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歌謡(うた)のマドンナ 石原詢子 怖いもの知らずで上京し、四畳半の部屋で味わった恐怖 「留守中に侵入者!? 下着を盗まれたことも…」

掲載日時 2016年06月18日 12時00分 [芸能] / 掲載号 2016年6月23日号

歌謡(うた)のマドンナ 石原詢子 怖いもの知らずで上京し、四畳半の部屋で味わった恐怖 「留守中に侵入者!? 下着を盗まれたことも…」

 −−NHK紅白歌合戦にこれまで2回出場するなど、人気歌手の地位を築いている石原詢子。4歳の時から、詩吟「揖水流」家元である父の厳しい指導のもと、詩吟を学んでいた。
 「朝から晩まで詩吟中心の生活。テレビで見た演歌歌手に憧れると同時に、そんな息苦しい家を早く出たい気持ちがありました。ツテなんてありませんでしたが、とにかく東京に出れば何とかなるだろうと(笑)」

 −−出身は岐阜県揖斐郡。山に囲まれた田舎町で育った。高校卒業と同時に上京すると、新聞配達などのアルバイトをしながら歌のレッスンを受けた。しかし、そんな夢見る彼女に心が折れそうになる出来事が起こる。
 「新聞販売店の寮は四畳半でトイレは共同。冷蔵庫もエアコンもなし。周りは男の人ばかり。私は2階の部屋だったんですけど、鍵はフックを掛けるだけの簡単なものしかない。何度も下着を盗まれたり、留守の間に誰か侵入した気配があったり、それはもう怖かったです。仕方なく半年で、ちゃんと鍵があるアパートに移りました。女の子がそんな所に住むなんて今なら絶対に考えられませんけど、怖いもの知らずだったんですね。とにかくお金がなくてお風呂にも行けず、台所で身体を洗ったこともよくありますよ(笑)」

 −−そう笑い飛ばすが、18歳の少女にとってはあまりに厳しい東京の洗礼だったに違いない。やがて1年が過ぎた頃に転機が訪れる。
 「歌のレッスンの先輩から誘われて1週間だけ手伝いに行ったお店で、お客さんとして来ていたレコード会社の人を紹介され、トントン拍子にレコード会社も事務所も決まったんです。まさに運命でしたね」

 −−'88年10月『ホレました』でデビュー。だが現実は、想像していた華やかな世界とはかけ離れていた。
 「デビューして最初の仕事は、仙台駅の近くのスーパーでした。レジのすぐ横で、ミカン箱を並べた上に板を敷いたステージ。“何これ?ここで歌うの!?”と打ちひしがれましたね。お客さんも10人もいないくらい。衣装もボディーラインがピチッと出るミニスカートのもので、“こんなの恥ずかしい!”と思ってました(笑)。あとは、カラオケ喫茶やカラオケスナックを1日に何軒も回る地道なキャンペーンがメーン。お店に行ってみたら、怖そうな男の人がいっぱいいて『自分の曲なんか歌わなくていいから、一緒にデュエットをやれ』と言われることもしょっちゅうでした」

 −−'95年に発売した『夕霧海峡』が20万枚を超える大ヒット。NHKの民謡番組や『お江戸でござる』にもレギュラー出演が決まり、知名度を上げていく。しかしその裏で、彼女を悲しい不幸が襲っていた。
 「発売日を挟んだ3週間足らずの間に、病気で母と父が相次いで亡くなったんです。そばにいてあげられなかったのが本当に悔やまれました。両親が亡くなったことで、もう故郷には帰れない、自分の力で歌の世界で生きていかなければ…という覚悟ができて、必死でしたね。悲しみを振り切るようにキャンペーンに明け暮れました」

 −−'99年に発売した『みれん酒』はNHK『お江戸でござる』のテーマソングとして毎週流れ、演歌チャートの上位をキープしてロングセラーとなり、30万枚を超える自身最大のヒット曲に。そして翌年、紅白歌合戦に念願の初出場が決まった。
 「地元の役場に『池田町出身 歌手・石原詢子 紅白出場!』という横断幕が出て、本当にうれしかったですね。紅白本番のことは、実はまったく覚えてないんです(笑)。司会者に曲を紹介されて、左足で一歩踏み出したところまでは覚えてるんですけど、気が付いたら歌い終わって、緊張の糸が切れて涙腺が緩んでしまって…。あとでビデオを確認して『あ、ちゃんと歌ってる!』と胸をなでおろしたくらい(笑)。翌年から仕事の数も急に増えましたし、紅白の力ってすごいんだなと思いましたね」

 −−四畳半の生活から紅白歌手にまで上り詰めた彼女。現在のオフの過ごし方は?
 「近所に自転車で買い物や飲みに行ったり、温泉施設に行ったり…。私、行動範囲が狭いんです(笑)。温泉施設でお風呂に入っていたら、たまに『あなた、昨日テレビに出てたでしょ?』と言われて、あわてて身体を隠して『いえ違います!』と否定することもあります。何もスッポンポンの時に話しかけなくてもいいのに…(笑)。あと、ゴルフも好きですね。歌手仲間たちと話しながら、ストレスを発散できて楽しいです。ゴルフボールに当たらなかったり、グリーンをオーバーするほど飛び過ぎてしまうと、逆にストレスが溜まりますけど(笑)」

 −−今の時代に必要な演歌を求めて挑戦を続ける彼女。そのこだわりを聞いた。
 「私たち40代は、『ザ・ベストテン』とかの歌番組でジャンルの隔てなく演歌を聴いていた最後の世代だと思うんですね。そういった世代の人たちにもう一度受け入れられるよう、演歌も変わらなきゃいけない時だと思うんです。フォークっぽい演歌や、ロックっぽい演歌があっていい。今回の新曲『化粧なおし』は、フォーク出身の杉本眞人先生に作曲をお願いして、演歌の王道とは違う感じの曲調になっています。今後も、演歌の入口を広げられるよう、私たちの世代や団塊の世代の人が耳を傾けてくれるような楽曲を歌っていきたいと思います」

いしはら・じゅんこ=1968年1月12日、岐阜県揖斐郡池田町生まれ。1988年10月『ホレました』でソニーレコードからデビュー。2000年に『みれん酒』でNHK紅白歌合戦に初出場。'03年にも『ふたり傘』で紅白出場。『化粧なおし』は、ソニー・ミュージックより発売中。

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