和地つかさ 2018年9月27日号

損保ジャパンが傾倒する 介護ビジネスという名の時限爆弾

掲載日時 2016年03月11日 14時00分 [社会] / 掲載号 2016年3月17日号

 川崎市の有料老人ホーム『Sアミーユ川崎幸町』の連続殺人事件は、高齢化が著しいわが国に大きな衝撃を与えた。そんな中、尋常ならざる書き込みがネット上に飛び交っている。損保ジャパン日本興亜ホールディングス(以下、損保ジャパン)をめぐってだ。
 いわく「殺人老人ホームを子会社化するのか」「買収するなら、ここもつぶれた方がいい」と−−。
 この老人ホームでは一昨年の11月から12月にかけて3人の入居者が次々とベランダから転落し、先ごろ神奈川県警が、当時87歳だった男性入居者の死亡に関して元職員を殺人容疑で逮捕した。さらに2件の転落死についても殺人を認めているという。

 さて、損保ジャパンが冒頭のような“石つぶて”を浴びる理由は明白だ。『Sアミーユ』を運営する積和サポートシステムはジャスダック上場の介護会社メッセージと積水ハウスが共同出資で設立した会社なのだ。そのメッセージに対し、損保ジャパンは2段階に分けてTOB(株式の公開買い付け)を実施。創業家と資産管理会社を対象にした第1段階はすでに完了しており、現在は一般株主を対象として3月末をめどに実施中である。損保ジャパンは260億円から最大609億円を投じて株式の51%超を取得し、社名を『SOMPOケアメッセージ』に改める。結果、川崎の殺人老人ホームは名実ともに損保ジャパンの傘下に組み込まれる。

 昨年12月には居酒屋チェーンのワタミから介護事業会社を210億円で買収、社名を『SOMPOケアネクスト』に改めたばかり。メッセージの買収が完了すれば、損保ジャパンはニチイ学館に次いで介護業界の2位に一躍浮上する。何が損保ジャパンを怒涛の参入攻勢に突き動かしたのか。
 「少子高齢化に危機感を募らせた損保各社は海外損保の買収にシフトしているが、当然ながらリスクを伴う。そこで損保ジャパンは高齢化社会が進めば介護事業は成長産業に育つと捉え、トラトラ参入した。安倍政権が家族の介護で仕事を辞める人をなくす『介護離職ゼロ』を唱え、2020年までに特別養護老人ホームなどの介護施設を40万人分整備するとのアドバルーンを打ち上げたことも“その気”にさせた大きな要因です」(担当記者)

 実は損保ジャパン、昨年3月に約20億円を投じてメッセージ株の3.5%を取得、資本業務提携を結んだ。わずか1年で買収に舵を切ったこと自体、HDの二宮雅也会長をはじめとする首脳陣の目に「介護は将来性があっておいしいビジネス。損保の2番手、3番手から飛躍するチャンス」と映ったのは間違いない。
 しかし、昨年3月の時点で『Sアミーユ』では後に明らかになる3件の殺人事件が発生していた。問題はこれだけにとどまらない。昨年12月、メッセージは『Sアミーユ』を除く有料老人ホームなど全国275の関連施設を対象にした第三者委員会による過去2年間の調査で、81件の虐待があったと発表した。具体的には「激しい暴言や心理的外傷を与える言動」が40件(19施設)、「高齢者から不当に財産上の利益を得た」が17件(15施設)、「身体に暴行」が16件(14施設)、「衰弱させるような過度の減食、長時間の放置」が7件(4施設)、さらに「わいせつ行為」が1件だった。
 これに殺人事件が加わるのだ。特殊な閉鎖空間が舞台だけに『Sアミーユ』は氷山の一角でしかなく、まさに“犯罪のデパート”と言える。
 介護業界には「トラブル件数でメッセージは突出する」と突き放す向きが少なくないが、関係者は「他社だって現実には五十歩百歩。密室の犯罪とあって闇から闇に葬られやすい。被害者が重度の認知症であれば犯罪の立証が難しく、それをいいことに悪徳職員が跋扈する。これでは良識ある職員は嫌気が差す。離職者が多いのは何も給料が安いからだけではありません」と内情を暴露する。

 そんな“伏魔殿”に損保ジャパンが野心を隠そうともせずに参入すれば、どこで地雷を踏むか分かったものではない。大企業のエリート社員は本能的に自らの手を汚すことを嫌うから全ては現場任せ。チェックが甘くなれば、いつ第2、第3の『Sアミーユ』事件で本丸が火だるまにならないとも限らない。
 「損保ジャパンは合併・統合を重ねたことから、社内の風通しがとにかく悪い。正式な社名が驚くほど長いのはそのためです。このまま介護業界2位に浮上した途端、ワタミ系を含め“不発弾”が次々と炸裂すれば社内は大パニックに陥り、介護の旗振り役を務めた二宮会長以下首脳陣が詰め腹辞任に追い込まれるのは必至です」(経済記者)

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