葉加瀬マイ 2018年11月29日号

勝つも負けるも生き地獄 サッポロHD(vsスティールP)危険過ぎる最終戦争(2)

掲載日時 2010年03月25日 00時00分 [社会] / 掲載号 2010年4月8日号

 世間の目には向かうところ敵なしと映るスティールにも、実は大きな弱点がある。投資ファンドである以上、資金運用を委託した投資家の意向を無視できず、解約を迫られれば履行せざるを得ないことだ。
 実際、日本市場で存在感を増してきたスティールは、最近になって日清食品HDや江崎グリコ、ブルドックソース、キッコーマンなどの株式を相次いで売却している。金融危機で資金繰りが厳しくなった投資家から解約請求が相次いだのを受け、換金を迫られてのことである。従って総額324億円を注ぎ込んだサッポロ株にしても、投資家の強い換金要請があれば売却を迫られるのが実情だ。
 「スティールのようなファンドの場合、運用を委託するにあたって投資家は最初に5年とか6年の運用期間を定め、それが過ぎると1年ごとに契約を更新するケースが多い。欧米企業は大半が12月決算のため、年末に解約する場合は10月には通告し、これを受けたファンドは11月末ごろまでに運用益を確定させる必要がある。
 その点、まだスティールがサッポロの筆頭株主として存在感をアピールしていることは、米国の投資家から『もう少し暴れろ。より多くの利益を上げて投資家に還元せよ』とハッパをかけられたことを意味します。投資家に報いることが運用マネーの更なる拡大に直結する以上、スティールがサッポロに大勝負を挑んだとしても不思議ではありません」(投資ファンド関係者)

 そのスティールが株主提案としてサッポロに突きつけているのは、自ら選んだ取締役候補の選任である。提出した役員選任案は計10人で、うち社外取締役3人を含む4人は現在の取締役だが、村上隆男社長を始めサッポロHDの経営中枢にいる面々は含まれていない。代わって内藤由治・ポッカコーポレーション元会長、中田康雄・カルビー元社長、藤井俊一・ネスレ日本元社長など6人を新たに取締役に選任するよう提案している。
 市場関係者が「スティールは本気で役員派遣による“第2のアデランス”を狙っている」と打ち明ける理由は、強面で鳴らした同ファンドらしからぬソフト戦術からだ。サッポロの株主向け専用のホームページで「日本の株主の皆様へ」と、まずは低姿勢をアピール。ブルドックソースとの法廷バトルで指弾されたスティール=「乱用的買収者」の悪いイメージ返上に躍起となっている。
 「あの買収防衛策の導入と同様、世間の多くは会社側が青い目ファンドの要求を押し切ると読んでいるようですが、株主の約15%を占める個人株主の対応次第では大逆転もあり得ます。だからこそスティールは、総会直前まで全国7カ所で説明会を開くなど個人株主を味方にしようとシャカリキになっている。そこでの切り札は経営陣が不甲斐なくビール業界4位の座に甘んじていることと、ビール事業会社の福永勝社長が料亭の女将を殴打したとして傷害罪で書類送検されたこと。だからこそ外部から経営のベテランを迎えるとの論法は確かに説得力があります」(経済記者)

 持ち株会社、サッポロHDの専務でもあった福永勝・サッポロビール社長は、3月25日付で顧問に退き、寺坂史明・専務執行役員が後任社長に就任した。この刷新人事に際しサッポロHDの村上隆男社長は、「傷害事件と今回の人事は無関係」と否定したが、それを信じる業界関係者は皆無に等しい。
 株主提案が通れば経営奪取、否決ならば第三者への売却。どちらにせよ、サッポロ経営陣の悲鳴が聞こえてきそうだ。

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