菜乃花 2018年10月04日号

四代目キム・ハンソル“仇討ち”を全面サポートする亡命政権の正体

掲載日時 2017年03月22日 10時00分 [社会] / 掲載号 2017年3月30日号

 “金漢率亡命政権”が樹立されるのは、米国か英仏か――。金正恩朝鮮労働党委員長は結果的には大失態をやらかした。トップになる気がなかった金正男氏を暗殺したことで、父の仇とばかりに“白頭の直系”が討伐に本腰を入れ始めたのだ。
 「キム・チョルというパスポートを持つ北朝鮮人が暗殺直後に金正男と公表されたのは、韓国国家情報院(旧KCIA)が彼の全行動を追尾していたからで、今回の漢率の動画登場を企図させたオランダ大使のバックに控えるのは米CIAです。あるいはCIAと北朝鮮とイランの関係に神経を尖らせるイスラエルのモサド、昨年、太永浩元駐英大使を脱北させた実績のある英MI6など、国際的な諜報機関が連携して正恩を揺さぶっている可能性もあります」(国際ジャーナリスト)

 先ごろ動画メッセージに登場した漢率が支援団体として挙げた『千里馬(チョンリマ)民間防衛』は、韓国内での認知がないとされる脱北者団体だが、あえて『千里馬』を使ったことに多くのメッセージが隠されていると北朝鮮ウオッチャーが指摘する。
 「暗殺直後に撮った動画を公表したのは、安全な場所への移動が完了したからでしょう。漢率がわざわざ『私はキム一族の一員です』と名乗ったのは『金日成の直系の四代目』であることを主張し、正恩に挑戦状をたたきつけたと理解できます。『千里馬』は1960年代に、朝日新聞が北朝鮮を『地上の楽園』と在日北朝鮮人に帰国を促した際に頻繁に使用したもので、金日成を連想させますが、本当の脱北者が使うとは思えません。米国とオランダがフロント的な意味合いを持たせるために使わせたのでしょう」

 実は、オランダと漢率が留学経験のあるフランス、そして英国の3カ国は北朝鮮とのつながりが深い。
 「英国は韓国に次いで脱北者が多く、『国際脱北民連帯』を実質的に率いる金主日氏が永住権を得て祖国に戦いを挑んでいます。亡命政権樹立となると資金が必要ですが、6カ国協議の米首席代表だったヒル国務次官補が当時明かしたところでは、スイス銀行には資金凍結された後に、金正日が正男に残したといわれる4750億円が全額ではないものの、存在するといわれていますし、英国ならCIAや韓国政府にとってアシの付かない金を送りやすいという利点がある。英国に政権をつくる公算が高いでしょう」(前出・ウオッチャー)

 前述した欧州3国は、北朝鮮がレアメタルの資源大国であることに早くから目を付け、中露と激しいつばぜり合いを演じてきた。
 「米国の資源探査衛星からの情報分析で、世界の埋蔵量のほぼ半分が北朝鮮に眠っていることが分かっています。それ以外にもリチウムイオン充電池の電極材料に用いられるコバルトや超硬材に用いられるチタニウム、さらには金や銀などの資源も確認されている。しかも最近では、ロシアの資源探査チームの調査で、北朝鮮の西海岸地域に600億バレルもの石油が埋蔵されていることも判明しています」(経済アナリスト)

 英国はいち早く2001年に北朝鮮と国交を回復し平壌に大使館を開設、ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT)が平壌で秘密裏にタバコ工場を運営していることを英ガーディアン紙にすっぱ抜かれたことがある。またオランダの銀行INGグループも、紙クズであるはずの北朝鮮国債を“統一朝鮮”誕生を予想して買い増していた。
 「'06年に英国金融監督庁が『朝鮮開発投資ファンド』に認可を与えたため、英系投資ファンドが活発に動き出したことがあります。同ファンドの顧問には、米国務省で北朝鮮問題を担当していたリン・ターク氏が就任しています。同氏は1994年に米国初の訪朝団を率いて平壌に乗り込んだことでも知られる存在です」(国際金融アナリスト)

 それにしても日本にとって気になるのは、正男氏暗殺以降の中国の沈黙だ。
 「漢率が欧州か米国に家族3人で亡命したとすれば、米中は対北朝鮮において何らかの取引をしたのではないかと推察されます。それに正男には北京にも家族があり、その家族の現在の動向は不明です。北朝鮮は過去に日本へのレアメタル輸出を打診してきたことがあります。日本としては喉から手が出るほど欲しかったのですが、拉致問題などの諸案件が横たわっていたことから実現しませんでした。もし日本の頭越しに米中朝が手を結べば、安倍政権は赤恥をかくことになります」(前出のウオッチャー)

 国際政治とは打算で動くものだ。“亡命政権”を御旗に漢率を担ぎ、埋蔵レアメタルで一獲千金をもくろむ――。これこそが米英の狙いなのかもしれない。

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