菜乃花 2018年10月04日号

被災地でやがて蔓延するアスベスト被害の恐怖

掲載日時 2011年05月23日 11時00分 [社会] / 掲載号 2011年5月26日号

 東日本大震災で巨大津波の甚大な被害を被った被災地の懸命な復興作業が続いているが、堆積する瓦礫から舞い上がる粉塵を吸い込んで肺炎にかかる人が後を絶たない。

 「粉塵には細菌など病原性物質や有害な化学物質も含まれている恐れがあり、実際、ヘドロの撤去作業を行っていた人が急性湿疹を発症したこともある」
 と地元記者はいう。

 瓦礫やヘドロは当初、湿り気を帯びていたが、気温の上昇で乾燥し、風が吹くと舞い上がるようになった。被災者はもとより、ボランティアの二次被害も懸念されるのだ。
 「ヘドロは低酸素状態にあり、嫌気性菌を繁殖する。それが誤嚥性肺炎の原因の1つになっているのです」(地元医師)

 それだけではない。倒壊した建物には肺がん発症の原因となるアスベストを使用した古いビルなどが存在する。撤去作業などでアスベストが舞い上がり、被災者やボランティアが吸い込めば、将来、肺がんを発症することも十分考えられるという。
 世田谷井上病院の井上毅一理事長が語る。
 「喉頭から入った空気は気管支を経て枝分れして肺胞に達し、そこで酸素交換する仕組みになっています。被災地で舞い上がる瓦礫の粉塵には、ガソリン、軽油、重油、コンクリート粉塵、アスベスト(石綿)など様々な物が混入している。中でもとくに怖いのがアスベスト。これが肺胞の中に入ると、5〜10年で悪性の中皮腫、肺がんを引き起こします。アスベストを含有する建材の使用が禁止されたのが'04年。それまで、断熱材や車のブレーキなど広範囲に使用されてきました。被災地においても、どこに残っているか分からないだけに、瓦礫の撤去作業を行う人は簡易な防塵マスクだけではダメで、せめてマスクを重ねるとか曝露防止のゴーグルを着けるべきなんです」

 被災地には、このゴールデンウイークを利用して、瓦礫の後片付けのボランティアに出かける人が大勢いた。ところが、簡易なマスクだけをしている人がほとんどで、中にはマスクも着けず、軍手一つで作業をする無謀とも思える人も見られた。これではせっかくの善意とはいえ、二次被害を招くことにもなりかねないのだ。
 この状況下、民間団体の『中皮腫・じん肺・アスベストセンター』では、被曝対策として、曝露を防ぐマスクの配布、アスベスト濃度の検査実施、被災地の建材のアスベスト含有分析などを行うよう国土交通省に提言している。

 井上理事長が続ける。
 「水没した建物などにアスベストが使われていると、それが海に溶け出す危険もある。被災者の中には津波に巻き込まれ、汚染された海水を吸い込み肺炎になった人も多い。三陸は海洋資源の宝庫ですが、こうなると海洋汚染にも繋がりかねません」

 幸いにして三陸海岸は放射能による汚染からは免れた。しかし、アスベストをこのまま放置しておけば、放射能汚染と同様の甚大な被害をもたらすことになる。

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