菜乃花 2018年10月04日号

森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 ヤマト運輸値上げの真因

掲載日時 2017年03月28日 10時00分 [社会] / 掲載号 2017年4月6日号

 ヤマト運輸が27年ぶりの値上げに向けた検討に入った。ネット通販の荷物が増えて、パンク状態になったためだという。
 ヤマト運輸は、これまでサービス残業になっていた過去の超過勤務分を含めて、セールスドライバーに残業手当を支払う見通しだ。それに伴って、再配達が有料化されたり、一般消費者向けの宅急便料金も引き上げられる可能性が高いという。

 しかし、どこかおかしくないだろうか。
 一般に電力やガス、郵便など、ネットワーク型の産業の場合、固定費が大きなウエイトを占めるから、取扱い数量が増えれば、たとえ残業代を支払ったとしても平均コストは下がるはずだ。
 だから、取扱い数量の拡大にともなって値下げになってもよいはずだ。それがなぜ、値上げという話になるのか。

 その理由は、ヤマト運輸の決算報告を見ると明らかになる。実は、宅急便の単価が大きく下がっているのだ。昨年10〜12月期の宅急便の単価は、前年比で3.6%も下がっている。単価の下落は、ほぼ2年続いている。
 では、なぜ単価が下落するのか。それは、通販業者などの大口利用客の料金が、自由競争で決まっていて、それが相当安いからだ。
 ヤマトホールディングスの資料で見ても、宅急便の平均単価は563円にすぎない。個人が宅急便を出すと、大体1000円程度取られるが、平均単価はその半分だ。ということは、大口利用客の単価は相当安いということになる。実際、ネット通販のアマゾンが払っている平均単価は300円という報道もある。
 さらに、ポスト投函タイプのクロネコDM便というものがある。3辺の合計が60センチ以内、厚さ2センチ以内といった制限があるが、ネット通販でもしばしば利用されている。このDM便は、個人は利用できないから、法人や個人事業主だけが利用している。このDM便の平均単価は、56円なのだ。安過ぎると感じないだろうか。

 こうした安値の背景にあるのが、通販業者の送料無料サービスだ。例えば、アマゾンでは2000円以上の注文は、送料が無料になる。さらに年間3900円を支払ってプライム会員になると、対象商品の送料が何回でも無料になるほか、配達の日時指定やお急ぎ便の料金も無料になる。
 そうなると、重い物や、かさばる物だけでなく、日常生活のすべての商品に宅急便の利用が広がってしまう。しかし、それは本来おかしな話だ。たとえ、消費者が送料を負担していなくても、実際に輸送コストはかかっているのだし、梱包材の使用も増えていく。何でもかんでもネット通販というのは、環境破壊でもあるのだ。

 ただ、日本は自由主義経済だから、ネット通販業者の送料無料の仕組み自体を規制するのはむずかしいだろう。だから、問題解決の一番の近道は、宅急便の大口利用者に対して、適正な運賃を請求できるようにすることだろう。運賃が上がれば、ネット通販業者も、送料無料の範囲を狭めざるを得なくなるからだ。値上げの際には、消費者が差し出す荷物の運賃は、引き上げるべきではない。
 宅急便パンクの原因は、あくまでもネット通販業者の荷物の急増があるためなのだ。

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