葉加瀬マイ 2018年11月29日号

世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第164回 暖冬経済

掲載日時 2016年03月02日 10時00分 [政治] / 掲載号 2016年3月10日号

 昨年暮れ12月の家計調査において、2人以上の世帯の実質消費が対前年同月比4.4%減少と大きなマイナスになったことを受け、安倍政権が「暖冬で衣料品が大幅に落ち込んだ」と言い逃れをしていたため、何となく予感はしていた。それにしても、2015年10〜12月期の経済成長率がマイナスに落ち込んだ言い訳についてまで「暖冬」を持ち出すとは、さすがにあぜんとさせられてしまったわけである。

 2月15日、'15年10〜12月期の経済成長率(速報値)が発表になった。予想通り、対前期比▲0.4%(年率▲1.4%)と、マイナス成長に終わった。
 名目GDPは、対前期比▲0.3%(年率▲1.2%)で、やはりマイナス成長。デフレギャップ(需要不足)が拡大している。
 特に、最大の需要項目である民間最終消費支出が対前期比▲0.9%と、大きな落ち込みになったのが響いた。先の実質消費のマイナスといい、民間最終消費支出の縮小といい、わが国の消費の落ち込みは、目を覆いたくなるほどの惨状になっている。

 ちなみに、外需の寄与度は0.1%とプラスだったのだが、これは輸出が伸びたためではない。輸出は▲0.9%だったのだが、輸入が▲1.4%と輸出を上回る落ち込みになり、純輸出(外需)がプラス化したのだ。
 純輸出=「輸出-輸入」であるため、輸出がマイナスになったとしても、それ以上に輸入が落ち込めばプラス化する。輸入の落ち込みにより純輸出がプラス化。典型的な“不況型”の外需の拡大というわけである。
 '15年通年の経済成長率は、'15年1〜3月期のプラス(対前期比+1%成長)が貢献し、通年で0.4%のプラスであった。'15年度、つまり'15年4月〜'16年3月で見ると、プラスかマイナスか微妙なところである。今期もマイナス成長となると、'14年度、'15年度と連続でマイナス成長という話になってしまう('14年度は▲1%)。

 個人的に気になっているのは、安倍政権が'15年に公的固定資本形成(公共投資から用地費等を除いたもの)を「どれだけ減らしたか?」である。'14年の公的固定資本形成が23兆7980億円だったのに対し、'15年は23兆4943億円。金額にして3037億円、割合では1.27%の縮小だ。
 '15年の安倍政権は、公共事業費のみならず、公的固定資本形成ベースでも「緊縮財政」にかじを切ったことが明らかになったわけである。

 GDPデフレータは、'15年10〜12月期は0.1%だったのだが、国内需要デフレータで見ると「0%」と、相変わらずゼロの線で推移している。安倍総理は年頭(1月4日)の記者会見で、
 「『もはやデフレではない』という状況を創り出すことができました」
 と語ったが、どこの国の話をしていたのだろうか。名目GDPまでもがマイナス成長になってしまった以上、安倍内閣が創り出した「状況」は、「デフレではない状況」ではなく「再デフレ化」である。

 さて、金融政策が行き詰まり、円高と株安が襲い掛かり、長期金利は0.03%(何とか、プラスには戻った)、さらに経済成長率までもがマイナス。
 この状況においても「財政出動」という普通の薬を飲もうとしない安倍政権は、もはや「異常」の域に達している。しかも経済成長率のマイナスを受け、持ち出した言い訳が「暖冬」なわけだから、笑うしかない
 エアコン(冷夏)だの、暖冬だの、日本経済は高々天候の影響で大きなマイナス成長になるほど脆弱というわけだ。まこと不思議なことに、経済成長率がプラス化した場合は天気のせいにはされない。経済成長したら政策のおかげ。マイナス成長になったら天気のせい、というわけである。

 ところで、NHKが昨年10〜12月期のマイナス成長を受け、
 「GDPがマイナスに“実体経済は変わらず良好”」
 というテロップを打っていたため、筆者は大変驚いた。上記のレトリックは「黒は白色のこと」と主張するほど無茶苦茶だ。何しろ実体経済とは、
 「生産者が働き、モノやサービスを生産し、顧客が消費、投資として支出(購入)した結果、所得が創出される」
 という、所得創出のプロセスのことを意味するのである。
 そして、上記所得創出のプロセスの「生産」の合計を国内総「生産」と呼ぶ。すなわち、GDPとは実体経済そのものなのだ。
 GDPがマイナス成長になったということは、実体経済が良好「ではない」という結果を意味するわけだが、それを真逆に報じる。NHKまでもが「嘘」を平気でつく。あるいは「言葉」をいいかげんに使う。

 ちなみに消費について付け加えておくと、'15年の民間最終消費支出は実質GDPベースで306.5兆円と、第2次安倍晋三内閣が発足した'12年の308.0兆円から1.5兆円も縮小してしまった。消費税増税を強行した以上、筆者に言わせれば当然の結果だが、安倍内閣にとっては衝撃的だろう。
 実質値で民間最終消費支出が減ったということは、国民が「量」で消費をできなくなってしまっているという話になる。分かりやすく書くと、貧困化だ。
 細かい数字を書いておくと、'13年は313.2兆円と増えていた(消費税増税前の駆け込み消費の影響もあったのだろうが)民間最終消費支出が、'14年は310.4兆円に落ち込み、'15年は306.5兆円と、野田政権期を下回ってしまったのだ。
 結局、物価上昇率に賃金上昇率が追い付かない実質賃金の低下を放置し、それどころか消費税増税を含む実質賃金切り下げ政策にまい進した結果、国民が「量」で消費をできなくなってしまった。つまりは国民が貧困化したというのが、安倍政権の経済政策の「結果」なのである。

 財政政策という「普通の薬」から目をそらす限り、安倍政権にできることは、
 「マイナス成長の言い訳が可能なように、天候不順が続きますように」
 と神様に願うことだけだ。
 読者も安倍政権が失政の言い訳ができるよう、「天候不順が続きますように」と祈ってあげてほしい。

みつはし たかあき(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、分かりやすい経済評論が人気を集めている。

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