和地つかさ 2018年9月27日号

話題の1冊 著者インタビュー こだま 『夫のちんぽが入らない』 扶桑社 1,300円(本体価格)

掲載日時 2017年02月05日 18時00分 [エンタメ] / 掲載号 2017年2月9日号

 ――とてもインパクトのあるタイトルですね。20年に及ぶ夫との苦悩の日々が描かれていますが、小説にするきっかけは?

 こだま 元々は同人誌即売会の合同誌に載せるために書いたエッセイでした。せっかくの機会なので、これまでずっと胸に秘めてきたことをさらけ出してみようと思い、夫婦間の性の悩みを書きました。私たち夫婦は交際を始めた大学時代から「入らない」関係が続いていました。いつも一緒に行動し、セックス以外は本当にうまくいっていたんです。そんなことは些細な問題だと考えるようにしていたけれど、書き始めたら、長い間、封じ込めていたものが次から次へと溢れ出てきて止まらなくなったんです。

 ――他人とはセックスできて、夫とはできないというのはやはり身体的な問題が大きかったのでしょうか?

 こだま 夫の性器が普通の人よりもかなり大きかったことは原因の一つだと思います。なんとか頑張って入れようとすると、流血してしまいました。まだネットが発達していない時代で、原因を探るのにも限界がありました。
 こんなことで悩んでいるのは世界中で私たちだけではないか? と絶望的な気持ちになりましたね。元々、セックスそのものに罪悪感や嫌悪感に近いものを感じており「好きな人とこんなことをしたくない」という気持ちと重なり「何とかしなければいけない」とだんだん強迫観念のようになっていったんだと思います。実際に特別な感情を持っていない出会い系の人とは、何も考えずにできてしまいました。

 ――仕事、セックス、出産、女性が直面するさまざまな問題がずしりと読者の心に響きます。『私小説』を上梓した今の気持ちは?

 こだま 母や周囲から急かされていたこともあり、長い間、私は「子どもを産まなければいけない」という呪文のようなものに縛られていたんだと思います。子どもの頃から憧れていた教職の道を貫けなかった、精神を病んだ時期にヤケになって出会い系の人と会ってしまった、夫は風俗に行っている…など数々の引け目があり、堂々と「産まない夫婦がいてもいいじゃない」と言うことができませんでした。周囲が願う姿になろうとし、なれなかった。「ふつう」の夫婦になろうとして、なれなかった。そんな思いを書いているうちに、誰よりも「ふつう」にこだわっていたのは私自身だったのだと気が付きました。今は自分の理想を押し付けることなく、相手を尊重して生きていきたいと思っています。
(聞き手/程原ケン)

こだま
主婦。'14年同人誌即売会「文学フリマ」に参加し『なし水』に寄稿した短編「夫のちんぽが入らない」が大きな話題となる。現在『クイック・ジャパン』『週刊SPA!』で連載中。本書が初の著書となる。

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