葉加瀬マイ 2018年11月29日号

本好きリビドー(97)

掲載日時 2016年03月19日 18時00分 [エンタメ] / 掲載号 2016年3月24日号

◎快楽の1冊
『教場2』 長岡弘樹 小学館 1500円(本体価格)

 いじめ問題は世間にすっかり定着した。小学校、中学校ではいじめが繰り返され、いじめ抜かれた側は人生に絶望し、自ら死を選ぶ。自殺少年、少女が明らかになると、その学校は父母に糾弾され、マスコミの取材にも応じなければならない。最初は、いじめはなかった、と校長や教頭は言うが、間もなく、やっぱりありました、と頭を下げる。そんなことが繰り返されているのである。
 しかし、こういう状況は、学校や先生が駄目だから起きている、と単純に言えるものではない。大人になった人たちも、自分の子供時代を振り返ってみよう。いじめなどというものは日常茶飯事だったではないか。ひどいのか、ひどくないのかは別にして、子供は平気で同年輩をいじめるのである。そして、こういう傾向は、社会人になっても普通のことだ。
 一応、私たちは、いじめはよくない、と親や教師に教えられて育つ。それは道徳上よろしくない、という教えなのだろうが、同時に、人をいじめていると自分が損をするよ、という戒めも含んでいる。
 人をいじめていれば当然、いじめられた側から恨まれ、その状況を傍観している人たちからも、いじめてストレス解消なんて心が狭いな、と軽蔑されてしまう。いじめられた人間から復讐されることもあるかもしれない。結局、人をいじめると、損ばかりが生まれるのだ。損をしないように、という教えは正しい。
 ところが、人間はやっぱり弱い生き物で、大人になってからもストレス解消のためいじめをしてしまう。このあたりの事情を描いたのが本書『教場2』である。この本の前の『教場』は好評を博して大いに売れた。続篇の本書もやはりいい。舞台は警察学校だが、生徒の間でいじめがあるのだ。何歳になっても人は他人をいじめる、という現実を知らしめる本だ。
(中辻理夫/文芸評論家)

【昇天の1冊】
 AV監督の代々木忠氏が、1992年に『プラトニック・アニマル』(情報センター出版局)を刊行したときは驚愕した。セックスをテクニックではなく、人間の内なる“心の解放”という視点から捉えた同書は、軽薄な「性」が蔓延していたバブル崩壊後の日本にあって、セックスの在り方を考え直すきっかけにもなった。
 だが、時は移り変わり、日本ではさらに「性」が軽く扱われているように見える。人妻の不倫はとどまることを知らず、風俗では低価格化が進み、わずかなカネで客に肉体を提供する貧困女性が、後を絶たない。
 そんな時代に警鐘を鳴らすように登場したのが、ここで紹介する『つながる』(新潮文庫/税込549円)だ。2012年に発売された書籍の文庫版である。
 本書で代々木監督が主張していることは、単純明快だ。セックスは「見つめ合ってしろ」ということ。AVの撮影現場で、5000人にものぼる女性たちの赤裸々なエクスタシーを間近で見てきた結論として、小手先ではない、男女の気持ちの“つながり”の大切さを説いているのである。
 この著書には、「愛されたい」と願いながら満足できない女たちと、彼女たちに向き合えない男たちが描かれている。ここ数年は、求めてやまない“肉食系女子”と、逃げまどう“草食系男子”の急増が話題になっているが、まさにそうした男女関係を、端的に看破しているといえるだろう。
 目から鱗のセックス本、ぜひ一読を薦めたい。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)

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