和地つかさ 2018年9月27日号

不倫相手と乳児を衝動的に殺害… 優柔不断の悪行と刑事の執念(3)

掲載日時 2017年08月07日 23時00分 [事件] / 掲載号 2017年8月10日号

 警察は赤ん坊の母親である真里さんが失踪前、篠山とアパートで暮らしていたことはすぐに割り出した。
 「ある日突然、『この子は私が育てる』と言って出て行ってしまった。その後のことは一切知らない」
 だが、刑事たちはこの時点で疑っていた。
 「あの男は何かを隠している。もう一度、当たろう」

 警察は母子の痕跡を徹底的に調べた。赤ん坊は出生後に一度だけ小児科で受診履歴があったが、地元の幼稚園や保育園に在籍した記録もなかった。母親の真里さんにしても、失踪後、車の免許の更新手続きは一度もなされていなかった。
 それなのに児童手当だけは真里さんの口座からきっちりと引き出されていた。さらに真里さんの車を篠山が売却し、その代金が篠山の口座に振り込まれていたことも分かった。

 逮捕前日、3人の刑事が再び篠山宅を訪れた。
 「今日は不明児の調査で来ました。私らも数年来、足取りを追ってましてな…」
 刑事は次々に疑問をぶつけた。2人の保険証が使われた形跡がないこと。それなのに児童手当だけは引き出されていること。そのATMの防犯カメラには篠山が映っていること、などだ。
 「つまり、あなたは頼まれて、お金を送金しているということかな?」
 篠山は動揺を隠せず、小刻みに体を揺らし、手の汗を何度も拭い始めた。
 「居場所を知っているのは間違いないよな。真里さんが乗っていた車を、ほんの半年前にあなたが中古車販売業者に売却し、その代金をあなたの口座に振り込んでもらっているんだから」

 篠山の喉がみるみる紅潮した。自白寸前の容疑者が見せる兆候の一つだ。
 「2人はどこにおるとかな。寒がってないやろか。篠山吉彦、2人を成仏させてやれるのはあなただけじゃないのか?」
 「…私が、殺しました」
 「仏さんはどこにいる?」
 「近くの田んぼに埋めました。そこを通りがかるたびに、ずっと苦しい思いをしていました…」

 翌日、篠山の供述に基づき、2人の遺体が掘り起こされた。篠山は殺人と死体遺棄容疑で逮捕された。
 「妻から何度も話し合いを求められる一方、被害者からは結婚を強く迫られ、現状から逃れたいと被害者の殺害を決意した。赤ん坊についても育てるつもりがなく、母親と一緒にいた方が幸せだろうと思い、邪魔だから殺した。2人には申し訳ないことをした…」

 不倫相手を子供ごと殺した男は、必ずこのパターンでバレるのだ。裁判所は「動機は自己中心的かつ短絡的で同情の余地はない。刑事責任は重大で、有期懲役刑を選択することが相当とは言えない」と断罪し、篠山に無期懲役を言い渡した。
(文中の登場人物はすべて仮名です)

関連タグ:男と女の性犯罪実録調書

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