菜乃花 2018年10月04日号

北朝鮮弾道ミサイル発射連続失敗に米国サイバー攻撃の痕跡

掲載日時 2016年11月09日 10時00分 [社会] / 掲載号 2016年11月17日号

 北朝鮮が10月15日、20日と続けて同国北西部亀城周辺で発射実験を行った中距離弾道ミサイル「ムスダン」は、いずれも失敗に終わった。このうち15日の発射失敗の発表は不可解なことばかり。これまで北のミサイル発射に関しては、発射後数時間以内に韓国軍が発表するのが通例だったが、このときは米軍が韓国より2時間先に行っている。その米軍の発表も発射から16時間後だった。
 日本に至っては、稲田朋美防衛相が公表したのは3日遅れの18日午前のこと。遅れた理由を「米国とは平素から緊密に連携しており、収集した種々の情報を総合的に勘案した結果だ」と述べただけだ。こうした日米韓の奇妙とも言えるアナウンス行動によって、米軍が何らかの手段でミサイルを破壊したのでは? との憶測を呼んだのである。
 「しかも22日には北朝鮮の韓成烈外務次官と米国のガルーチ元国務次官補らがマレーシアで接触しています。ただ、27日付ワシントン・ポスト紙が、いずれの試射もムスダンではなく準ICBM=KN-08だった可能性があるとする米専門家の見解を伝えている。もしそうであれば、いよいよ初の大陸間弾道弾発射実験を行い、失敗したことになります」(軍事アナリスト)

 疑問を整理すると三つのことが浮かぶ。
 (1)ムスダンは8回中1度しか成功しなかったことから致命的な欠陥があることを示しているが、6月22日の1回だけの成功で完成したのか。
 (2)失敗しながらもなぜ短期間のうちに試射を繰り返すのか。
 (3)韓米という発表の順序が、米韓になり、しかも遅れたのはなぜか。

 北朝鮮は核弾頭とICBM用のエンジン開発に成功したと9月に発表した。そのことを受け、10月10日の労働党創建記念日に核やミサイル実験を実施するのをけん制するため、米韓海軍は10月10日から15日まで合同軍事演習を展開した。
 「演習にはSM3(海上配備型迎撃ミサイル)を装備したイージス艦も加わっており、北の弾道ミサイルを撃ち落とそうと思えばやれた可能性が高い。加えて北はかねて『米韓を核攻撃する』と恫喝していたのですから、試射であろうとなかろうと北朝鮮が撃つ前に米軍が撃ち落としても、世界各国は何も異議は唱えなかったでしょう」(軍事ジャーナリスト)

 米国の外交・安保関係者は、北朝鮮の5回目の核実験(9月9日)以降、再三にわたり先制攻撃に言及している。9月16日にはマレン元統合参謀本部議長、同23日にはホワイトハウスのアーネスト報道官、10月11日にはシャーマン前国務次官、さらに同12日にはラッセル国務次官補が「金正恩が核攻撃を企て得る能力を持ったら即座に死ぬことになる」とまで述べている。
 「シャーマン前国務次官は『北の核問題解決に全オプション動員を』と檄を飛ばしました。同氏はヒラリー・クリントン候補が大統領に就任した際は、外交関係の要職に就くとみられています」(外交問題に詳しい大学教授)

 こうした“状況証拠”から、半日以上たってからの発表に対し、「サイバー攻撃や電子戦での破壊を発表するかどうか、米上層部が協議していたからではないか」あるいは「中国人民軍が関与しているのではないか」などといった揣摩臆測が乱れ飛んだのだ。

 さらに興味を引くのは、15、20日両日のミサイル発射が、従来の東海岸元山ではなく中国国境に近い亀城周辺だったという事実だ。
 「北が発射場所を変えたのは、米国が軍事衛星から強力な電磁波を照射したのをキャッチし、急ぎ発射位置を亀城周辺に移動させたが回避できずに破壊されたとも考えられます。米国はこうした軍事衛星からの電波攻撃を公表しません。もちろん韓国政府にも知らせない。なぜなら、今まさに米国の最新鋭地上配備型迎撃システム『THAAD(高高度防衛ミサイル)』を在韓米軍に配置しようとしているときだからです」(前出・ジャーナリスト)

 米国、次いで韓国という発表の順番にも関連するが、この移動について別の軍事専門家は「移動式の発射台から撃ったので、偵察衛星を持たない韓国は発射場所を特定できなかっただけかもしれません。しかも、今回の発射場所は韓国からかなり離れていますからなおさらです」と言う。

 ただ、米国の先制攻撃論が出回るのもムリはない。今から22年前、金日成主席が没する直前の1994年3月19日のこと−−。南北対話の席上、北朝鮮の代表が「ソウルを火の海にする」と発言した。'93年から'94年は米国と北朝鮮が「先制攻撃するぞ」と威嚇し合い、米軍による“北爆”の寸前までいったことがあった。
 「当時、北は核弾頭どころか中・長距離の弾道ミサイルも開発を始めたばかりで、米国は腰を据えて北と交渉する時間的な余裕がありました。ところが今、北は1、2年後にはミサイルに搭載可能な小型の核弾頭や米国を射程内に収めるICBM、第二撃を可能にする潜水艦発射弾道ミサイルを実戦配備するレベルまで来てしまった。当時のクリントン政権が問題を先送りしたために、事態が悪化したと言えるでしょう。この反省が米国にはあるのです」(前出・大学教授)

 米国の北朝鮮分析サイト『38ノース』は10月17日、北は来年にもムスダンの運用を開始するとの分析を発表した。しかも、金正恩朝鮮労働党委員長にとって「核武装を実現した」ことだけが国民に誇れる実績だ。
 核・ミサイル開発を放棄することは、即政治生命の終わりを意味する。ムスダンであろうがKN-08であろうが、失敗しようが破壊されようが、この男は“発射”し続けるに違いない。

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