やくみつるの「シネマ小言主義」 “脱がない”ランボーの最後の血戦『ランボー ラスト・ブラッド』

エンタメ・2020/06/28 07:00 / 掲載号 2020年7月2日号
やくみつるの「シネマ小言主義」 “脱がない”ランボーの最後の血戦『ランボー ラスト・ブラッド』

(c)2019 RAMBO V PRODUCTIONS, INC.

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 実はランボーシリーズを見るのは初めてです。もちろん、ベトナム帰還兵でゲリラ戦のエキスパートという人物像は掴んでいましたが、この最終章を見て最初に思ったのは、「脱がないんだ…」。

 もちろん、本作でも悪の組織を次々とぶっ倒していくので肉体的には衰えていないはずですが、「脱がない」ところにスタローンなりの演技プランがあるのかもしれません。

 隠しきれない老いの悲哀、疑似家族をみつめる柔和な表情は、おそらく前作までにはないものでしょう。それが、ひとたび怒りの導火線に火が着くと、めちゃめちゃに暴れる。この落差の大きさは、変身ヒーローみたいなもんですよね。

 そして、今まで世界各地の戦いで体を張ってきたランボーも、ついに「頭脳戦」へと突入します。故郷アリゾナの牧場に、まるで余生の趣味のように1人、コツコツとトンネルを掘り進め、巨大な地下要塞をこしらえていたのです。

 この地下要塞に圧巻の仕掛けが仕込まれていたことで、意外にランボーは理工系だったことが分かります。

 作る工程は早回しでしか見られませんが、いったいどうやって作るのかに焦点を当てても面白かったかも。もし、何が飛び出してくるのか分からない「ラストブラッドおばけ屋敷」をランボーにプロデュースさせたら、流行ること間違いなし、なんて考えて見ていました。

 ランボーシリーズは男がカタルシスを感じる最たるもの。自分のような体格に恵まれず、言い負かすほどの弁も立たない、なのに正義感だけはある野郎は、デカいやつとか、力の強そうなやつに本気で憧れるんですよねぇ。もし、あの体格と力があって、街の用心棒的にチンピラどもをボコボコにできたら、どんなにか…と思わずにはいられないのです。

 それにしても、ロッキーにランボーと、役者としての生涯を捧げられる壮大なキャラクターを2つも確立できるとは、いやはやすごいことです。

 スタローンには90年代後半に来日された時、ワイドショーの映画コーナーでインタビューさせてもらいました。怖そうという先入観があったのですが、今作の田舎暮らしのランボーを思わせる柔和な表情でした。どのタイミングでサインをもらうかばかり考えていたので、ホッとしたのを覚えています。

 あれから約20年、御歳72歳ですが、現役感バリバリ。そこはお相撲さんとは違いますね。力士はその年齢になると、今なら私でも勝てるなと思うくらい総じて足腰ヨタヨタですから。

________画像提供元_:(c)2019 RAMBO V PRODUCTIONS, INC.

ランボー ラスト・ブラッド
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■監督/エイドリアン・グランバーグ 出演/シルベスター・スタローン、パス・ベガ、セルヒオ・ペリス=メンチェータ、アドリアナ・バラーサ、イヴェット・モンレアル、オスカル・ハエナダ 配給/ギャガ 6月26日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー。
■グリーンベレーの戦闘エリートとして活躍し、いまだベトナム戦争の悪夢にさいなまれていたジョン・ランボー(シルベスター・スタローン)。数々の戦いを終えたランボーは、故郷のアリゾナに戻り、古い友人のマリアとその孫娘ガブリエラとともに牧場で平穏な毎日を送っていた。そんなある日、ガブリエラがメキシコの人身売買カルテルに誘拐されたことで事態は急変。愛するガブリエラを救うため、グリーンベレーで培ってきた超人的な戦闘技術を総動員し、戦いの準備をスタートさせる。

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漫画家。新聞・雑誌に数多くの連載を持つ他、
TV等のコメンテーターとしてもマルチに活躍。

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