葉加瀬マイ 2018年11月29日号

話題の1冊 著者インタビュー 辻原登 『籠の鸚鵡(かごのおうむ)』 新潮社 1,600円(本体価格)

掲載日時 2016年11月06日 14時00分 [エンタメ] / 掲載号 2016年11月10日号

 −−町役場の出納室長、不動産業者、ホステス、ヤクザと様々な登場人物が絡み合う展開に、序盤からグイグイ引き込まれます。物語の着想はどこから得られたのでしょうか?

 辻原 ずいぶん前から『クライムノベル』をやってみたいと思っていました。私は芥川賞でデビューしたのですが、ずっと殺人や暴力の世界、ミステリアスなドラマなどを書きたいという野心を抱いていました。そこで、最初に『冬の旅』で殺人を、次に『寂しい丘で狩りをする』でストーカーを取り上げ、今回、3部作の仕上げとして『籠の鸚鵡』を書きました。発想の元になったのは、1984年、和歌山県下津町で実際に起きた、町役場の出納室長による20数億円に上る公金の巨額横領事件です。横領したほとんどの金がどこに流れたか分からず、裏に暴力団の影があると言われていました。

 −−暴力団といえば同年8月、山口組と一和会との間で起こった抗争事件、いわゆる『山一抗争』が勃発しました。本作でも後半にかけて抗争に絡む展開となっていきますね。

 辻原 私は和歌山県の出身なんですが、地元でも賭場で刺殺事件が起きるなど、抗争の影響を強く受けた地域でした。作品で暴力団を扱う以上、ディテールはしっかりしておかないといけません。幸運なことに、事件を詳しく取材した人物から「もう引退して必要ないから」と、取材メモや記事を譲り受けることができました。また『週刊実話』をはじめ、いくつかの週刊誌のバックナンバーを取り寄せてかなり詳細に調べましたね。物語を進めていく上ではまず、山一抗争を正確に描かなくてはいけませんでしたから。

 −−さまざまな男たちの思惑の裏で、翻弄される女たちの姿も印象的です。

 辻原 登場人物の1人であるカヨ子という女は、濃厚な自慰シーンをしたためた手紙(レターセックス)で真面目な役人を誘惑する一方で、裏ではオウムのようにヤクザ男の言いなりになっています。しかし、物語が進むにつれて次第に自分自身でものを考え、最後は自分の言葉で対抗し、相手に向き合うようになっていきます。最後の最後で一皮むけて強くなるんです。そんな女の心情の変化なども楽しんでいただけたらと思います。

 −−物語の最後、カヨ子が『ギリギリの選択』をするシーンは、まさにクライマックスでした。

 辻原 揺れ動く女の気持ちとギリギリの選択をさせるさりげない伏線。結末はぜひ、本書を読んで確かめて下さい。
(聞き手/程原ケン)

辻原登(つじはら のぼる)
1945年和歌山県生まれ。'90年『村の名前』で第103回芥川賞、'99年『翔べ麒麟』で読売文学賞、2000年『遊動亭円木』で谷崎賞、'05年『枯葉の中の青い炎』で川端賞、'06年『花はさくら木』で大佛賞を受賞。

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