彩川ひなの 2018年7月5日号

世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第246回 財務省が日本を滅ぼす

掲載日時 2017年11月16日 10時00分 [政治] / 掲載号 2017年11月23日号

 日本には、二つの「壁」が存在する。何の壁かといえば、日本の繁栄を妨害する壁である。
 「日本国を繁栄の下で永続させよう」
 と、日本国民や政治家が動いたとしても、この二つの「壁」により妨げられ、「発展途上国」もしくは「中国の属国」以外のゴールには辿り着けない。

 筆者は、
 「○○をやれば、すべて巧くいく」
 といった、グローバリストが構造改革を推進する際に多用するレトリックを嫌悪する。世の中、そんな単純ではない。
 それにしても、この二つの「壁」を取り除かない限り、我が国は繁栄と永続に向かう第一歩を踏み出すことすらできないのだ。

 この二つの「壁」は、異なる時期に建設された。一つ目の壁が建設されたのは1947年、二つ目は1997年である。
 それぞれ「法文」の形をとっており、第一の壁が「日本国憲法第九条第二項」、二つ目が「財政構造改革法(現:プライマリーバランス黒字化目標)」と呼ばれている。
 とにもかくにも、日本国の問題を解決しようとしたとき、九条二項もしくはPB黒字化目標のいずれか、もしくは双方が必ず立ち塞がり、一切の解決策が打てないのだ。

 例えば、日本国が北朝鮮のミサイルに備え、敵基地攻撃能力を持とうとしよう。九条二項「交戦権の否定」に抵触し、敵基地「攻撃」能力は持てない。
 終わり。
 というわけで、せめて「反撃能力」くらいは持つことにしよう。攻撃された後に、反撃するのはどう考えても「自衛権」の範囲である。という話になるわけだが、日本の自衛隊は、戦闘機などを地上の格納庫に収容している、世にも珍しき軍隊なのだ。
 他国の軍隊は、反撃に必要なミサイル、戦闘機、爆撃機などを、核ミサイルを落とされても平気な「地下シェルター」の中に格納している。そうしなければ「反撃」することが不可能であることは、誰にでも分かる。

 日本が敵基地「反撃」能力を持つべく、戦闘能力(航空機など)を地下のシェルターに格納しようとしても、現時点では存在しない。
 敵基地反撃能力を保有するならば、最低限、各航空自衛隊の基地に地下シェルターを建設する必要がある。というわけで、防衛費を増強しようとしたところで、今度は「PB目標」が壁になり、不可能だ。
 日本は「憲法九条第二項」と「PB黒字化目標」という二つの壁を破壊しない限り、発展途上国もしくは中国の属国という「未来」が確定してしまう。

 安倍政権は2013年以降、毎年6月にPB黒字化目標の閣議決定を続けている。PB黒字化目標が「骨太の方針」にて閣議決定されている以上、すべての政策がPB黒字化前提になってしまう。
 すなわち、
 「支出は前年比で削減する。増える場合は、他の支出を削るか、もしくは増税する」
 という前提で予算が組まれざるを得ないのだ。
 このPB目標に異様なまでに固執し、日本を亡ぼそうとしているのが、財務省である。

 日本が亡びる云々は、決して大げさな話ではない。
 日本のGDPが世界に占めるシェアは、橋本緊縮財政でデフレに突っ込む以前は17%を超えていた。日本一カ国で、世界の17%以上を生産していたのである。
 その後、デフレでGDPが成長しなくなったが、世界経済は順調に拡大した。日本のGDPが世界に占めるシェアはひたすら落ちていき、2016年は6.5%。
 反対に、中国のGDPは世界の2%程度だったのが、世界経済を上回るペースで成長し、2016年は15%だ。
 ちなみに、2016年は日本のシェアが少し高まり、中国が落ちているが、これは「円高人民元安」の影響である。もちろん、2016年にしても、中国の成長率は日本を圧倒していた。
 このままのペースで日本の衰退と中国の成長が続くと、2040年頃に経済規模の差は10倍近くに開いているだろう(すでに2.3倍)。中国は経済成長率以上に軍事費を拡大するため、軍事予算の規模は20倍の差がついていると思われる。

 さて、日本の20倍の軍事予算を使う共産党独裁国家に、我が国はいかにして立ち向かえばいいのだろうか。
 立ち向かえない、というのが残酷な答えだ。
 デフレから脱却し、経済成長を取り戻さない限り、我が国に待ち構えている未来はよくて発展途上国、最悪、中国の属国化以外にはないのである。

 そして、デフレ脱却を妨げている最悪の「壁」こそが、PB黒字化目標なのだ。
 財政拡大(減税含む)の方向に舵を切り、政府予算を使えば、我が国は途端に繁栄の道を歩む。もう一つ、憲法九条第二項という壁は残るものの、これまでよりは随分とマシな環境に置かれるだろう。

 それにも関わらず、現実は逆方向に驀進している。
 もちろん、九条を改正し、PBを破棄したら「それですべて巧くいく」という話ではない。とはいえ、二つの壁が存在する限り、繁栄への道に到着することすらできないのだ。
 これが日本の現実なのである。

 というわけで、筆者はせめて「PB黒字化目標」の問題だけでも解決するべく、2017年10月31日に小学館から『財務省が日本を滅ぼす』を刊行した。

みつはし たかあき(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、分かりやすい経済評論が人気を集めている。

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