森永卓郎の「経済“千夜一夜"物語」 ★デフレの扉を開けた日本経済

社会・2019/12/12 06:00 / 掲載号 2019年12月19日号

 1997年に消費税率を3%から5%に引き上げたことをきっかけに、それから5年間、日本経済は深刻なデフレに陥った。物価が下がり続けるなかで、企業経営は厳しくなり、株価は下落、税収の低迷で財政も悪化した。そして、派遣切りが横行し、新卒者の就職がままならなくなったのだ。

 安倍政権は、再びその過ちを繰り返してしまった。今年10月の消費者物価指数は、生鮮食料品を除く総合で、前年比0.4%の上昇となった。一見、物価が上昇しているようにも見えるが、そうではない。同月から消費税増税が行われているからだ。

 もちろん、消費税率を2%引き上げたからといって、物価もストレートに2%上がるわけではない。軽減税率の適用で0.4%、幼児教育無償化で0.5%、家賃や保険診療の医療費など非課税品目の存在などによって0.6%上昇率が抑制されるから、消費税増税の影響で、物価上昇率は0.5%上積みされる。

 ところが、実際の物価上昇率が0.4%だったということは、増税の影響を除くと、消費者物価の上昇率は▲0.1%ということになる。

 これまで、消費税増税の影響は軽微だと、政府も経済専門家も言ってきた。確かに食料品の税率が8%に据え置かれたことで、負担増の実感が薄れたことは事実だ。しかし、軽減税率の適用は、消費全体の2割にすぎない。8割の消費は増税されている。実際、電気、ガス、水道、公共交通などの生活必需品が軒並み増税対象になっており、消費者はその分、消費を抑え込まなくてはならなくなる。

 実際、10月の大手百貨店の売り上げは前年比20%前後の減少となり、イオンリテールも既存店の売り上げが8%も減少した。そもそも景気が後退しているところで、消費税増税を強行したのだから、こうなることは、見えていたはず。つまり今回の増税は、完全な失策だったのだ。

 もちろん、デフレの正式認定は、物価の下落がある程度の期間、継続したときに行われる。しかし、一度デフレに陥ってしまうと、そこから脱却するのは難しくなる。

 だから、国会がいますぐ取り組むべき政策課題は、消費税率を引き下げることだろう。それも8%に戻すだけでは足りず、5%に引き下げるくらいのところまで踏み込むべきだ。

 財源は、赤字国債の発行だ。そもそも、今年に入ってから物価上昇率がずるずると下がってきたのは、日銀の金融緩和が不足してきたからだ。なぜ、そうなったのかというと、金融緩和のために日銀が買い入れる国債のタマが不足しているからだ。赤字国債を増発すれば、日銀に金融緩和を強化する余地が生まれる。デフレ脱却に金融緩和は不可欠だから、いま消費税率を引き下げることは、一石二鳥になるのだ。

 ところが、与党はおろか、従来型野党のなかからも、消費税減税の声は上がっていない。このままデフレが継続するようだと、まず、株価暴落を引き起こすだろう。いま世界中の株価がバブルを起こしているから、日本発の世界経済危機ということにもなりかねない。逆に言えば、桜を見る会で、政治的に追い詰められた安倍総理に、いま難局を乗り切る最大のチャンスが生まれている。それは、消費税率引き下げを掲げて、解散総選挙に打って出ることだ。

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