森咲智美 2018年11月22日号

世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 ★第284回 地方経済振興と公共投資

掲載日時 2018年09月01日 15時00分 [社会] / 掲載号 2018年9月6日号

 デフレーションとは、国民経済において「消費」「投資」という支出、別名「需要」が供給能力に対して不足する経済現象だ。なぜ、消費や投資が減るのかといえば、バブル崩壊で国民が借金返済と銀行預金に走り、さらには政府が緊縮財政で自らの支出をも減らし、国民に倹約を強いるためだ。

 倹約、借金返済、預金、節約、支出削減。この種の用語は「聞こえ」はいいのだが、国民経済に打撃を与える。理由は、我々の所得は「誰かが支出を増やす」ことでしか創出されないためだ。国民や政府が共に節約、支出削減に走ると、当然ながら「誰か別の国民」の所得が減る。

 所得が減った国民は、消費や投資を減らす。すると、モノやサービスが売れなくなるため、生産者は価格を引き下げる。価格を引き下げると、生産者の所得は確実に減る。販売単価が下がると、企業(生産者)の売上も利益も減少する。すなわち所得縮小だ。値下げにより所得が小さくなった生産者が顧客側に回ると、当たり前だが消費や投資を減らす。すると、モノやサービスが売れなくなるため……と、所得の縮小と価格の下落が悪循環を描いて進行していく現象がデフレーションなのである。

 つまりは、デフレ脱却のためには「誰か」が消費や投資を増やすしかない。もっとも、デフレ期には価格下落のみならず、販売数量も減少する。要は、皆が「買う量」までをも減らしてしまうのだ。経済学的な理論によれば、「価格が下がれば、販売数量は増える」はずなのだが、デフレの時期にそんな「机上の空論」は通用しない。

 販売数量が減ることは、実質賃金の下落とイコールになる。実質賃金が減り続けるデフレ期に、国民が消費や投資を増やすはずがない。

 というわけで、デフレ期に消費や投資といった需要を拡大できるのは「政府」しかない。ところが、わが国では「財政破綻論」という荒唐無稽な嘘が浸透し、財政拡大による需要創出が封じられる状況になってしまった。結果、公共投資、厳密には公共投資から「用地費」など、GDP(需要)にならない支出を省いた公的固定資本形成が減り続けた。ちなみに、なぜ用地費を公共投資から除くのかといえば、「土地」は日本国民が生産したわけではないためだ。GDPとは、あくまで「日本国民が生産したモノ、サービス」に対する支出の合計なのである。

 日本の公的固定資本形成は、ピークの'95年度、'96年度の47兆円強から、'11年度には約24兆円にまで減ってしまった。第二次安倍政権が発足し、多少は戻したが、それでも'17年度の公的固定資本形成は27・8兆円にすぎない。
「安倍政権は公共投資を増やした」

 などと勘違いしている人が少なくないが、それは「神話」もしくは「虚偽」である。'17年度においても、日本の公的固定資本形成はピークと比べてマイナス20兆円(!)というのが現実なのだ。

 そもそも、財務省主導の緊縮財政に膝を屈した安倍政権が、公共投資を増やすはずがない。ところが、'18年度版経済財政白書に驚くべき文章が載り、筆者は驚愕したのである。以下、'18年度版経済財政白書からの引用になる。

 『公共投資は地域経済を下支え 公共投資については、全ての地域で長期的に減少傾向となっていたが、2013年度以降の政府の機動的な財政政策の効果もあってその傾向に歯止めがかかり、今回の景気回復局面では、手持ち工事高も高くなる中、高水準でおおむね横ばいで推移している。』

 全体の公的固定資本形成のパイは増えていないにも関わらず、「公共投資は地域経済を下支え」などということがあり得るのだろうか。

 というわけで、白書を見てみよう。
「地域経済を下支え」などと書いておきながら、増えているのは「南関東」と「東北」のみ。南関東とは、要は首都圏。東北は、もちろん被災地だろう。それ以外の地域は、北海道も北関東も、北陸も中部も、近畿も中国も、四国も九州も、すべて'99年の水準を下回っており、近年も碌に増えていない。
 これが、真実だ。

 特にひどいのが、四国、中国、そして北陸になる。要するに、「地方」は緊縮状態が続いているものの、「東京一極集中」を加速する南関東、そして東北被災地への公共投資が増えているだけなのだ(しかも、東北復興の公共投資は早くも減少に転じている)。

 日本政府は、相変わらず「選択と集中」を続けており、東京圏以外の公共投資については増やす気はなく、実際に増やしていないのである。それにも関わらず、白書に「公共投資は地域経済を下支え」と堂々と書く。
 何という欺瞞。

 東北被災地はともかく、日本は公共投資全体の額を拡大しつつ、「東京圏以外の地方」に重点を置かなければならないはずだ。'18年度版経済財政白書では、公共投資について、
「今後の日本経済の成長力の押し上げにつながることが期待される」
 と、指摘されているが、そんなきれいごとを言うのは、実際に「地方」の公共投資を増やしてからにするべきだ。安倍政権は、つくづく「欺瞞」に満ちた政権である。

 安倍政権あるいは自民党は、いまだに、
「成長する地域には投資を手厚くし、そうでない地域には投資を減らす」
 という、企業経営ならばともかく、国家の政策では決して許されない「選択と集中」の思想に縛られたままなのだ。このまま「成長する地域」である東京の投資を増やし、東京一極集中を加速し、挙句の果てに首都直下型の大地震が起きたら、どうするつもりなのか。

 結局のところ、安倍政権が東京一極集中を推進し、日本国の亡国を確実化し、さらにそれを隠蔽しようとする姑息な政権であることが、今年度の経済財政白書からも読み取れるのである。

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みつはし たかあき(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、分かりやすい経済評論が人気を集めている。

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