。ショックを受けた若手行司は、年明けになってようやく危機管理委員会に報告した。

 この前代未聞の不祥事に、相撲協会は大慌て。夜中の11時に緊急の記者会見を開いて事の顛末をつまびらかにし、伊之助にはただちに自宅謹慎を命じた。このため、9日の奉納土俵入りや、初日前日の土俵祭りは立行司抜きという事態に。
 「三役格は、立行司の代役として常に準備しているので、それをやっただけです。(淡々と)心を込めて務めました」
 急遽代役を務めた式守勘太夫はこう話したが、初場所初日には、早くも行司差し違えの失態があった。

 13日、相撲協会は緊急理事会を開き、問題の伊之助には初場所からの3場所出場停止と、すでに提出している辞表届を3場所後に受理する処分を下した。だが、こんなことでは胸を張って天皇、皇后両陛下をお迎えできるはずもない。宮内庁は初日の3日前、恒例となっている両陛下の初場所観戦を取りやめると発表した。
 「暴力問題に加えて、新たな不祥事を起こしてしまったことから、今週初めに1月場所の行幸啓をご辞退申し上げたいとお伝えしました。まことに申し訳なく、お詫び申し上げます」

 辞退を申し出た八角理事長にとっては、まさに断腸の思いだったに違いない。
 「大相撲人気はうなぎのぼり。一連の騒動を見ていると、それをいいことにあぐらをかき、タガが緩んでいたとしか言いようがない。いくら口では、こういう時こそしっかり脇を締め、言動に注意すると言っても、うわべだけ。今の八角理事長には緩んだフンドシを引き締める能力もパワーもない。この負の連鎖を断ち切る方法は1つだけ。思い切って“人心一新”を図ることです」(協会関係者)

 その難事をやってのけられる人間もまた、1人しかいない。貴乃花親方だ。つまり、沈黙を貫く親方が打って出る環境が整いつつあるのだ。問題は、何人の親方がこの危機に気付いているかだが、すでに貴乃花親方はその時に備えて着々と準備を始めている。
 その一つが、初場所初日の2日前に明らかになった。突如、部屋付き親方だった音羽山(元幕内光法)が廃業し、代わって阿武松部屋の小野川親方(元幕内大道)が「音羽山」を襲名したのだ。光法は平成22年の理事候補選の時、立浪一門の縛りを破って貴乃花親方に票を投じ、これが大きくものをいって貴乃花親方は当選。この恩義に報いるため、後に自らの部屋に迎え入れていた。その恩人をどうして切ったのか。
 「一門の結束を図るためですよ。小野川はもともと北の湖部屋の者で、元幕内北大樹が襲名するために返却を求められていました。そこで、同じ一門の大道の師匠の阿武松親方(元関脇益荒雄)との絆を強くするため、光法を辞めさせて大道に貸し出したんです」(一門関係者)

 すべては理事候補選のため。貴乃花親方は陰りが見えてきた大相撲人気復活のために、本気で立ち上がるつもりでいるのだ。
 その理事候補選は2月の初め。いよいよ、風雲急を告げてきた。

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