葉加瀬マイ 2018年11月29日号

旅行サービス会社時代の知識を駆使 パイロットを装った婚活詐欺師(1)

掲載日時 2016年04月16日 23時00分 [事件] / 掲載号 2016年4月21日号

 安田道弘(33)は約4年前まで「社員全員をビジネスで億万長者にする」と豪語する詐欺会社で働いていた。要は会社が推奨する商材を強引にセールスするだけなのだが、社員は膨大なノルマを課せられ、「親戚縁者、友人知人に片っ端から売り付けろ!」とハッパを掛けられていた。
 それが続いている間は高給を手にできるが、応えられなくなればクビを切られる。だが、「将来の見返りが約束されている」という幻想を信じ込んでいた社員たちは、自らが金を借りてでも会社の商材を買い続け、あげく、その多くが借金まみれになっていた。

 安田もそのパターンで、数百万円の借金を抱え、友人知人たちに顔向けできなくなって失踪。何とか居酒屋チェーン店の内装工事に携わる仕事に就いたが、そこもブラック企業だった上、収入のほとんどは借金返済に消え、すべてが嫌になって約2年前にネットカフェ難民になった。
 気が付けば誰からも相手にされず、付き合う女もいない。インターネットの無料動画を見ながらシコシコとオナニーするだけの虚しい日々を送っていた。
 「うう〜、女が欲しい…。せめて飽きるほどヤッてから死にたい…」

 とにかく今のスペックではモテるわけがないので、安田はパイロットを装い、婚活パーティーに出席することにした。安田にはパイロットを演じられる目算があった。詐欺会社に勤める前は旅行サービス会社に勤めていて、空港での仕事を知り尽くしていたのだ。正しくは空港内に事務所を持つ子会社のスタッフだったが、ツアー客が全員無事に出発できるようにケアするセンディングという仕事をしていた。安田はその仕事に何の不満もなかったのに、ただ高給に目がくらんで転職したのである。
 安田は「全日空の副操縦士で年収1300万円」という架空の身分を名乗り、社員証を偽造した。パイロットには「事業用操縦士技能証明書」と「計器飛行証明」という二つのライセンスが必要なことも知っていて、それも偽造。恐らく一般人は見たこともないパイロットの「出張証明書」も偽造していた。

 後は安田が旅行会社時代に培った知識を駆使して偽パイロットを演じるだけだ。果たして、その効果はてきめんだった。初めて出席した婚活パーティーで、安田は女性陣からモテまくり、一流商社のOLである大竹美保さん(27)に交際を申し込まれた。普段だったら鼻も引っ掛けてもらえない高嶺の花である。
 安田は空港近くの一流ホテルのラウンジを逢瀬の舞台に設置し、フライトを眺めながら知っている限りの専門用語で美保さんのハートをわしづかみにした。
 「一昨日のフライトはバッドタービュランスで参ったよ。機長がエマージェンシー・ディセンドをかけて難を逃れたんだけど、CDと違ってノータムにないやつにはお手上げだ。CATに襲われたのはアリューシャン上空だったんだが…」
 女は特殊技能を要する職業人にはめっぽう弱いらしい。こんなワケの分からない話でも、うっとりとして聞いている。後はディナーを済ませ、ホテルの部屋へ移るだけだ。

関連タグ:男と女の性犯罪実録調書

事件新着記事

» もっと見る

旅行サービス会社時代の知識を駆使 パイロットを装った婚活詐欺師(1)

Close

WJガール

▲ PAGE TOP