葉加瀬マイ 2018年11月29日号

中国警戒! 英国が担ぐ金正男の息子・ハンソル「亡命政権」樹立

掲載日時 2017年03月04日 11時00分 [社会] / 掲載号 2017年3月16日号

 裏切り者を除去し、政権基盤を盤石なものにしようと企図した金正恩・朝鮮労働党委員長だったが、想定外の事態に陥りそうだ。中国が北朝鮮からの石炭を禁輸にし、米国は金融制裁の強化とテロ国家再指定に動き始めた。数少ない友好国マレーシアとインドネシアも、国交断絶の声が日増しに高まっている。まさに、完全な孤立無援状態だ。

 金正男氏暗殺事件の後、米中それぞれに大きな変化が起きた。
 「中国は不測の事態に備え、中朝国境に配置している第一線哨戒兵員を1000人増強しているし、最大の変化は北朝鮮からの石炭輸入を年末まで停止すると発表したことです。昨年の北からの中国への輸出量は、ドル換算にして約12億ドル。北の'15年の輸出総額が約27億ドルですから、外貨の4割を失うことになるのです。これは“日干し”にされるのに等しい」(国際経済に詳しいアナリスト)

 一方、米議会の出資によって設立されたRFA(自由アジア放送)は、トランプ政権に《北朝鮮のすべての銀行を例外なく特別指定制裁対象リストに載せ、国際金融システムから完全に除外せよ》と要求し、トランプ大統領もこれを飲む可能性が高い。しかも正男氏暗殺では、化学兵器禁止条約で製造・保有・使用が禁止されているVXガスが使用されたことが明らかになった。これに怒った米議会に、2008年に解除したテロ支援国家の指定を再検討する声も強まっているのだ。
 「再指定されれば、そのダメージは現行の経済制裁どころではありません。テロ国家と対話する国はなくなり、核・ミサイル開発で米国を揺さぶり、交渉のテーブルに引っ張り出そうとする正恩のもくろみは吹っ飛ぶことになります。これは孤独な独裁者が最も恐れるシナリオです」(北朝鮮ウオッチャー)

 ただ中国は、いかに習近平国家主席と正恩委員長の相性が悪くても、中国サイドから北朝鮮を見放すことはできない。北を生かさず殺さずに維持することは、朝鮮半島の“NATO化”を阻止するための絶対条件だからだ。
 一部報道によると、マレーシア警察および国際刑事警察機構担当官が正男氏の長男、漢率(ハンソル)氏のDNA提出を求めたが、家族側は『特殊で微妙な身分のため外国へのDNA提供は難しい』と答えたという。中国にとっては、北の犯行と断定されるとまずいと考える勢力があるのも事実なのだ。
 「正恩の計算違いはもう一つある。儒教色が残る北朝鮮では、ご法度中のご法度である『兄殺し』が国民の間にまで知られるようになって、ただでさえ求心力の弱い正恩から人心が離れつつあることです。正恩は、正男-漢率親子の自由な考え方を危険視し、かつ自分を独裁者と断じた漢率に激怒しているのは間違いない。恐らく父親を暗殺され、恨みを抱いているはずの漢率を、『返り討ちにしてやる』と考えているでしょう」(同)

 漢率氏は1995年生まれ。その名前がメディアで初めて報道されたのは、ボスニア・ヘルツェゴビナのインターナショナルスクールに在籍した16歳のときだ。卒業後の'13年にはパリ政治学院に進学、昨年9月から英国のオックスフォード大学大学院に留学する予定だった。
 「ところが、中国の治安当局者は『暗殺の危険性があるためマカオにとどまるように』と説得し、同大学院への進学を断念させたのです。しかし、北の工作員も出入りするマカオより英国の方が治安が悪いとは思えません。なぜ中国がマカオ滞在にこだわるかと言えば、もし脱北者が多い英国に留学させ、漢率がある日、脱北を決意して北の民主化運動に立ち上がるかもしれないからです。そうなれば、正男ファミリーを中国の管理下に置き、いつでも利用できる状況を維持したいという中国の思惑は崩れてしまいますからね」(在日米国人ジャーナリスト)

 漢率氏は母親や妹と一緒に、マカオの集合住宅で暮らしている。
 「仮に北のスナイパーがマカオで漢率暗殺を決行する場合は、正男のように毒物を使うか、交通事故に見せかけて車で轢き殺すかのいずれかです。北の高官がよく交通事故で死亡しますが、あれは実際には粛清ですから」(軍事ライター)

 実は、欧州には現在約1200人の脱北者がいるが、そのうち英国には約700人が居住しており、韓国に次いで脱北者が多い国だ。同国には、'13年5月に永住権を取得した金主日(キム・ジュイル)氏という『国際脱北者連帯』の事務局長がおり、北朝鮮解放のために日々戦っている。
 「同氏は、元人民軍第5部隊の小隊指揮官だった'05年8月に脱北した人で、これまで正男や金正日の異母弟、金平一チェコ大使を亡命政権のトップに担ごうと画策しましたが、断念したという経緯がある。亡命政権を樹立する地域が韓国の場合は中国が反発するでしょうし、中国の場合は米国が反対するはずです。最善の方法はヨーロッパに本部や支部を置くことでしょう。英国は日米韓と違い北に直接対峙する敵ではないので、北当局も英国に逃げた脱北者の親族関係者に対してはかなり寛容ですから、漢率擁立にはもってこいなのです」(前出・ウオッチャー)

 本名で堂々と生きることができず、異国の地で非業の最期を遂げた正男氏は、今ひたすら漢率氏の決起を願っているのではないか。

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