森咲智美 2018年11月22日号

国民の新祝日 「山の日」夏の登山ベーシック入門(1)

掲載日時 2016年08月12日 14時00分 [エンタメ] / 掲載号 2016年8月18日号

 8月11日は今年から新たに国民の祝日と定められた『山の日』。お盆休みと絡めて登山を楽しもうと計画している人も多いだろう。だが、気を付けなければならないのが遭難事故だ。海と山では海の方が危険と思う人も多いだろうが、警察庁の発表による平成26年度の事故発生件数は海や川の水難1305件に対し、山岳での遭難は2293件。数そのものは格段に上回っているのだ。
 死者行方不明者については海川740人、山岳311人で、命の危険という意味では前者となろうが、それでも山が常に危険と隣り合わせであることに違いはない。山岳遭難に占める被害者の割合は40代以上の中高年が約7割。若年層の遭難はスノーボードなどでの冬山に多く、こと夏山においては大半が中高年によるものとなっている。

 「市民マラソンで完走するなど、体力には自信があったんだけど」と落ち込んだ様子を見せるのは坂田真道さん(仮名・56歳)
 「突然横殴りの雨に降られて、一応、雨具は羽織ったものの全身びしょ濡れ。何とか山小屋まではたどり着いたが、そこで動けなくなり、結局、救助を仰ぐことになってしまった」
 雨に濡れたことで低体温症となり、著しく体力を失った結果であった。

 運動するための体力と体調維持のための体力はそれぞれ別物であり、中高年においては自分でも気付かないうちに後者の体力が落ちているケースが多い。山岳救助に携わる関係者は言う。
 「ここ数年、中高年の山岳遭難が広く報じられるようになり、さすがにTシャツや運動靴といった軽装の人は減りましたが、それでもまだ山を甘く見ていると感じることは多い。中高年遭難者の多くが体力を過信していて、救助された後には決まって“まさか自分が”と言うのです」

 登山の準備においても登山靴に長袖シャツ、帽子着用、急な天気の変化に備えて雨具を携帯すればOKというものではない。
 「道に迷ったときの地図やコンパス、夜までに下山できなかったときのためにヘッドライトや簡易テントなどビバーク(野営)の用意は最低限必要でしょう」(先の救助関係者)

 登山初心者は、夏に一般の登山道を行く分にはそこまで大げさに考えることはないと高をくくりがち。
 「急な濃霧で動転してしまった」というのは松坂栄二さん(仮名・62歳)。
 「下山途中に足下も見えないほどの霧に包まれて、それでも夕暮れが迫っていたため“とにかく下っていけば大丈夫だろう”と、むやみに歩いたことが失敗でした。霧が晴れた頃にはすっかり日が暮れて、どこにいるのかもわからない。幸いケガ人はなく、携帯電話も通じたので、地元警察に連絡を取って指示を仰ぎ、雨具を身にまとい仲間と寄り添って一夜を過ごしました」
 そうして翌朝になって、地元警察により無事保護されたのだとか。なお警察や消防が救助のために出動するのは職務の一環であり、遭難者が特別に費用を支払う必要はない。しかし、民間の救助隊まで出動したときには、高額の自己負担が生じてしまう。

 登山歴30年以上になるベテランの斎藤慎助さん(仮名・48歳)は、ほんの些細なミスにより多額の出費をするハメになった。
 「登山口の駐車場に車を停めて、ちょっと写真を撮ってくるだけのつもりだったのですが、興が乗ってどんどん山中に踏み入るうちに雨が降り出したんです」

 雨具は持っていなかったが、ベテランだけにそこは慌てず、木の洞を見つけて雨宿りをしたという。
 「だけど悪いことに携帯電話を車の中に置いてきたものだから、誰にも連絡が取れない。しかも、雨はなかなかやみそうにない。それでもチョコレートや水などは持っていたので、自分としては無事に帰れると思っていたんですけど…」

 斎藤さん自身は冷静でも、家族はそうではなかった。夕刻になっても連絡が取れないことで慌てて地元警察に連絡をしたのだ。
 「駐車場に車は残っていたために、事件の可能性もあると大騒ぎになったんです。警察だけでなく民間の救助隊まで駆っての大捜索。夜だったためヘリコプターの出動がなかったのは不幸中の幸いでした」
 結果、掛かった捜索費用は、民間山岳救助隊員の夜中の活動費として3万円×5人=15万円也。もし民間のヘリコプターまで出動していれば、飛行1分につき1万円が相場とされるだけに、100万円を超える支払いも覚悟しなければならなかっただろう。

 斎藤さんの例と同様に、山菜狩りなど気軽なつもりの入山であっても、時に大きな事故につながることもある。特に今年はクマ出没の被害も増えており、さらなる注意喚起が求められる。

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