森咲智美 2018年11月22日号

大量にかく場合は危険! 侮れない「寝汗」のシグナル

掲載日時 2018年06月23日 08時00分 [健康] / 掲載号 2018年6月28日号

 朝起きたら寝汗でぐっしょり…。誰にもこんな経験はあるはずだ。寝苦しい夜は布団の上で動き回り、また精神的なストレスのせいでも汗をかく。しかし、その寝汗の原因に病気が関わっていることもあるというのだ。
 医学博士の内浦尚之氏は、こう言う。
 「寝に入ると足が温かくなり、皮膚の毛細血管を拡張させ、体内に溜まった熱を体外へ逃そうとして、それにともなって汗が出る。これが寝汗です。大人では一晩でコップ1杯分ほどの寝汗をかくと言われますが、あまりに大量の汗をかく場合は、自律神経失調症などの病気が考えられるのです」

 睡眠には、眼球運動を伴わないノンレム睡眠と、伴うレム睡眠とがある。ノンレム睡眠は「脳の休息と体のメンテナンス」を行い、レム睡眠は「記憶の整理」が行われる。睡眠直後はレム睡眠にはいり、どんどん眠りが深くなるノンレム睡眠では汗をかき、睡眠のステージが進むにつれてその汗の量が増えていく。
 「ノンレム睡眠は睡眠の深さで4ステージに分かれ、寝入ってから20〜30分後くらいになるとステージ4を迎え、眠りが一気に深くなり寝汗の量がピークとなります。その後、徐々に眠りが浅くなり、レム睡眠に移ると汗が減少または消失します。人は一晩にこの睡眠周期を数回迎えます。その周期が進むにつれて、ノンレム睡眠の眠りも浅くなり、汗の量は少なくなる。そうなると、実際は汗をかいているのに、朝起きたときには体が乾いて寝汗に気付かないことが多いのです」(同)

 ちなみに、レム睡眠に入るとノンレム睡眠時より体温は高くなる。レム睡眠では、体温調整機能が鈍くなるからだ。
 「健康な人でも暑いときに目覚めるのは、レム睡眠が続いて無自覚に体温が急上昇し、危険を察知するためと考えられている。実際、暑い日でも総睡眠時間はほとんど変わらないのに、ノンレム睡眠の総時間数は、気温29℃の時と比べると、34℃ではその80%に減ると言われます」(同)

 しかし、寝汗はこうした健康的なものばかりではない。何といっても怖いのは、病気によって引き起こされる寝汗だという。
 「例えば、風邪を引いたときなどは、高熱にうなされ多量の寝汗をかきます。ただし、これは“病気が原因の寝汗”には違いないが、風邪によって上がってしまった体温を調節しようとしてかく汗なので、かくということそのものに関しては、問題はありません。風邪などの病気が原因でかく汗は、健康な状態に治そうとする当然の生理現象です」(健康ライター)

 とはいえ、病気でかく寝汗の中には、健康な生理現象でかく寝汗と違って、ネットリと粘りつくような場合もある。
 「そうした寝汗をかいて熱が出たときは、自分の判断で風邪薬を飲んで寝るだけではなく、医師の診断を仰ぐ必要があります。なぜなら、結核など、菌による感染症にかかる可能性もあるのです」(同)

 都内で総合医療クリニックを営む久富茂樹院長も、こう付け加える。
 「寝汗を伴う病気はいくつかあって、その一つとして感染症で起こる結核が有名ですが、他にもHIV感染症や伝染性単核球症などでも、寝汗をかくといわれています。さらに甲状腺機能亢進症、糖尿病、褐色細胞腫などの内分泌疾患、リンパ腫や白血病などの悪性腫瘍も寝汗をかきやすい病気だといわれています」

 この他に、胃酸などの胃の内容物が逆流して胸やけなどを起こす胃食道逆流症や、睡眠時無呼吸症候群、病気以外にも、女性は閉経や妊娠に伴う寝汗がある。
 「解熱剤、抗うつ剤などの薬による寝汗もあるといわれ、海外の文献には1週間以上継続する寝汗の原因は、胃食道逆流症と閉経によるものが多く、薬では解熱剤と抗うつ剤によるものが多いとされています」(前出・健康ライター)

 しかし、前出の久富院長は「もちろん、寝汗だけで診断できるほどこれらの病気は単純ではありません」と言い、こう続ける。
 「ただ、病気を特定する手がかりになることは間違いありません。今日のように暑い時期に寝汗で気を付けたいのは、薬物治療を受けている糖尿病の患者さんで、気づかないうちに夜間、低血糖を起こしているかもしれないということ。低血糖になると、体が冷えるのに全身に大量の汗をかく。これは、『アドレナリン』や『ノルアドレナリン』などのホルモンを分泌して低血糖に対抗しようとするからです。ノルアドレナリンは強い血管収縮作用があり、低血糖になると皮膚に血液が集まらず、皮膚温度は急速に低下し、これに汗の蒸発がともなって、ますます皮膚が冷たくなるのです。しかし一方で、熱産生作用のあるアドレナリンの働きで体内の熱は増える。これを冷ますため、さらに熱放散量を増やそうと汗を大量にかく。低血糖状態を放っておくと、最悪の事態を招きかねないのです」
 寝汗といっても侮ることはできなのが理解できただろう。ひどい寝汗に加え、疲労感や倦怠感、急激な体重減、吐き気や頭痛などが重なる場合は、さらに注意が必要だ。

 また、一般的な寝汗の一番の対策は、ストレスを除去することといわれるが、もちろん現代社会においてストレスを完全になくすことは難しい。
 「しかし、寝る際にストレスを感じさせないようにする努力で、自律神経を安定させ、リラックスすることはできるはずです。例えば、お風呂にゆっくり浸かる。これは体温調節をスムーズに行うことができ、寝つきの悪い人でも入眠時間を短くすることが可能です。運動を日常生活に取り入れることも、寝汗の改善につながり、おすすめです」(前出・健康ライター)

 このように、ストレスの発散や血行を促進させることが重要なのだが、基本的には生活のリズムを安定させることだ。
 「毎日の寝る時間や夕食を食べる時間をなるべく同じにして、生活を安定させることです。習慣を正すことで睡眠の質を高め、ストレスの溜まりにくい体をつくるように心がけましょう」

 たかが寝汗とはいえ、そこには何らかのサインがあることも知っておこう。

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